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特集・連載

大学は往く 新しい学園像を求めて

<193>四国大学
「先進的地域貢献大学」めざす
充実の留学制度  専門知識と実践力育成

 「全人的自立」が建学の精神である。四国大学(松重和美学長、徳島市応神町)は、1961年に徳島家政短期大学、66年に4年制女子大学を開学、92年、四国大学と名称変更して男女共学となった。現在、文学部、経営情報学部、生活科学部、看護学部の4学部と大学院、短期大学部を擁する総合大学に発展した。「先進的地域貢献大学」を標榜、地域教育の推進と産学公連携活動により地域貢献人材の輩出を目指す。①新しい視点、思考、コミュニケーション力を身につける少人数制教育②多くの学生が海外へ出かける充実の留学制度③教員・公務員試験対策講座など様ざまな就職支援による就職力などが特長。国の官民留学支援制度「トビタテ!留学JAPAN」の派遣学生比率で全国の私立大学で1位になった。「グローバル化や少子化による人口減少など、予測困難な時代、社会からの要請に応えるため、新しい時代と社会にあった教育で即戦力となる人材を育てています」と語る学長に学園の歩み、改革、これからを聞いた。(文中敬称略)

建学の精神は「全人的自立」

学長の松重が建学の精神を説明する。「全人的自立とは、知識・技術の修得とともに、人間的な成長を志向し、社会に貢献できる実践的な力を確立することです。一人ひとりの学生を大切に、面倒見の良いきめ細かな教育・指導により、社会で活躍するための専門知識と実践力を育てます」  四国大学は、1925年に創設された徳島洋服学校が淵源である。「初代理事長の佐藤カツが、専門職業人としての女性の自立を掲げて創設しました。これまでに5万人を超える有為な人材を社会に送り出してきました」
 戦後の1949年、徳島服装女学校として復興。61年、徳島家政短期大学(家政科)が開学。63年、徳島家政短期大学を四国女子短期大学に改称。64年、四国女子短期大学に幼児教育科を設置。
 66年、四国女子大学(家政学部家政学科)が開学。68年、家政学部に児童学科と管理栄養士養成課程を増設。72年、文学部(国語国文学科、英語英米文学科)を新設。92年、四国女子大学を四国大学に改称、男女共学となり、経営情報学部(経営情報学科)を新設した。

