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国際交流事業

東南アジアと大学間交流深める
「効果的な短期留学」訴える
各国の私大協会学長ら  好意的な要望・期待寄せる

日本私立大学協会 国際交流委員会
マレーシア・タイ高等教育機関視察

 日本私立大学協会国際交流委員会(担当理事:森田嘉一京都外国語大学理事長・総長)は、今年2月、マレーシア・タイ高等教育機関の視察を行った。これは、日本私立大学協会創立70周年記念事業の一環として行われた「5か国の私立大学協会及び中核大学との包括協定調印式」と「国際シンポジウム"東アジアにおける大学間交流の展望―多様性を育む高等教育を目指して―"」(昨年12月1日、2日)を受けて日本私立大学協会国際交流委員会及びASEAN特別委員会(委員長:谷岡一郎大阪商業大学理事長・学長)の委員を中心に、企画したもの。創立70周年記念国際シンポジウムにおいて、目玉として据えられていたのが本協会初の試みとなった学生セッション「量から質へ~1―6―1留学プログラム~」における提言だった。今回のマレーシア・タイ高等教育機関視察では「1―6―1留学プログラム」を紹介するということが一つの目的にもなった。五日間にわたったマレーシア・タイ高等教育機関の視察を報告する。

 「ASPIRE Japan」

学生セッション「量から質へ~1―6―1留学プログラム~」における提言を発表した学生達は、国際連合(国連)広報部(UN―DPI)の下部組織である国連アカデミック・インパクト(UNAI)の加盟校の有志の学生によって組織された「ASPIRE Japan」のメンバーである。ASPIREとは「Action by Students to Promote Innovation and Reformthrough Education」という学生プログラムの略称で、日本を始め韓国・アメリカ・メキシコなどの国でもUNAI加盟校の学生達によってそれぞれの国のASPIREグループが組織されている。

ASPIREは国連において議論されている様々な問題(貧困、温暖化、環境破壊、テロや紛争等)の解決や、新しく議論の焦点になっているSDGs(持続発展可能な開発目標)やESD(持続発展可能な教育)などのテーマについて自国のみならず、2か国以上のASPIREグループが集まって議論するシンポジウムや発表会を開催している。

「1―6―1留学プログラム」
少々前置きが長くなってしまったが、今回のASPIRE Japanの学生達による発表で一番重要だったのは学生達が自分で考えた「より効果的な短期留学:1―6―1留学プログラム」という提言であった。この発表ではこれまであまり顧みられて来なかった(と思われる)「留学に対する学生の考え方や意見」が主題に置かれ、昨年9月~10月に本協会の加盟各大学の留学経験学生を対象に行われた「留学に関するアンケート調査」を基に様々な観点から分析がなされた。

このアンケートの中で特に学生達が注目したのは長期留学ではなく、より経験者の多い短期留学であった。従来の短期留学(通常2週間~8週間)を経験した学生に対するアンケートから浮き彫りになったのは、短期留学を終えて帰国した後に、「Regret」、すなわち「後悔」をしているということであった。この「後悔」については多岐に渡る分野での回答があったが、主なものとしては「語学力の不足によりコミュニケーションが取れなかった」、「留学先の国についてもっと知っておきたかった(留学前知識が足りなかった)」、そして「日本の色々な事柄について知っているべきだった(留学先で日本のことを質問されたが分からなかった/答えられなかった)」という3点に集約される。

実際にASPIRE Japanの学生の中からもこの「後悔」について同調する意見も多く、どうすればこの「後悔」の度合いを減らすことが出来るのか、というのがセッションのメインテーマになった。ASPIRE Japanの学生達は12月の発表の準備のために8月下旬に東京で合宿を行い、そこで練り上がったのが「1―6―1留学プログラム」である。

この新しい留学プログラムの骨子は「短期留学(最初の1)」→「帰国して次の学期で留学した国や言語について勉強する(真ん中の6)」→「再度の短期留学(最後の1)」というもので、それぞれの数字は月数を表している。最初の短期留学で経験した「後悔」をもとに次の学期にその「後悔」に関する授業(語学・歴史・文化など)を取り、再度短期留学で「後悔」を晴らすというのが目的である。

実際に12月の発表では資金面などからの懸念はあったものの、各国の私立大学協会会長や学長からは好意的な意見が相次いだ。この成果を基に、今回のマレーシア・タイ高等教育機関視察では「1―6―1留学プログラム」を紹介するということが一つの目的となった。

