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大学は往く 新しい学園像を求めて

<237>西南女学院大学
地域に支えられる大学めざす
建学の精神「感恩奉仕」 国際化、地域貢献に尽力

 「感恩奉仕」を建学の精神とし、キリスト教に基づく女子教育を施している。西南女学院大学(工藤二郎学長、福岡県北九州市小倉北区)は、1994年に創立されたフレッシュな大学。学校法人西南女学院は、1922年、米国南部バプテスト連盟の援助を基に設立された。現在、西南女学院大学は、保健福祉学部、人文学部、別科(助産)を擁し、短期大学部(保育)を併設している。開学以来、高い就職率を維持、卒業生は地域社会で活躍している。①キリスト教を教育の基盤に人を成長させる学び②海外留学・海外研修や交換留学プログラムなど進む国際化③経験や実習を重んじる積み上げ型のカリキュラムなどが特長。「近未来の日本の姿は、女性の活躍であると唱えられています。『感恩奉仕』の精神は脈々と受け継がれ、地域によって支えられる大学をめざしています」と語る学長に女学院の歩み、改革、これからを聞いた。(文中敬称略)

キリスト教が教育の基盤

「西南女学院の7代目学院長のW.M.ギャロット先生は、このように話されました」。学長の工藤は、こう語り出した。
 「『かなめ』は人生に、また学校になければなりません。しかも、そのかなめは神の御心でなければならない。西南の『西』に女学院の『女』を合わせると、『要(かなめ)』の字になります。このギャロット先生の講話以来、かなめという言葉が、西南女学院関係の催しなどに用いられてきました。1昨年、学生の応募により、天使の姿の『かなめ(要)ちゃん』が大学のイメージキャラクターとなりました」
 建学の精神の「感恩奉仕」を説明する。「神の恩寵(おんちょう・恵みの意味)の中に生かされていることへの感謝を意味する『感恩』と、隣人への愛を意味する『奉仕』を教育の基盤としています」 
 学校法人西南女学院は、1922年、姉妹校である西南学院(G.W.バークレー院長・学長、福岡市早良区)を設立したC.K.ドージャーと共に日本へ来た宣教師J.H.ロウが創設した。
 「西南女学院は、日本の女子教育への篤い思いを抱いたJ.H.ロウら米国南部バプテストの宣教師と、その呼びかけに応えた南部バプテストの女性たち並びに諸教会の尊い献金によって創立されました」
 キリスト教による学びについて続けた。「90年以上に及ぶキリスト教に基づく女子教育の伝統を引き継ぎ、総合的な人間理解と実践力のある人材を育成。壮麗な聖書の世界が描かれているステンドグラスのあるマロリーホールでは、毎週水曜と木曜にチャペルを開催、チャペルでの祈りのひとときから建学の精神を学びます。毎年クリスマス時期にはクリスマス礼拝が行われます」
 西南女学院大学は、1994年、保健福祉学部(看護学科、福祉学科)の1学部2学科で開学した。2002年、保健福祉学部に栄養学科、同年、人文学部(人文学科)を新設。
 06年、人文学科の募集を停止、英語学科、観光文化学科を開設。08年、助産別科を新設。09年、福祉学科に、指定保育士養成施設を開設。10年、人文学科を廃止した。
 現在、2学部に1560人の学生が学ぶ。出身地は、北九州市が37%、北九州市以外の福岡県内が26%、山口県が15%、大分県が8%と福岡、山口、大分の3県が多い。
 学部・学科の学び。授業は全学部少人数体制で行っており(1クラス15人~60人)、アドバイザー教員1人あたり10人前後の学生をサポートする。
 保健福祉学部は、看護・福祉・栄養。分野を越えて連携できるこれからの時代の専門職を養成。「重要なのは、それぞれの専門職がお互いの役割を認識し、分野を越えて連携、協働することです。看護・福祉・栄養の分野の総合的な教育によって、地域社会や国際社会の高度なニーズに応えることのできる専門家の育成をめざしています」 
