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大学は往く 新しい学園像を求めて

<215>大阪人間科学大学
対人援助のプロを育成
国家資格に強い 2020年度から3学部体制に

 国家資格に強い、福祉・教育・心理・医療技術の専門大学。大阪人間科学大学(田中保和学長、大阪府摂津市)は、他職種と協働して活躍できる対人援助のプロフェッショナルを育てる。人間科学部1学部、6学科・4専攻で、各分野を横断した「チーム支援」や対人援助のプロを育成する「H・P・P」(ヒューマン・プロフェッショナル・プログラム)などが特長。社会福祉士など福祉の三大資格や保育士、幼稚園教諭、視能訓練士や言語聴覚士、理学療法士などの国家資格取得に強い。国家資格となった公認心理師の資格取得にも傾注。現在、2020年度から3学部・7学科の「対人援助の総合大学」として、さらに進化させる改革の準備に追われる。「対人援助の専門職業人として活躍するためには、できるだけ多くの実体験の場を経験することが重要。実習はもちろん、ボランティアや地域連携活動、インターンシップなど様々な体験をさせ、学生の特性を伸ばしたい」と語る学長に大学の歩み、改革、これからなどを聞いた。 (文中敬称略)

建学の精神は「敬・信・愛」

 大阪人間科学大学は、1931年に創立者・小川高光が創立した薫英女子学院が淵源。38年、薫英女学校と改称。41年、薫英高等女学校、戦後の48年、薫英高等学校となる。51年、学校法人薫英学園となる。
 66年、薫英女子短期大学が開学。97年、大阪薫英女学院中学校開校。2001年、大阪人間科学大学(人間科学部社会福祉学科、人間環境学科)が開学。05年、健康心理学科開設。06年、大阪人間科学大学大学院人間科学研究科開設。
 08年、人間環境学科を環境・建築デザイン学科に名称変更。11年、薫英学園が創立80周年を迎える。12年、人間科学部に医療福祉学科(介護福祉専攻・視能訓練専攻)、子ども福祉学科、医療心理学科(臨床発達心理専攻・言語聴覚専攻)開設。
 16年、人間科学部に理学療法学科開設、6学科・4専攻となる。17年、人間科学部の子ども福祉学科を子ども保育学科に改称。
 現在、1330人の学生が学ぶ。男女比は男子46%、女子54%。今年度入学者の出身地は、大阪が60%で、京都、兵庫など近畿圏で84%を占める。
 学長の田中が建学の精神を語る。「『敬・信・愛』」とは、人を尊敬し、信頼し、愛するとともに、人からも尊敬され、信頼され、愛される人間の育成、すなわち全人教育を目指すものです。この精神をふまえ、自ら考え行動する『自立』と、他者を思いやる『共生』の心を培う人間教育を教育理念としています」
 学びについて続けた。「少人数制教育など、しっかりと勉強ができる環境で、講義、演習、実習を通して、自らの成長を実感。4年後、資格取得や就職など、本当の意味で『結果を得られる大学』を実感してもらいます。全教職員が学生の『成長に本気』です。卒業するすべての学生の満足度を100%にしたい」
 就業・職業意識を醸成する「キャリアポートフォリオ」を活用する。「学生のボランティアなど主体的な活動を起こすきっかけ作りにもなります。データ化して、ゼミ担当教員や就職担当職員が情報を共有化し、キャリア形成に役立てています」
 6学科・4専攻の学び。社会福祉学科は、社会福祉が実現すべき価値・理念が提起できるよう、「ソーシャルワーカー(社会福祉士・精神保健福祉士・スクール―ソーシャルワーカー)」として求められる能力を身に付ける。
 医療福祉学科は2専攻。介護福祉専攻は、介護の専門職として高い倫理観と専門的知識・技術を身に付ける。視能訓練専攻は、視能訓練士として必要な専門的知識と専門技術を修得する。
 子ども保育学科は、人の育ちに必要となる知識や技能に関する確固たる基礎基本や「子どもの最善の利益」を追求し続ける精神を習得。実践や体験を、自分の言葉で客観的に伝えることのできる力を身に付ける。