1日目:マレーシア・ペナン

<wcm01.jpg2月27日、最初の訪問先であるマレーシア・ペナンにある国立マレーシア工科大学(USM)を訪れた。USMには本協会加盟校である京都外国語大学のマレーシア・ペナンキャンパスが昨年4月に開設されており、当日は京都外国語大学の有田 敬国際部次長並びにUSMの日本文化センターの副田雅紀所長のご案内で施設見学とマレーシアにおける日本語教育や日本留学に関する現状のブリーフィングをして頂いた。引き続きUSMのアスマ・イスマイル学長を始めとする教職員との面談があり、本協会小出秀文常務理事・事務局長より本協会国際交流委員会及びASEAN特別委員会の活動報告がなされ、続いて1―6―1留学プログラムに関しても報告を行った。
USMを辞した後は在ペナン日本国総領事館を表敬訪問し、糸井 清総領事からはペナンにおける日系企業の進出状況について丁寧な説明があった。

2日目:タイ・バンコク

翌2月28日の朝のフライトでペナンからバンコクに移動し、バンコク・スワンナプーム国際空港からサイアム大学へ向かった。サイアム大学のポンチャイ・モンゴンヴァニト学長は世界大学総長会議(IAUP)会長・世界大学協会(IAU)副会長・タイ私立大学協会(APHEIT)会長などの要職を歴任しており、訪日回数も多い知日家として知られている。サイアム大学ではポンチャイ学長の案内で昨年崩御されたプミポン前国王を追悼する祭壇に記帳した上で記念撮影を行い、最上階の理事会室で学長を初めとする教職員との面談を行った。

wcm02.jpg本協会小出秀文常務理事・事務局長より本協会国際交流委員会及びASEAN特別委員会の活動報告がなされ、続いて1―6―1留学プログラムに関して、大阪商業大学法人本部長補佐の谷岡辰郎氏が報告を行ったところ、ポンチャイ学長は非常に関心を示し、「サイアム大学を含めたタイの私立大学と本協会の加盟大学との間で1―6―1留学プログラムのような有意義なプログラムを是非実行して貰いたい」とコメントして頂いた。

サイアム大学を辞した後は現在タイ私立大学協会会長であるサオワニー・タイルンロート氏が学長を務めているタイ商工会議所大学(UTCC)を訪問した。この大学はその名の通りタイ商工会議所によって設立された大学で、特にビジネス分野を強みとしている大学である。特色化教育にも力を入れており、教職員だけでなく学生全員にiPadを貸与して授業に活用するなど先進的な取り組みをしている。ここでも同じく本協会からの説明のあと、UTCCの教員から様々な活動について説明がなされた。タイにおける日系企業の進出数は相当なものであり、タイで日本語を学ぶ学生の数も増えていることから、本協会と更に緊密な協力関係を構築して学生交流だけではなく教員交流に対する要望も受けた。

この日最後の訪問先はタイ私立大学協会で、サイアム大学とUTCCを訪問したことを前提に、12月に東京でサオワニー学長が会長として調印した本協会との包括協定に関する議論が行われた。

三日目:タイ・バンコク

wcm03.jpgバンコク最終日は最初に泰日工業大学を訪問した。この大学は名前が示す通り日本とタイとの技術交流や、日本の生産ノウハウをタイに導入することを目的とした大学で、泰日技術振興協会を設立母体として2007年に開学した新しい大学である。「日本型ものづくり大学」を目指しており、全学生が日本語と英語を学ぶ大学である。バンディット・ローッアラヤノン学長からは既に多数の日本の大学と協定を結んでいるが、これからもより多くの日本の大学との交流を増やしたく、本協会に期待しているとのコメントがあった。

泰日工業大学を辞した後は日本学術振興会(JSPS)バンコク研究連絡センターを訪問し、山下邦明センター長よりJSPSの活動状況についてブリーフィングを受けたのち、日本語教育やタイ人留学生、そして産業人材育成イニシアチブなどに関する活発な質疑応答がなされた。

バンコク最後の訪問先は在タイ日本国大使館であった。佐渡島志郎特命全権大使を表敬訪問し、本協会を代表して小出事務局長より挨拶を行った。
本協会国際交流委員会では台湾の高等教育国際合作基金会(FICHET)とタイ私立大学協会(APHEIT)をパイロット・ケースとして1―6―1留学プログラムを推進する取り組みが始まろうとしており、今回は四泊五日という過密日程の中であったものの、本協会とタイとの学生交流の一部にでも役に立つことが出来れば幸甚である。最後にバンコク訪問に際してとてもお世話になった松浦悦郎福井工業大学常務理事・海外事業部長及び関係各位に謝意を表したい。