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高めよ 深めよ 大学広報力

〈66〉高めよ 深めよ 大学広報力  こうやって変革した62
 新学部で「新生」めざす
 子ども学部とリハビリ学部 実学で資格取得を支援 
 西九州大学

 九州にあって、少子化、大学全入という逆風のなか、気を吐き頑張る、もうひとつの大学は西九州大学(福元裕二学長、佐賀県神埼市)。3学部、学生数は約1200人という小さな大学だ。教職員と学生の距離が近く、教職員はゼミの学生だけでなく、大半の学生の名前を覚えている。地域における栄養、健康、医療、福祉の教育・研究の拠点として、卒業生の多くが九州各地で健康、福祉分野で活躍。一方で、社会福祉系大学が全国各地に開校したため、志願者が減り、東京や大阪など遠方からの学生も減った。07年、リハビリテーション学部、09年、子ども学部を開設、新しく生まれ変わろうとしている。九州の小さな大学の厳しさと大きな改革を大学幹部に尋ねた。
(文中敬称略)

卒業生が活躍 地域の健康福祉に貢献

 西九州大学は、二つのキャンパスがある。神埼キャンパスに健康福祉学部とリハビリテーション学部、神園キャンパス(佐賀市神園)に子ども学部。二学部から構成される神埼キャンパスは山の斜面に建つ。春は桜、秋は紅葉の日の隈公園が指呼の間にあり、吉野ヶ里遺跡も近い。素晴らしい環境と景観に恵まれた大学だ。
 佐賀県内唯一の4年制私立大学。1968年に開学した佐賀家政大学(家政学部家政学科)が前身。74年、家政学部に社会福祉学科を増設、校名を西九州大学に変更。七七年、家政学科家政学専攻を食物栄養学科食物栄養学専攻に改称。01年、家政学部を健康福祉学部に改称した。 
 副学長の高橋忠夫(健康福祉学部長)が大学を語る。「本学の教育理念は『あすなろう』の精神に基づく人間教育で、人間の福祉と健康に寄与する専門的職業人の養成です。あすなろ(翌檜)のように、明日は檜のような大木になろう、つまり『大地に根をおろし』『亭亭とそびえ』『馥郁(ふくいく)と香りを放つ』人間を育てよう、ということです」
 こう続けた。「開学以来、実学主義を謳い、資格取得の支援にも力を入れています。少人数によるきめ細かな指導が特長で、能力別、分野別の授業や、土・日に教室を開放して資格試験の受験対策も行っています」。
 社会福祉学科の開設は74年で、九州地区で社会福祉を教える大学では最も古い。卒業生は九州・山口地区の医療・福祉関係施設に就職。現在、この地域で活躍するソーシャルワーカーや、社会福祉施設の役職者は同学科の出身者が多い。
 健康栄養学科は、管理栄養士の養成に主眼を置く。現役での国家試験合格率を他大学と競っているという。大学院の健康福祉学研究科健康福祉学専攻は、現職の福祉従事者や中学・高校の教職員が、研究のため在学している。 
 「学生の男女比は女性6、男性4と女性のほうが多い。出身地別では、県内5、県外5で、県外の8割が福岡。久留米市や福岡市内からも通学可能で、自家用車通学も多い」(高橋)。学内に大きな駐車場がある。
 開学以来、同大が力を入れているのは各種国家試験合格など資格獲得。管理栄養士、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士、理学療法士および作業療法士、臨床心理士…。学生支援部長の井本浩之(健康福祉学部教授)が語る。
 「毎年、国家試験には多数の合格者を出し、九州の大学ではでトップクラスの実績をあげています。関連した分野への就職率も好調です。九州各地の医療・福祉関係施設で活躍する先輩達が、いろんな面で応援してくれるのが大変心強い」
 開学当初から栄養、健康、福祉の三本柱でやってきた。07年のリハビリテーション学部、09年の子ども学部の新設で、医療や初等教育分野に進出することになった。新学部の設立を副学長の高橋が語る。
 「リハビリテーション学部は、既存の健康栄養、社会福祉学科と連携し、高齢者と障がい者、障がい児支援を重視した地域リハビリテーションを計画して開設。本学ならではの豊かなハートと信頼されるスキルを持った医療人を育てたい。
 大学をめざす高校生にとって『こども』はキーワード。子ども学部は、幼稚園、小学校教諭になるための教育をします。幼児の心がわかる小学校の先生、小学校に入った後を見通せる幼稚園教諭、保育士を育てたい」
 規制緩和の波かぶる
 ここで、やや硬い話になるが勘弁してほしい。西九州大学が開設されたのは、1968年で、改革に乗り出したのが2001年から。この01年という年は、どういう年だったのか。
 1991年の大学審議会答申「大学教育の改善について」に基づき大学設置基準の改正から規制緩和が大学にも及んだ。01年には政府の総合規制改革会議が「事前規制から事後チェックへ」をスローガンに、設置基準と運用の緩和を迫った。
 これによって、その速度が一挙に加速した。「91年から04年までの約15年間、特に2000年に入ってからの数年間は、大学にとって、まさに『規制緩和の時代』で、激変の時代だった」(天野郁夫・東大名誉教授)
 18歳人口が減る一方で、大学の数は増え続けた。既設大学は、対抗せざるを得なくなり、新学部の設置などの改革に向かった。01年は、西九州大が家政学部を健康福祉学部に改称した年と符合する。改革は時代の要請でもあった。
 独自の地域貢献行う
 ところで、西九州大は実績のある健康、福祉分野を生かした地域貢献を行ってきた。健康福祉実践センターも、そのひとつ。入試広報部長の滝口真(大学院健康福祉学研究科教授)が説明する。
 「地域の高齢者を対象に、心と身体の活性化をめざして、多彩なプログラムを講義する『チャレンジ幸齢セミナー』や、地域の方々の様ざまな心の相談を受け付ける『臨床心理相談室』などを行っています。学生たちは『やっていてよかった』、『やりがいを感じる』などと頑張っています」
 同大の文化部に所属する24サークルのうち、16サークルがボランティア系。「各サークルとも、地域の小学校、養護学校、各種福祉施設と連携しながら地域に根付いた活動をしています」(滝口)
 少人数教育のよさ
 大学広報について聞いた。滝口は「学生のボランティア活動などは、地元紙などにしばしば取り上げられています。これからは、教職員と学生が人格と人格の交流ができる少人数教育のよさ、人に寄り添う職業人の養成といった本学の教育の中身をもっと伝えていきたい」と話す。
 今後について、高橋が語った。「大学院を充実させるとともに、こども学部にも大学院を設置したい。そして、各学科の連携を強化して、栄養、健康、医療、福祉、こどもの各分野で地域の役に立つ大学をめざしていきたい」
 「あすなろう」の精神は、これからも脈々と受け継がれていく。