 健康心理学科は、自分自身や他者の健康の維持・増進に貢献できる心理学や健康科学の知識と能力や対人援助の専門職業人として幅広い知識と技能、学修の成果を研究活動として結実させる力を身に付ける。
 医療心理学科は2専攻。臨床発達心理専攻は、人間の発達や人生の様々な段階での問題とその対応策を身に付ける。言語聴覚専攻は、言語聴覚士としての専門的技術を修得している。
 理学療法学科は、社会で活躍・貢献しうる理学療法士となれるよう、理学療法学の専門的な知識と技術や学内演習や臨床実習を通して人間性を築き、実践的で科学的な理学療法士の能力を身に付ける。
 国家資格に強い大学。通常の講義における試験対策に加え、希望者を対象とした資格試験対策講座を実施している。「模試の結果や学習の進捗状況は、学生と教員で共有。試験に向けた個別サポートを徹底しています」
 今年卒業の就職内定率は95%。2017年度の社会福祉士合格率は42.1%(全国平均30.2%)で、大阪私大2位。同精神保健福祉士合格率は75.0%(全国平均62.9%)で、大阪私大2位。同介護福祉士合格率は100%(全国平均70.8%)。
 「チーム支援」の学びは、6学科・4専攻の枠を超え全学科・専攻の学生が交流する少人数制のゼミ。「人間科学演習Ⅰ・Ⅱでは対人援助のプロを目指して、コミュニケーション能力や様々な分野の基礎的な専門知識を横断的に身に付けます。社会に出た時に必要となる他分野の専門職との連携を実践的に体験できます」
 「H・P・P」は、資格取得支援・専門的能力の獲得・キャリア形成という3つの軸を柱にしたプログラム。「入学前から卒業まで4年間、しっかり学生をサポート。学生に伴走しながら丁寧に対人援助のプロとしての成長を実現します」
 学生スポーツでは、女子バスケットボール部が強豪校として知られる。全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)で2004年・2007年・2011年の3度準優勝という成績を残している。
 ボランティア活動も活発。フットサル部は、部活動の一環として年少~小学校低学年を対象に毎週土曜日、フットサル教室で教えている。「大学での学びを生かして視覚障がい者ガイドヘルパーとして活動している学生らが多くいます」
 2020年度から保健医療、心理、人間科学の3学部となる大改革。「新分野を加え、互いに連携しながら、さらに幅広い『対人援助の専門職業人』を育成するのがねらいです。医療分野に限定しない領域で他職種連携を実践できる『チーム支援のリーダー』を育てたい」
 具体的には?「保健医療学部は、リハビリテーション系の3分野(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)が1つになり、他職種と連携できるリーダーを養成。心理学部は、2つの心理領域を統合、公認心理師への資格支援を強化。人間科学部は3学科で、子ども保育学科では新たに小学校教諭免許取得が可能になります」
 3学部・7学科体制で、特長であるチーム支援や資格取得サポート、地域貢献なども進化させるという。「対人援助演習では、3学部7学科のすべての学びが集結、1年次からチーム支援を学びます。資格取得は対策講座などでより高い合格率をめざします。摂津市や附属幼稚園などと連携、地域社会へ視野を広げたい」
 大学のこれから。現在、次年度からの「新生5カ年計画(2019~2023)」を策定、3学部・7学科体制に向けて、これまでとは一味違う「ブランディング活動」を展開するという。
 田中は、こう結んだ。「テーマは、『未来科見学~近い未来、対人援助はヒーローになる~』で、具体的には、『子どもをハブにして大学と社会をつなぎ、未来を生きる子どもたちと日本の宿題を解決する』活動です。子どもが将来なりたい職業に、本学が養成する『対人援助職』をランクインさせたい」。「対人援助の専門職業人を育成する大学」を何度も繰り返した。子どもが将来なりたい職業に『対人援助職』がランクインする日が待ち遠しい。