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大学は往く 新しい学園像を求めて

<174>東京福祉大学
資格取得重視で就職力誇る
通学と通信講座  アクティブ・ラーニングを実践

「思考力・判断力・表現力」を身につけさせ、学生一人ひとりの能力を伸ばす。東京福祉大学(藤田伍一学長、群馬県伊勢崎市)は、2000年に開学したフレッシュな大学。通学課程と通信教育課程があり、キャンパスは伊勢崎のほか東京・池袋と王子、名古屋にある。社会福祉学部、心理学部、教育学部の3学部で、教育・心理・保育・福祉のスペシャリストを育てる。開学当初からアクティブ・ラーニングを展開、実践的な知識と技術を身につけ、資格取得を重視してきた。就職率ランキングで文系大学のみの全国1位(2016年3月卒業生の就職率94.9%)になるなど就職に強い大学。2018年には、保育児童学部を新設する予定。「理論的で科学的能力と実践的能力を統合し、柔軟な思考力と問題発見や解決能力のある人材を育てたい」と語る学長に大学の歩み、改革、これからなどを聞いた。

(文中敬称略)

教育・心理・保育・福祉の専門家育成

4つのキャンパス。伊勢崎は、赤レンガ調の校舎と緑の芝生のコントラストが美しい。池袋は池袋駅東口から徒歩四分、王子は京浜東北線・東京メトロ王子駅から徒歩15分と、ともに都心に立地。名古屋も同市中心部の丸の内にある。

通学課程の学生は、出願時に希望するキャンパスを第3希望まで選択することができる。その後は入試で合格して選んだキャンパスに通学する。通信教育課程のスクーリングも希望するキャンパスで可能だ。

学長の藤田が大学を語る。「『理論と実践の統合』を建学の精神に位置づけています。書物で知識・理論の習得に努めるだけでなく、『実習』に力を入れることで、『現場』で応用できる柔軟な実践力を養うことがねらいです」

さらに、続けた。「全ての学生が双方向対話型の授業を基本とする本学の教育方法を通して学力を伸ばします。そして、国家試験や公務員試験、教員採用試験、臨床心理士試験などの各種試験に合格できるような教育を実践し、卒業後の明るい未来を保障します」

東京福祉大学は、伊勢崎市に社会福祉学部一学部で開学した。「介護保険制度がスタートした年で、社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士などの育成が叫ばれ、それらの絶対数が足りないという地元からの要請もありました」

2003年、大学院社会福祉学研究科、05年に社会福祉学部保育児童学科を開設。06年、短期大学部を伊勢崎市に開設。07年、法人名を東京福祉大学から茶屋四郎次郎記念学園に変えた。

同年、教育学部(教育学科)を開設。「社会福祉学部に特別支援学校教諭等を養成する課程がありましたが、一般の小中学校の教員も育成しようと設置。アクティブ・ラーニングを実践した4年間の学びで教員採用試験の合格を目指しています」

08年、池袋、名古屋キャンパスを設置。09年、心理学部(心理学科)を開設。「社会福祉学部に福祉心理系の専攻があり、そこから独立した形です。心理学を学び、認定心理士や精神保健福祉士などの受験資格も取得できます」

11年、大学院教育学研究科を開設。14年、社会福祉学部に経営福祉専攻を設置。同年、王子キャンパスを開設した。現在、4キャンパスに3875人(通信教育課程は2385人)の学生が学ぶ。男女比は、男子46%、女子54%、出身地は関東地区が70%を占める。

海外からの留学生が多いのも特徴だ。「留学生は全体の10.0%を占めます。中国、ベトナム、カンボジア、ミャンマーなどアジアからの留学生が大半です。ポーランド、ブルガリアなど東欧からの留学生もいます」

各学部の学び。社会福祉学部社会福祉学科は▽社会福祉(社会福祉と介護福祉コース)▽精神保健福祉▽経営福祉の三専攻。「福祉ニーズに対応でき、実践力が備わった即戦力となる社会福祉士・精神保健福祉士・介護福祉士等の福祉人材並びに社会福祉関連施設等の管理・運営者を養成します」

同学部保育児童学科は、保育士、幼稚園教諭、保育教諭や子育て支援・幼児教育の専門家の養成を目指す。「子どもを取り巻く現代社会の問題を正しく理解し、的確かつ柔軟な実践力を備えた、多様な保育ニーズに対応できる人材です」

教育学部教育学科は、学校教育と国際教育専攻がある。小学校教諭・養護教諭・中学校教諭(英語・保健)、高等学校教諭(英語・保健・情報)、日本語教員等を目指す。

「情報化・グローバル化社会が進む中で、児童や生徒一人ひとりの可能性と生きる力を育むことのできる人間力と国際理解力を兼ね備えた教員の育成を目指しています」

心理学部心理学科は、▽総合心理学▽発達・教育心理学▽臨床心理学▽犯罪心理学▽福祉心理学▽社会・ビジネス心理学の六コース。「現代社会が抱えるさまざまな問題に心理学の観点からアプローチでき、心理の職域のみならず福祉・教育分野はもとより、一般企業でも能力を発揮できる人材養成を目指しています」 

独自の「アクティブ・ラーニング」の実践。高校時代に勉強が苦手だった学生も楽しく授業が理解できるよう、授業ではディスカッションや発表の機会を積極的に取り入れている。

「話し合いや課題解決を通して基礎的な学習能力を身に付け、学部ごとに設定されている教育目標に沿った、将来社会に出たときに必要となる知識をわかりやすい方法で学ぶことができます」

就職力。「大学ランキング2017」(朝日新聞出版)の職業別採用者数では、保育士(全国3位)・幼稚園教員(全国14位)・特別支援学校教員(全国2位)・小学校教員(全国22位)にランクイン。

「各支援室の親身な支援が高い就職率につながっています。国家試験合格者数でも、社会福祉士は全国8位(通信教育課程は全国六位)、精神保健福祉士は全国4位(通信教育課程は全国2位)にランクインしました」

国際交流や地域貢献も活発。国際交流では、これまでも短期海外研修を実施し、海外からの研究生・留学生を受け入れてきた。「国際交流は、大学の新たな社会的責務と考え、今後とも意欲的に取り組んでいきたい」

地域貢献では、各キャンパスで、その地域に沿った公開講座などを展開する。伊勢崎キャンパスでは、「ボランティアチューター」という教職ボランティアの学生が地元の小中学生の夏休みの補習などを手伝っている。

「地域貢献は広い意味で社会貢献に含まれます。地域社会に開かれた大学として、生涯教育における学習ニーズに応えていきたい。それとともに、地域の人々に対して、様々な地域連携活動を展開して社会貢献を推進していきたい」

大学のこれから。「18歳人口の減少という大学にとっての危機は、18歳を対象としているだけでは駄目だと思います。国際化の推進とともに留学生の受け入れの拡充や社会人を対象にした学び直しを視野に入れていく必要があります。また、IT技術の進展への対応も考えていく必要があります。インターネットや通信を利用した授業にも力を入れたい」

具体的には?「学び直しでは、通学通勤に便利な池袋キャンパスを中心にした夜間大学院という構想があります。また、4つのキャンパスを持つ本学の強みとして、ネット技術を利用した遠隔教育なども考えられます」

最後は、冒頭の言葉に戻った。「予測困難なこれからの社会。正解のない問題に対して自分なりの答えを見出していく『思考力・判断力・表現力』を身につけた学生を育てることが、これからも求められています。教育力の高い大学として社会の要請にこたえ、我が国の発展に貢献できるよう、教育・研究体制の充実に努めていきたい」