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特集・連載

大学は往く 新しい学園像を求めて

<214>関西福祉科学大学
福祉科学を土台に専門家養成
少人数教育高い就職率 資格取得重視の学び

福祉科学をベースに知識や技術を通して社会貢献できる専門家養成を旗印にする。関西福祉科学大学(八田武志学長、大阪府柏原市)は、1997年に設立されたフレッシュな大学。社会福祉、心理、健康福祉、保健医療、教育の5学部から成り、高度な専門教育を通じて「人を幸せにする」福祉・心理・栄養・医療・教育の専門家を育てている。学校法人玉手学園が運営、キャンパス内には短大・専門学校・高校・幼稚園がある。2012年に学園創立70周年を迎えた。教員と学生の距離が近く、学力を伸ばせる少人数制の演習(ゼミ)形式の授業や幅広い分野での就職が可能になる資格取得重視の学びなどが特長だ。
「世界を舞台に活躍する人を育成するという方向性ではなく、しっかりとした倫理観・教養を持ち、資格をきちんと取得し、自分を育ててくれた地域で基幹的な人間になれる人材を育てたい」と語る学長に学園の歩み、改革、これからなどを聞いた。 (文中敬称略)

「人を幸せにする」5学部

 関西福祉科学大学は、1942年に創業者の山田藤一が設立した玉手山高等女学校が淵源である。1965年、玉手山女子短期大学(保育科)を開設。1997年、関西福祉科学大学(社会福祉学部)を開設。
 2001年、大学院(修士課程)を設置。2003年、健康福祉学部を設置、大学院(博士後期課程)を設置。2010年、特別支援教育専攻科を設置。2011年、保健医療学部(リハビリテーション学科 理学療法学専攻・作業療法学専攻を設置。3学部5学科2専攻になった。
 2015年、保健医療学部リハビリテーション学科に言語聴覚学専攻を設置。2016年、心理科学部心理科学科、教育学部教育学科を開設し、5学部6学科となった。「組織編成を見直し、対人援助に特化した5つの学部の構成にしました」
 学長の八田が、建学の精神を語る。「建学の精神『感恩』に基づき、福祉科学の知識・技術を体得し、人の幸せを願う豊かなこころで、臨床福祉の精神に支えられた福祉科学を実践する人の育成をめざしています。『笑顔であいさつ 優しさを大切にし 夢に近づき成長する大学』を徹底させています」
 現在、5学部に2515人の学生が学ぶ。男女比は、ほぼ同数。出身地は大阪を中心とした関西圏が7割で、中国、四国、沖縄からの学生もいる。「常々、キャリアを見通し、資格を取らせ、出身地に返したいと言ってます」
 5学部の学び。社会福祉学部は2学科。社会福祉学科は、臨床福祉を基礎に演習や実習を通して社会福祉の専門的知識や技術を身につけ、実践力を養う。「多くの学生が社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士を目指して勉学に励んでいます」
 心理科学部心理科学科では、複雑かつ多様化する現代社会に対応できる人材を育成するために、新しい心理学の構築をめざしている。国家資格「公認心理師」に対応したカリキュラムで、公認心理師の養成を行っている。
 「こころの健康を維持・増進する最新の心理学を幅広く学習できます。学部卒で『心のエキスパート』として職場で活躍する道をひらきます。心理学部では希少な、学部卒の国家資格である精神保健福祉士の養成にも力を入れています」
 教育学部は2専攻。発達支援教育専攻は、小学校教諭としての専門的知識や技術を基盤とした実践的指導力と特別支援教育に対する専門的知識を養う。「今日の教育現場で即戦力となる小学校教諭を育成します」
 子ども教育専攻は、幼稚園教諭や保育士に求められている教育・保育に関する専門的知識や技術、子どもや保護者が生み出す諸課題に対応し解決できる能力を育成する。「これからの幼児教育・保育現場に必要とされる人材を育てています」
 健康福祉学部は2学科。健康科学科は、健康・安全・環境に関わる「トータルヘルス」の専門知識・技術を習得する。「所定の単位を取得することで、養護教諭第1種、第1種衛生管理者の資格取得が可能。健康のプロフェッショナルを育成します」
 福祉栄養学科は、管理栄養士を育成する。「栄養学と食品学の知識を学び、さらに栄養指導など実践技術を重点的に指導しています。あらゆるライフステージ、あらゆる人に対応できる『栄養と食』の専門家を育てています」
 保健医療学部は、リハビリテーション1学科、理学療法学・作業療法学・言語聴覚学の3専攻。様々な困難を抱えた人々を助ける理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)などをめざす。
 「障がいを持たれた方の治療に当たる医療専門職に求められている医療人としての豊かな教養と人に愛される人間性と、リハビリテーションの発展と専門分化に追随し応用できる福祉科学の知識などを持つ人材を育成しています」

学力伸ばすゼミの授業

 特長である少人数教育は、学習効果の高いゼミ形式の授業が支える。学生と学生、学生と教員がコミュニケーションを取りながら学ぶことによって、学力を伸ばせる少人数制のゼミ形式の授業が数多くある。
 「1年次に行う基礎ゼミは、全学部・全学科横断で実施。自主的に学ぶための心構えをはじめ、レポート、プレゼンテーションの方法など、大学での専門教育に必要な基礎をしっかりと身に付けます」  「2年次からのキャリア科目は、それぞれの学科の特性を考え、将来就く職業の実際や課題などについて現場の経験者を交えて教えます。就職して3年で辞めることがないようストレスマネジメントも学びます」
 研究にも力を入れる。「教育、研究、学務、地域貢献の4つで教員を評価しています。研究面では、科研費の取得は32件で全国の大学で131位。科研費を取得した教員が助言する制度を設けたところ、申請や採用も増え、大阪の私大では10位以内にランクインしました」
 就職率は100%。「学生の"想い"を実現する学びの環境を整え、全力でサポートします。資格取得に向けて多くのプログラムを設置し、早い段階からの取り組みを促すとともに、キャリアカウンセラーによるきめ細かいサポートを行っています」
管理栄養士合格率100%
 資格取得を重視する学び。▽社会福祉士合格者数17年連続大阪府1位(2018年実績[既卒者含])▽2017年度養護教諭採用試験のべ34人合格[既卒者含]▽第32回管理栄養士国家試験合格率100%などの実績を誇る。
 「本学で取得できる資格試験は、基本的には指定された点数を上回れば資格が取れます。基準となる成績さえ取れればいいので、勉強すれば必ず到達できます。先生方には、きめ細かく学生に対応して、学習の習慣をつけるよう話しています」
 学生への支援では、学生が学生をサポートする「ピアサポート制」を始めた。「教員だけでなく学生がほかの学生の学業を支援する制度で、時給1500円を支給します。20人が仲間の学業を見てくれています」
 地域貢献では、附属診療所が地域の住民の診療や高齢者の認知予防の検診など行っている。「また、企業の人事担当者を集め、EAP(復職者支援)のフォーラムを開催するなどの活動をしています」

『羊でなく狼になれ』

 大学のこれから。「教育の質を高める点では、伸びしろを伸ばす教育を施し、社会の役に立つ人材を送り出したい。学生には『羊でなく狼になれ』と言っています。地域社会という群れのトップをめざせということです。医療などの対人援助の仕事に就くので、コミュニケーション力が要諦。他職種の人たちとの連携を深めていきたい」
 こう結んだ。「あまり大きな大学にはしないほうがいいと思っています。3000名弱の学生数、150名位の先生という規模が、一人一人の学生にきめ細かい対応ができる適正規模だと考えています」。学力を伸ばす少人数制のゼミにこだわりをみせた。