加盟大学専用サイト

特集・連載

大学は往く 新しい学園像を求めて

<196>久留米工業大学
ものづくりの楽しさ発信
産学官で社会貢献
航空・宇宙の新コース設置

「人間味豊かな産業人の育成」が建学の精神である。久留米工業大学(今泉勝己学長、福岡県久留米市)は、1966年の開学以来、実践的なカリキュラムを通じた「ものづくり教育」により、社会に貢献できる産業人を数多く輩出してきた。「実践的ものづくり能力を育む」、「ものづくりの楽しさを発信する」、「就職に強い」という三つ柱を掲げる。現在、2021年度に実現を目指す「2021年ビジョン」で定めた教育・研究・社会貢献・経営の四分野で、「アクションプラン32」に取り組む。学びは、少人数教育と理数教科の学びをサポートする「基幹教育センター」が支える。2018年度から航空・宇宙分野のプロフェッショナル育成を目指す先端交通・航空宇宙コースを設置した。「学生が、自ら進んで学ぶという姿勢に対して教育支援、資格取得、就職対策など最大限の支援を行っています」と語る学長に、学園の歩み、改革、これからを聞いた。
(文中敬称略)

人間味豊かな産業人の育成

 「2021年ビジョン」について、学長の今泉が説明する。「教育では、ビッグデータの活用促進やサポート高校の開拓、研究では、外部資金獲得のための組織力強化、社会貢献では、産学官連携拠点の形成、経営では、学長権限と責任の対応を明確化した体制など『アクションプラン32』を実施、目指す大学像を実現します」
 久留米工業大学は、1966年に設置された久留米工業学園短期大学(自動車工業科)が淵源である。73年、設備工業科を増設。76年、久留米工業大学工学部(機械工学科、交通機械工学科、建設設備工学科)が開学。
 79年、久留米工業学園短期大学を廃止。85年、工学部に電子情報工学科を増設する。95年、大学院工学研究科修士課程(エネルギーシステム工学専攻、電子情報システム学専攻)を設置。
 2002年、工学部に環境共生工学科を増設する。工学部機械工学科を機械システム工学科に、建築設備工学科を建築・設備工学科に、電子情報工学科を情報ネットワーク工学科に名称を変更する。
 07年、工学部に教育創造工学科、大学院に自動車システム工学専攻を増設する。15年、開学50周年を記念し、100号館「テクノみらい館」を建設。同年、インテリジェント・モビリティ・ラボラトリー(IML)を設置する。
 100号館は、九階建てで、高層階には教室、実験室、低層階には食堂や喫茶などがある。「キャリアサポートセンターや地域連携・交流センターなども入っています。新しい学びの舞台であり、建物それ自体が最も身近な教材で、地域に貢献する開かれた大学のシンボルです」
 IMLは、交通機械工学科の研究拠点。「全国で初となる対話可能な自動運転パートナーモビリティーが実証実験の段階。人工知能を搭載した電動車いすで、体が不自由な人の生活をサポートするモビリティーとして注目されています」
 現在、1217人の学生が学ぶ。出身地は、福岡を中心に九州が九割近くを占める。男女比は、女子が106人と少ない。「工学を学ぶ学生を『テクガール』と呼んで支援。女子専用ラウンジを設けたり、女子だけの奨学金制度などを用意、生活・経済面からサポートしています」
 5学科の学び。機械システム工学科は、機械デザインとロボティクスの二コース。産業工学に関する知識と技術を習得する。個々のキャリア意識の醸成を図り、高度な工学力を身につけた社会人をめざしている。
 機械システム工学科の阿部奈月さんは、『テクガール』。「入学後、溶接を学び、アルミ溶接の資格を取得、大手金属メーカーに就職しました。工学の未来には、女子の力が必要です。阿部さんに続く女子の出現を期待しています」
 交通機械工学科は、先端交通・航空宇宙と自動車の二コース。「自動車から航空機、船舶、鉄道まで、交通機械(ノリモノ)の設計・開発・メンテナンスを幅広く探究し、個々のキャリア意識の醸成を図ります」
 先端交通・航空宇宙コースは、従前の先端交通機械コースを改定。「航空工学の基礎や航空機整備の基本的な考え方を学び、航空機のエンジニアや整備士を中心に、航空・宇宙分野のプロフェッショナル育成を目指します。自動車領域が置き去りになるわけではなく、自動車業界へも進むことができます」
 建築・設備工学科は、建築デザインと設備デザインの2コース。「住宅・ビル建設に必要な知識や技術を建築・設備の両面から総合的に学習し、スペシャリストを育成します」
 情報ネットワーク工学科は、ビジュアルコンテンツ、ソフトウェア、ハードウェアの三コース。「情報技術(IT)を基礎から応用まで幅広く身につけ、ネットワーク社会の基盤を支える多様な技術者の育成を目指します」
 教育創造工学科は、理科コースと数学コース。「工学部の特長を生かして、生徒たちの理数科目に対する興味を引き出すことのできる『豊かな創造力と応用力』を備えた教員を養成します」
 「ものづくり実践プロジェクト」は、他の学科も学べ、単位化している。「ものづくりを通して、各研究室の活動と企業や自治体などとの連携により問題発見解決型の学習を行います。社会性を身につけ、専門の応用の理解を深めます」
 「基幹教育センター」は、学修支援スタッフと授業担当者が常駐、工学を学ぶ上での基幹となる数学や物理の学修をサポート。「基幹教育によってスムーズに専門教育へ移行し、学生一人ひとり能力を高めるのが目的。リメディアル教育も実施、教育の成果も着実に上っています」
 クラブ・サークル活動では、「フォーミュラプロジェクト」が人気。「毎年、フォーミュラカーの設計・組み立てを行い改造しています。スポンサー集めから走行テストまでやることで仲間と共有する達成感は宝物になるはずです」
 2016年度の就職率は98.8%。各学科の先生とキャリアサポートセンターが一体となり、1年次から就活を見据えた教育を行う。「就業力育成科目」では、1年次の「就業力基礎」から3年次の「就業力実践演習」まで系統的・組織的に取り込む。
 「実践的なものづくり教育を通じて、即戦力になる人材、現場に強い人材を育成しています。ものづくりの強みが、就職の強さに結びついています。企業の人材ニーズに合致した教育を展開、多くの学生が希望する職種に就いています」
 社会貢献は、「アクションプラン32」で、地元企業との連携で地域活性化への貢献をミッションと位置付け、地域連携センターが担う。企業との産学連携やインターンシップの推進や地元の小中学校の理科教育の支援など地域に根ざした工業大学として地域との連携を深めている。
 久留米市商工会議所や地域の金融機関とも連携、「取引先企業に同大の研究シーズの紹介をしてもらうなど企業との共同研究につながると期待しています。大学の発展は、地域の発展からと考え、様ざまな地域貢献活動を推進しています」
 大学のこれからを聞いた。「『2021年ビジョン』で定めた『アクションプラン32』の実現を第一に考えています。少子化という厳しい時代を前に、生き残りは工学系大学としての特徴を出して基盤を強固なものにすることだと思います」
 具体的には?「応募者は数年、堅調ですが、学生確保のため『一日大学生』という本学独自のオープンキャンパスや海外の提携校からの編入学受け入れ、社会人の学び直し、そして、地域のものづくり支援による地域連携を強化していきたい」
 最後は、建学の精神に戻った。「建学の精神を実現するために『知・情・意』、すなわち『知を磨き、情を育み、意を鍛える』ことを教育の基本理念としています。この『知・情・意』をバランスよく教育し、習得させることによって、これからも『人間味豊かな産業人の育成』を行っていきたい」