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特集・連載

大学は往く 新しい学園像を求めて

<220>北海道情報大学
産・学・研連携で人材育成 法人が数々の研究所を擁す
高度情報通信社会に対応

 北海道情報大学(HIU、澤井 秀学長、北海道江別市)は、1989年に設立されたフレッシュな大学。社会のニーズに対応し、高度情報通信社会に求められる新しい学問領域の創造を目指す。同大を運営する電子開発学園(eDC、松尾泰理事長)は、総合システム企業の(株)SCCや宇宙開発の技術者集団の宇宙技術開発(株)、北海道情報技術研究所(HiiT)を擁しており、「産・学・研」の連携で次世代をリードする人材を育成する。時代の潮流に即応するため学部学科の改組改編に取り組み、現在、経営情報学部、医療情報学部、情報メディア学部の3学部の「情報の総合大学」となった。「IT機器を駆使して問題を解決できる人材が、企業や行政などあらゆる分野から強く求められています。その要求に応えるためには、ITに関する高度な知識とスキルに加えて、物事の本質を見きわめる能力を身に付けた人材を育成していきたい」と語る学長に大学の歩み、改革、これからを聞いた。
(文中敬称略)

3学部の新しい大学 情報の総合大学

 HIUのキャンパスは、北海道の大自然が保存される原始の森・野幌森林公園に隣接。校舎群は周囲の緑豊かな快適な景観にマッチするよう構成されている。2011年に完成した「eDCタワー」がランドマークになっている。
 学長の澤井が「産・学・研」連携を説明する。「産は、SCCなどの産業界とIT技術の提供から宇宙開発までテクノロジーを創造。学は、本学とeDCグループの全国10校の専門学校の教育力。研は、HiiTの未来を拓く情報通信技術研究力。産学研の3つの協同ネットワークで、実践的でリアルな教育を展開しています」
 北海道情報大学は、1989年に経営情報学部(経営学科・情報学科)の1学部2学科で開学した。「今日は情報革命の時代、変革の時代です。このような激動の時代を支える優秀な人材を多く育成したいと考えました」
 理事長の松尾が補足する。「本学は、情報を学術的・学問的にとらえるだけではなく、幅広く情報を感じ取る豊かな感受性や、情報を冷静に判断する理性、さらに情報を発信する創造性を養う教育・研究を積極的に推進しています」
 94年、我が国で初の衛星通信を活用した通信教育部を設置。「衛星から全国に映像を配信。日本の大学通信教育では、文科系や福祉・看護・医療分野の学科が多いですが、本学は、情報科学に関する学科を設けています」。現在、衛星ではなく専用回線を使って運用。通信教育部には3000人の学生が学ぶ
 96年、大学院経営情報学研究科、2001年、情報メディア学部、06年、経営情報学部に医療情報学科を設置。08年、情報メディア学部にメディアデザインとメディアテクノロジーの2専攻を設置。
 13年、経営情報学部・医療情報学科から医療情報学部・医療情報学科を開設。医療情報学部にメディカル・マネジメントとメディカル・サイエンスの2専攻を設置。海外の大学とも次々に連携協定を結んだ。
 1999年、中国の南京大学、08年、タイのラジャマンガラ工科大学タンヤブリ校(RMUTT)、2015年、米ポートランド州立大と、現在、6ヵ国、13大学と提携している。「RMUTTとはICTを活用した共同制作作業を伴うワークショップを8年間も開催しています」
 現在、3学部に1500人の学生が学ぶ。男女比は男子87%、女子13%、出身地は道内が90%を占める。
 3学部の学び。経営情報学部は、2学科3専攻。先端経営学科は、ITスキルと専門知識と、「主体的に提案する力」を身につけ、企業に求められる人材を目指す。システム情報学科のシステム情報専攻は開発最前線を知る教員から学び、真に社会から求められるIT技術者を、宇宙情報専攻は、新たなITの可能性を見出すことのできる、宇宙情報のエンジニアを目指す。
 医療情報学部は、医療情報1学科2専攻。診療情報管理専攻は、ITやマネジメントの側から、医療や人の健康を支えるスペシャリストを、臨床工学専攻は、医療と工学を広く深く学び、現代医療に欠かせない臨床工学技士を目指す。
 情報メディア学部は、情報メディア1学科2専攻。メディアデザイン専攻は、実践プロジェクトやコンテスト、イベントを通じ、楽しみながら即戦力となる実力を養う。メディアテクノロジー専攻は、高度・高質化するメディアを支えるプログラミングに精通した人材を養成。
 実践力を養うユニークなカリキュラム。「産・学・研協同による関連企業や研究機関との連携により、情報技術の最前線のニーズに呼応したカリキュラムを確立。IT技術関連の各種資格取得をバックアップする受験講座やガイダンスも随時実施。資格取得をサポートしています」
 学びでは、情報に特化した様々な取り組みを展開。自ら問題を発見して解を出す能動的学習の推進。「主体的学びに導くためのICT環境モデル構築、現代社会の要望に応えるアクティブ・ラーニングに取り組んでいます」