 看護学科では、看護師や保健師をめざし、「看護を学ぶための基礎」「看護実践の基本」「看護実践の応用・展開」「看護実践の統合」「看護実践の充実」と段階的なカリキュラムで、看護実践能力を身につけるための教育を施している。
 福祉学科は、社会福祉士や保育士等をめざし、「福祉専門科目」のほかに、「精神保健福祉関係」「心理関係」「保健・医療関係」「保育関係」などの幅広い専門科目を開設。実習・演習教育でも独自のカリキュラムを展開している。
 栄養学科は、栄養評価・判定に基づいた総合的な栄養管理を行うことのできる能力を養う。医療、看護、福祉と「食」のつながりを学ぶことにより、「医療・介護制度やチーム医療の一員」としての任務を果たせる管理栄養士を養成。
 人文学部は、確かな語学力をベースに、21世紀が求める世界人を育成する。
 「英語学科では、国際的視野と地域的視野に立って考え自主的に行動できる能力を、観光文化学科では観光業界はもとより、国際社会でも通用するビジネス全般にわたるスキルを磨きます」
 英語学科は、1年次から4年次まで、英語4技能(聴く・話す・読む・書く)を中心とした体系的な学習ができます。また、入学時より各自のキャリアデザインに応じた、将来に有利な科目選択が可能。
 観光文化学科は、ツーリズムコースとビジネスコースを設置し、学生は自分の興味・関心に応じた科目を選択できます。専門の幅が広がるので就職に有利です。また、語学(英語・中国語)においても多様な科目がある。
 学科別に就職率をみると、福祉学科(97・2%)以外の学科は100%。「看護学科46%、福祉学科49%、観光文化学科41%、保育科67%が北九州市内に就職しています。地元の北九州市からは、今後とも市内就職を定着させてほしいと高く評価されています」
 キャリア教育は、就職課が牽引する。「夏と春のインターンシップ、就活セミナー、企業訪問バスツアー、先輩の体験懇談会などを開催。公務員、医療事務、秘書検定などの対策講座も充実しています」
 地域貢献活動は、地域連携室が担う。2年前から福祉学科の学生2人が「住宅型有料老人ホーム」に入居。「週3回以上、高齢者と一緒に食事をしたり、この施設が運営する心身障がいのある子どもたちの支援活動も行っています」
 このほか、外国クルーズ船が北九州に寄港した際、おもてなしをする「クルーズおもてなしイベント」や食と健康に関する地域密着型食育活動を展開する「食育イベント」など各学科の特徴を生かした多彩な活動を行っている。
 グローバル化にも尽力。1年以上在学している学生を対象に、海外留学を実施している。現在、マーサー大学(アメリカ)、バンクーバー・アイランド大学(カナダ)、ネルソン・マルボロ・インスティテュート・オブ・テクノロジー(ニュージーランド)、ウィンチェスター大学(イギリス)、大連大学、上海師範大学旅遊学院(中国)、培材大学校(韓国)と姉妹校・協定校の提携を締結。
 「グローバルに活躍できる人材育成のため、世界各地に広がる留学ネットワークを整え、留学期間は半年間または1年間。留学した学生からは『異文化に触れながら自分と向き合う、貴重な経験が出来た』といった声が届いています」
 大学のこれから。「本学の良いところは、多くの卒業生が教員や大学と接触を保ち続けているところにあります。卒業生は新しい研究や知識に触れて成長し、大学も専門的な職業の実態などを知ることができます。これからも困難に対してひるまず、社会に貢献できる自立した、人間としての互いの絆を大切にする卒業生を社会に送り出していきたい。そして、3年前に設置した地域連携室をさらに強化、発展させて地域に貢献し、地域から深い信頼を得続けていきたい」
 こう結んだ。「これからの時代に特色ある国際化や福祉や高齢化社会への対応、そして生涯学習時代に即応した教育をキリスト教精神と併せて、責任を果たせる21世紀の女性リーダーの育成を目標としたい」