 95年、家政学部を生活科学部に改称。2001年、文学部に書道文化学科、経営情報学部に情報学科を設置。「書道文化学科は、東洋の書道文化を総合的に探究する類を見ない学科で、書道パフォーマンスなども展開しています」
 2009年、看護学部(看護学科)を新設。「保健、医療、福祉分野で地域貢献するのが狙いで設置しました。経営情報学部などとともに、徳島で学び、地域社会に貢献できる人材育成を目指しています」
 現在、2300人の学生が学ぶ。男女比は、男子31%、女子69%。出身地は、徳島県が79%と圧倒的で、次いで高知県、愛媛県、香川県、沖縄県と続く。
 大学の施設・設備が充実している。全天候型人工芝グラウンド・ガーネットクレイコート・高音質の音楽スタジオ・3Dプリンターなど最高の環境を整えている。「メディア情報学科では、4K映像の制作やプログラミングなど就職にも有利な教育活動を展開しています」
 松重が「先進的地域貢献大学」について語る。「社会人基礎力や自己教育力などを体得できる『四国大学スタンダード』を基盤に、域内最高レベルの就職率や国家試験・公務員の合格に繋がる専門教育を行っています。地域密着も他の大学にないものを展開、自治体と一緒に地域を先導する役割を担っています」
 県内3カ所にスーパーサテライトオフィスを設置、学生が地域の歴史や文化を学び活性化に繋げるなど積極的に地域連携を推進している。
 四国大学スタンダードとは、「教育と学生生活を通して、確実に身に付ける力として社会人基礎力、自己教育力、人間・社会関係力の三つを掲げ、全学共通教育を施すとともに、各学部ごとに地域連携のカリキュラムを組んでいます」
 先進的地域貢献大学として、文部科学省の平成26年度『地(知)の拠点整備事業』に採択され、地域教育の体系化を推進。徳島の魅力を満載した『大学的徳島ガイド』を出版するなど地域活性化につながる活動を展開している。
 文科省の平成29年度私立大学研究ブランディング事業にも選定。「徳島の名産の藍に伝統文化の側面からスポットを当て、ジャパンブルーの魅力を発信。食用藍に注目、効用や安全性について地域企業などと商品化を目指しています」
 地域研究では、「新あわ学」への取り組みがある。「徳島の現状を理解する『とくしま学』と徳島で新しく芽生えつつある要素を知る『あたらしい徳島』の2分野で、郷土への愛着をもって体系的に研究しています」。2月には、筆記と体験型試験からなる「あわ検定」を実施する。
 大学の学びでは、初年次教育に力を入れる。「全学共通科目として、入学直後に、レポートの書き方、討論、文献資料の検索、コミュニケーションなど大学での学習に必要な知識や技術、学生に求められる常識・生活態度を身に付けます」
 手厚い学生支援。学生サポートセンターは、学生生活に関する相談、学修支援センターは、学修支援を行う。「チューター制度があり、各学科の学年ごとに担当教員を配置、学生生活のすべてにわたって助言、学生の満足度を上げています」
 きめ細かなキャリア支援。「教員・公務員試験対策講座の計画・実施や受講相談、臨床心理士を中心としたキャリアカウンセリングなど、学生一人ひとりを全面的に支援。卒業後もキャリアアップ研修生制度やOB・OG支援プランでバックアップしています」
 就職率は、98.7%(平成29年3月卒業生)。資格取得も好調で、看護師国家試験の合格率は95.5%、管理栄養士は94.1%。教員・公務員合格実績者は164人、うち徳島県公立学校教員は20人だった。
 活発な国際交流。学内のワールドプラザは、ネイティブ教員とフリートークを楽しむ「Englishlunch」があり、英語を主体的に学ぶ。米国・中国・ベトナム・台湾などから留学生・研究生・教員を受け入れている。「毎年五月に米国の姉妹大学のサギノーバレー州立大学から学生が本学を訪れ、藍染めや書道を体験するなど日本の文化を学んでいます」
 中国の湘潭大学とダブルディグリープログラムをスタート。「言語・文化・習慣等の壁を越えて日本と海外の長所を融合し、グローバル化時代の新たな問題を解決するとともに地域に貢献できるグローカル人材の育成を目指しています」
 部活動も活発。スポーツ分野特別奨学金制度があり、陸上競技、弓道、女子サッカー・女子バレーボール・女子7人制ラグビー、ソフトテニスが指定競技。「女子サッカー部は創部から3年連続インカレに出場しています」。文化系では、「阿波踊り部」が徳島の大学らしい。
 大学のこれから。大学の置かれた現状から入った。「少子化、大学全入という時代を迎え大学統廃合が言われ、地方の大学は厳しいのは事実だが、ある面、チャンスと捉えたい。地方の大学は、地域において若い人たちに情報発信して存在感を示し、地域に基盤を持てばいい。それには、企画力や経営力が大事で、地域の伝統産業との連携も維持するだけでなく、全国、世界に発信すべき。地域において大学の価値、ミッションは大きい」
 こう結んだ。「ひとつの大学の存続を考えるのでなく、地域の発展を視野に入れるべき。地域経済を発展させる新しい分野へ進出するのもひとつ。消費相談員養成の消費者教育や特色あるプログラムによるスポーツ、芸術での海外連携など特色や魅力を打ち出せば、若者を呼び起こすことができる」。先進的地域貢献大学の誇りと役割の重さが、松重の顔に滲み出ていた。