宇宙産業の未来に貢献

 JAXA・SEDと連携、日本の宇宙産業の未来に貢献。「宇宙開発において、ICTは必須で、宇宙開発の重要な位置を占めています。それを全力で支える体制を整え、高度研究にチャレンジしつつ、新たな可能性を探っていきたい」
 さらに、食と情報を研究基盤にした地域モデルの開発。「機能性食品の科学的エビデンスを蓄積して、健康の維持・推進に有用な機能性食品を活用した健康増進、予防医療を統合したシステムのモデルづくりに取り組んできました。これは、『江別モデル』と呼ばれ、地域密着型の予防医療・健康情報システムとして発展しています」
 充実した最先端のハイテク設備。独自に開発した遠隔教育システム「PINE-NET Ⅱ」を活用した先進メディア教育を展開。「クリエイティブな映像表現を実践するためのバーチャルスタジオ、モーション キャプチャー、ノンリニア編集システムなど、最先端の設備・施設を積極的に導入し、次世代教育を実践しています」
 高度なインターネット環境。学内は超高速ネットワーク「ギガビットLAN」により一千台を超えるコンピュータが接続され、インターネット利用環境も充実。「学生個々のニーズに対応するためオンデマンドな学習環境の構築も推進しています」

就職力は道内トップ級

 直近5年の平均の就職率は95.7%。就職力は道内トップクラス。就職先はIT関連企業をはじめ流通、メーカー、官公庁、金融など多彩。「就職委員会とゼミ担当委員、学生サポートセンターが一丸となって学生の将来を考え、親身に個別サポート。個別の面談で一人一人に合わせた就職対策を施しています」
 手厚い学生支援。勉学で悩んだ時には、「学修支援アドバイザー」が手厚くケアしている。「松尾特別奨学金」や「学術奨学生制度」など独自の奨学金制度がある。「学生寮は、松尾特別奨学金の生活支援生として採用された学生を入寮させている奨学生寮となっています」
 地域貢献は、「地域連携・産学連携センター」が担う。「地域との連携事業や教育・研究活動の推進、生涯学習に関する事業の企画・立案及び実施。企業などの外部機関との共同研究や受託研究の推進等により、教育・研究活動の成果を地域や連携先へ還元し、それらの活動をより一層活性化させています」
 学生の活動は、北海道情報大学らしさが出ている。「ETロボコン」や「北海道ドローン選手権」への出場、「サイエンスパーク2018」や「ものづくり学校祭」への参加、「東京ゲームショウ」への出展...等で活躍している。
 大学のこれから。「経済産業省の予測では、2030年にはIT技術者が79万人不足すると言われています。本学は、これまで、学習者適応型eラーニングなどの、ITを利活用する先進的な教育システム環境の中で、知識とスキルならびに能力を身に付けさせてきました。今後とも、少人数教育に重点を置いて、知識やスキルのみならず、コミュニケーション能力や問題発見・解決能力を育む教育を実践し、IT教育という本学の強みを生かして、ITの素養を持った人材を社会に送り出していきたい」。「IT教育という本学の強み」という言葉に力が込められた。