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特集・連載

大学は往く 新しい学園像を求めて

<191>大阪大谷大学
専門性と実践力を養う
4学部で少人数教育  地域社会の要請に応える

薬学・文学・歴史・教育・人間社会の各分野で、専門性・実践力を養い、社会に貢献できる人材を育てる。大阪大谷大学(浅尾広良学長、大阪府富田林市)は、1909年に設立された大谷裁縫女学校が淵源である。爾来、「報恩感謝」という建学の精神のもと、次代を担う女性を育成してきた。1966年に大谷女子大学を設立、2006年、現在の大阪大谷大学に大学名を改称し、男女共学となった。現在、薬学部、文学部、教育学部、人間社会学部の4学部体制。①教員が一人ひとりの学生に寄り添う少人数教育②教職をめざす学生のための教職支援センターを設置するなど教員養成③学生のボランティア活動など活発な地域社会への取り組み―などが特長だ。「『ひと』と『こころ』を大切にする大学として、互いのいのちを尊び、感謝の心をもって人と接することができる人材を育てていきたい」と語る学長に学園の歩み、改革、これからを聞いた。
(文中敬称略)

「報恩感謝」が建学の精神

大阪大谷大学の前身である大谷裁縫女学校は、左藤了秀が真宗大谷派難波別院内に設立した。1911年、同女学校を大谷女学校と改称。24年、大谷高等女学校(現在の大谷高校)、30年、大谷女子専門学校をそれぞれ開設した。

戦後の1950年、大谷女子専門学校は大谷女子短期大学となる。66年、大谷女子大学(文学部国文学科、英文学科)を富田林市錦織に設置。学長の浅尾が説明する。

「真宗大谷派の大学で、学校法人大谷学園が運営しています。100年を超える伝統があり、学生と教職員、学生同士の距離が身近に感じられることが、本学の特長の1つです」

1970年、文学部に幼児教育学科、2000年、文化財学科、コミュニティ関係学科を増設。04年、文学部教育福祉学科を教育福祉学部教育福祉学科に改組。05年、文学部コミュニティ関係学科を人間社会学部人間社会学科に改組。

06年、大阪大谷大学に大学名を改称、薬学部薬学科を設置。「大阪南部に薬学部がなく地元の要請もあって開設。これを契機に全ての学部を男女共学にしました。これまでの女子教育の長い伝統を基礎に、男女共同参画社会の到来という時代の流れに応えました」

12年、人間社会学部にスポーツ健康学科を設置。教育福祉学部教育福祉学科を教育学部教育学科に改称。14年、大阪市阿倍野区のあべのハルカスに「ハルカスキャンパス」を開設。「各種説明会や公開講座などに使っています」

「スポーツ健康学科は、希望する学生も多く、スポーツ指導者の養成をめざしました。教育福祉学部を教育学部としたのは、福祉は人間社会学部で、教育学部には教員養成1本に絞ることにしました」

現在、4学部に3152人の学生が学ぶ。男女比は、薬学部は女子が多いが、他の学部は男女がほぼ同数。出身地は、大阪、奈良、和歌山を中心に京都、兵庫と近畿圏が大半だという。

大学について語る。「自立・創造・共生の教育理念の下、少人数教育体制を整えて、教員が一人ひとりの学生に寄り添い、対話し、学生の能力を最大限伸ばすよう取り組んでいます。学びでは、専門性に加え、フィールドワークなどを重視して実践力を培うよう指導しています」

4学部の学び。薬学部は、薬のプロフェッショナルとして自分で考えることができて社会で活躍できる薬剤師を養成。「薬学の幅広い知識を修得し、患者さんと共感できる能力を持って接し、信頼関係を構築するコミュニケーション力を養います。実習に力を入れ、卒業後すぐに即戦力になれるよう指導しています」

文学部は、日本語日本文学科と歴史文化学科の2学科。文学・言語・歴史など多様な人間文化に関する基礎的知識を学び、普遍的で創造的な思考力と表現力を身につける。「座学だけでなく、歴史に出てくる現物や文学の舞台を観るなどフィールドワークを重視、人間と社会に対する洞察力を備えた人材を育成します」

教育学部教育学科は、保育士、小中学校・高校教員、特別支援学校の教員を養成する幼児教育、学校教育、特別支援教育の3専攻がある。教育学の理論を学んだうえで、保育、学校、特別支援教育の現場に出て実践力を培う。「実践力に裏打ちされた専門性こそ、真の専門性だと本学では考えています」

人間社会学部は2学科。スポーツ健康学科は、地域スポーツと健康運動の2コース。「理論と実践を学び、スポーツと健康を通して社会に貢献できる人材を育てます」。人間社会学科は、心理、社会福祉、経営情報、現代社会の4コース。「幅広い教養と知識を育み、現代社会の多様な課題に応えられる即戦力の人材を育成しています」

グローバル化では、英語教育の拠点となる英語教育センターを開設した。「スマホでも利用可能なeラーニングシステムを導入するなど大学生としてふさわしい英語力を身に付けるための学習支援を行っています」

就職支援。就職内定率は学部によって異なるが全体で96.8%(平成28年度卒業生)。社会人基礎力をつけるキャリア科目とともに資格取得に重きを置く。「多様な資格取得課程を設け、授業だけでなく資格・受験の一括申請など資格取得を目指す学生を支援しています」

教員育成に傾注する。卒業生が保育士、幼稚園・小中学校・高校・特別支援学校の教員として大阪府をはじめ、全国各地で活躍。「入学直後から始める教職オリエンテーションや所属ゼミできめ細かく指導。幼児教育実践研究、教職教育、特別支援教育実践研究の3つのセンターが実習から採用試験対策までサポート、毎年多くの現役合格者が出ています」

学生のボランティア活動が活発だ。「チームY・A・O」というサークルがある。多種多様なイベントやボランティア活動に取り組むとともに、ボランティア募集の窓口となって学生、教職員と地域住民の間をまとめる役回り。

主なボランティア活動。「劇団ポリス」は、犯罪や防犯について小学校などで寸劇を披露して啓発している。「青パトドーナッツ」は、大学近くの小学校児童の見守りや防災・防犯イベントに参加して地域に貢献している。

「学生のボランティア活動は、地域社会とかかわる取組みが多い。学生が主体となって様々なプログラムを設け、実践・体験することは、大学の授業ともつながり、専門性を深め、実践力を育成することにも役立っていると思います」

スポーツ系クラブも頑張っている。「女子ソフトボール部は、近畿1部リーグで3位になりました。硬式野球部も、近畿学生野球連盟1部リーグ昇格まであと一歩のところまできています。みんな、スポーツを通して絆を深めています」

同大は、昨年の創立50年を機会に長期計画をつくった。2016年から2025年までの計画で、今年は2年目になる。「社会から必要とされる大学を目指す、が柱でカリキュラム改革や校舎建て替えなど年度ごとの目標がありますが、一部未達もありますが、概ね計画通り進捗しています」

大学のこれから。「少子高齢化により全入で入ってきた学生が巣立っていく時代になっています。これまでの社会の仕組みや価値観が大きく変わり、予測困難な時代とも言えます。そのためには、丁寧な教育によって学生の思いを形にして社会に送り出すことだと思います」

具体的には?「専門分野の深い知識とともに、他者と協力して困難な課題に挑むことのできる力、実践力を身につける教育を今後とも行っていきたい。生涯教育が言われていますが、本学は、これまで地域密着でやってきました。これからも地域社会の要請に応え、専門性と実践力をもつ地域社会の発展を担う人材を育成していきたい」。浅尾は、「地域社会」と「専門性と実践力」に力を込めた。