加盟大学専用サイト

特集・連載

高校進路指導室の扉―新しい高大連携・接続に向けて―

より実践的な力の涵養へ
別府大学との積極的な連携を通して

豊中学・高等学校進路指導部高大連携主任  今田翠

コロナ禍での進路指導について

 昨年の冬に端を発する新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、進路指導の環境は大きく変化した。生徒たちのモチベーションに大きな影響のあるオープンキャンパスは中止、また、オンラインで実施されるようになり、盛んに行われていた進学説明会も激減した。この様な状況下で本校は2つの取り組みを行った。
 1つ目は、積極的に生徒と外部を繋ぐ機会を設けることである。本年度は1学期に2年生を対象に、職業観の育成を目的とした進路講和を実施した。また2学期には、こちらも2年生を対象として、専門学校や県内の大学による合同説明会を本校の体育館で実施した。両方とも学校で実施することにより、参加者の感染対策を万全にすることができ、市外の会場に出向くことに対する生徒の不安も払拭することが出来たと考えている。
 2つ目は、生徒がオンラインで外部と接する際の手助けである。最近では入試や入社試験の面接がオンラインで行われることが珍しくなくなった。しかし、家庭ごとのパソコンやネットワークの普及状況は一様でなく、生徒のTI機器への習熟度も差が大きい。また、生徒たちは、友人とのスマートフォンを用いたコミュニケーションには慣れているが、面接のような正確性が求められる対話は未経験である。そこで、オンラインでの面接が必要な生徒については、直接対面しての面接練習だけでなく、校内の別々の端末をオンラインで接続して画面越しの面接指導も始めている。今後の状況がどう変化するかは予断を許さない中で新たに生じた状況に対して、これからも柔軟に対応していく必要がある。

高大連携の取り組みについて

 本校は運動部の活動が特に盛んであるが、看護師を志して5年一貫の過程を過ごす生徒、大学進学や就職を目指す生徒など多様な生徒を抱えている。学科は普通科と看護科の2つであるが、普通科の中では生徒の特性に合わせて様々なコースを設定して、その進路達成をサポートしてきた。本校の普通科では従来、運動部に所属し、その実績を持って進路に繋げていく体育クラス、自分の適性を見極めてそれに合わせて進路を達成していく総合進学クラス、難関大学への進学を目的とする特別進学クラスを設定していた。
 折しも高大連携・接続、入試改革の流れの中、本校では別府大学の系列校であるという利点をいかして、昨年度総合進学クラスを高大連携クラスに改変した。この背景には、総合進学クラスの生徒たちの資格の取得や就職に対する意識の強さがあった。元々総合進学クラスには、商業,情報科目を多く履修する情報経営コースがあり、このコースの生徒は検定を積極的に受験していたが、この検定を総合進学クラスの他のコースの生徒も一緒に受験することが度々あった。また、高校入学当初から専門学校や大学を卒業した後の進路まで意識している生徒もいた。一方で別府大学は、地域に根差した人材の育成を行っており、卒業生は在学中に身に付けた専門性や取得した資格をいかして多く県内で就職している。
 そもそも別府大学の各学部での教育内容と総合進学クラスの生徒の指向には重なる部分も多く、毎年在籍する生徒の3分の1程度が別府大学へ進学するという状況であった。
 そこで、総合進学クラスの在籍者の進路の指向性と別府大学が得意とする分野を、早い時期から強く結びつけ大学進学後の学びによりスムーズに結びつけることを目的として、高大連携クラスの開設が決まった。ちなみに令和2年度入学生が最初の学年となり、現在1,2年生合わせて120人がこのクラスで学んでいる。
 新たに開設された高大連携クラスは「情報経営進学コース」,「幼児教育進学コース」,「食物進学コース」からなる。「情報経営進学コース」は資格取得や経済に興味を持つ生徒を対象とし、別府大学の国際経営学部に対応している。高校での商業,情報科で学んだことを基礎として、大学側との交流により、これらに加えてより実践的な「マーケティング」等について学ぶ授業を設定している。「幼児教育進学コース」は短期大学部・初等教育科に対応し、主に保育士を目指す生徒を対象としている。ここでは保育や幼児との関わり方等について幅広く学ぶと共に、幼稚園での実習といった「実践」に重きを置く授業を設定した。「食物進学コース」は食や栄養に関心のある生徒向けになっており、大学の食物栄養学部と短期大学部・食物栄養科に対応している。食について家庭科の分野からだけでなく、その生物学,化学的側面まで視野に入れて、理科の分野からもアプローチするカリキュラムになっている。ここではまず高校で、基礎的な知識や技術を学んだ上で、より充実した大学の設備を利用しての実習を行っている。
 これらのコースは学ぶ内容は大きく違うが、それぞれを特色づける科目の中では共通して「協働作業による実践」を取り入れている。これは新学習指導要領により、従来は大学の学びの中で自然と身に付いていた様々な力を、高校生活の中で身に付けていく流れになったことを強く意識したものである。
 つまり、「知識の取り込み」「協同作業による課題に対する解決法の模索」「実践」「外部からの評価」「自己評価」を行うことで、探究活動の要素を予め組み込んでいるのである。
  まだ始まったばかりの取り組みで、別府大学とも定期的に協議する場を設けながら進めている。
高校生の時期に、より高度で実践的な経験と、大学では一般的になる思考法に触れることで、進学後は学生の中で中心的な役割を果たせる生徒を送り出せるようになることを教職員の側では目的としており、それが社会に出た後も働く中で役立つことを期待している。

私立大学への要望について

 私立大学の入学試験は多種多様にわたる。推薦試験だけでも指定校推薦、公募制推薦、特別推薦、これに各大学のバラエティに富んだ総合型選抜がある。また、一般選抜となると共通テストを採用するものが加わる。これは受験生の立場から見ると、その中から自分に合った受験方式が選べるし、複数回のチャレンジも可能となり、大きなメリットになる。事実、一人の生徒が一つの大学の学部に5回、6回とチャレンジすることも可能である。「試験日自由選択」を取り入れ、他大学との併願を視野に、受験生が受験日程を組みやすくしてくれていたりもする。
 しかし、生徒の受験をサポートする立場からすると、あまりに多様である上に、名称が大学ごとに異なるため、その内容・特性を把握するために、担任をはじめとして進路指導上膨大な時間を要することになる。一般的なA日程、A方式、1期、前期などの名称は、まだ類型上の表現として理解できるが、その違いや内容までは解らない。それらに加えて選択科目数や面接の有無、科目の比重や受験資格などによってもその名称は変ってくる。
 先述したように、受験生にとってチャンスが増え、これを励みに受験に臨む生徒が多いのも事実である。またこのようなバラエティやオリジナリティこそが私立大学の魅力でもある。
そこで、せめて一般選抜試験においてはある程度の用語の統一などを行ってもらえるとありがたい。例えば1月中の試験を期、2月を2期としたり、1科目をA方式、2科目をB方式としたりするなどである。試験名称を見ただけで、ある程度の試験の内容が入ってくれば、志望校選択を行う際に大いに助かる。3年生の進路指導に関わる者としては、受験生一人ひとりに最適な受験先を提案するためにも、各大学の受験方式の名称に一定の統一性があればと思うことが度々ある。御一考いただければ幸いである。