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大学は往く 新しい学園像を求めて

<171>東海学園大学
豊かな人間性と知識を育む
高い就職率を誇る 徹底した少人数教育実践

 「共に生き、共に生かされる」という「共生(ともいき)」が教育の理念である。東海学園大学(松原武久学長、名古屋市)の前身である浄土宗の僧侶養成校は128年の歴史を誇る。東海中学・高等学校を含む東海学園は、卒業生が10万人を超え、政治・経済・文化・医学など様々な分野で活躍している。東海学園大学は、徹底した少人数教育を実践、1年次から少人数クラスによる専門的な研究を行うゼミを開講。早い段階から社会の変化と向き合いながら学び、基礎的な教養とともに、将来に直結する知識やスキルを修得する。①将来の目標を実現するための豊かな人間性と知識を修得する教育②2キャンパスでの高い専門性を備えた人材育成システム③徹底したキャリア支援による、毎年90%以上の高い就職率―などが特長。「浄土宗の仏教精神に基づく『勤倹誠実』の信念と『共生』の理念とによる人間力の向上を核とし、社会の発展と文化の向上に寄与できる、総合的教養を身に付けた幅広い職業人を育てています」と語る学長に学園の歩み、改革、これからを聞いた。 (文中敬称略)

教育理念「共に生き、共に生かされる」

学長の松原は、東海中学・高等学校の出身。愛知学芸大学卒業後に中学校教師として教育の道を歩む。1997年から名古屋市長を3期12年務めた。市長在任中は、ごみ減量や愛知万博に尽力。2015年に東海学園大学学長に就任した。 同法人の東海中学・高等学校は、東海地区の名門校、勉学と同時に人間育成を重視した中高六年間の一貫教育を展開。東大など有名大学への高い進学実績を誇り、梅原猛、黒川紀章ら各界に多くの著名人を輩出。松原が、教育の理念「共生」を説明した。

「本学園の学祖である椎尾辨匡先生が大正期に興された『共生運動』が原点です。その根本精神は、『こころ生き、身生き、事生き、物も生き、人みな生きる、共生きの家』という先生の歌に表されています。全学部・学科において、一人ひとりの多様な生き方・考え方を理解し、受け止めるための学びを実践しています。理論だけでなく、共生人間論実習といった実習体験などを通して共生の真意を体得します」

淵源は浄土宗僧侶養成

東海学園大学の淵源は、1888年に開校した浄土宗学愛知支校である。浄土宗の僧侶養成機関として、東京に本校が置かれ、全国7か所に支校が設置された。その支校のひとつだった。 1909年、東海中学校に改称。戦後の1947年、新制東海中学校が開設。48年、新制東海高等学校を設置。62年、東海女子高等学校を設置。64年、東海学園女子短期大学が開学。 95年、東海学園大学が経営学部一学部で開学。2000年、人文学部開設。東海女子高等学校の共学化で東海学園高等学校に校名変更。04年、人間健康学部を開設。05年、東海学園大学短期大学部を廃止。 08年、人文学部に発達教育学科を開設。11年、健康栄養学部(管理栄養学科)を開設。12年、教育学部(教育学科)とスポーツ健康科学部(スポーツ健康科学科)の開設。14年、人文学部に心理学科を開設。 現在、5学部に4142人の学生が2つのキャンパスで学ぶ。男女比は男子57%、女子43%。出身地は、愛知県が65%など三重、岐阜、静岡県など東海地区が88%を占める。 名古屋キャンパスは、人文、教育、健康栄養の3学部。名古屋駅から電車で約30分の閑静な住宅地にある。都市と自然の調和が美しいキャンパス。 人文学部人文学科は、4コースあるが、コース以外の科目も自由に学べる。芥川賞作家の諏訪哲史、漫画家のほしの竜一らが教壇に立つ。「専門性に特化した教授陣のもとで学びながら、明確なキャリアを形成します」 同学部心理学科は、心理学カリキュラムでは基礎的な研究法・方法論が重視され、分析力と解決能力を身につける。「多様な体験型学習をベースに少人数で学ぶことで、一人ひとりの理解度を深めます」 教育学部教育学科は、教員採用試験の対策・指導をきめ細やかに行い、合格者は79人(昨年度実績)と年々、増えている。「子どもが好きで、洞察力を持った、生きることの素晴らしさや楽しさを伝えられる教育者を育てています」 健康栄養学部管理栄養学科。管理栄養士国家試験合格率93.7%(2016年3月卒業生)。「1年次から国家試験合格を目標に掲げながらアクティブラーニングを実践、得意分野を持つ多彩な分野で活躍できる人材を育成しています」 三好キャンパスは、経営とスポーツ健康科学の2学部。17万平方メートルの広大な敷地に、体育館やグラウンド、プール、野球場などのスポーツ施設、屋外ステージや駐車場などの施設が整っている。 経営学部経営学科は、2年次からは将来の目標に合わせた「専門能力開発プログラム」を実施する。「教員によるリードのもと、即戦力として活躍するための社会性と人間力を身につけ卒業後の夢を叶えます」 スポーツ健康科学部スポーツ健康科学科は、保健体育教諭やトレーナーなど、めざす将来に合わせたサポート体制も充実。「玉川大学の通信制の授業を受けて、小学校教諭をめざす学生も増えています」 就職力。愛知県は、都道府県別の製造品出荷額で見ると、2位以下を大きく引き離して断トツの1位。自動車産業はじめその関連産業、電子・電機産業で日本を代表する有名メーカーが、その製造拠点をおいているからだ。卒業生が活躍する企業を中心とする「学内企業展」は、毎年盛況だ。 同大の強みは、10万人を超える同窓生を誇る東海学園の一員であること。「学園の伝統とネットワークが就職活動を全面支援。在学中はもちろん、就職活動時、卒業後も学園力が大きなサポートとなり、生涯にわたって見守っています」 地域貢献活動。地域連携支援プログラムを展開する。運動や食事による健康づくり支援や子ども学習サポート、在宅高齢者の食支援、愛知水郷地域の伝統的家庭料理継承支援など多彩な地域貢献活動は地域住民にも喜ばれている。

学生の消防団が訓練

学生のボランティア活動が活発だ。防犯ボランティア団体「TOPS」は、地域の防犯パトロールを実施、愛知県警本部から感謝状が贈られた。三好キャンパスには、学生による消防団機能別分団がある。「ドクターヘリも出動する集団救急事故対応訓練を行いました」

賢く筋肉質の大学へ

大学のこれから。「これからは、コンパクトで中身の充実した大学にならなければ生き残れない。賢く筋肉質の大学をめざす。少人数教育をベースに、教育の質の向上とともにキャリア教育にも力を注ぎ、社会に有為な学生を送り出していかなければならない。そうすれば良い学生が入ってくる。この単純な好循環を全学の教職員で生み出さねばならない。現に、教育学部では教員採用試験合格者が増えたことで志願者も増え、良い学生が集まった」 こう続けた。「学生の学びを支えるのは、本学の理念『共生』です。その根底には、人は人と人との助け合いの中で生きているという考え方があります。いま世の中は揺れていますが、今やるべきことに精一杯の力で取り組むこと、自分を支えてくれる人たちに誠実に対することで、学生は強くなり、未来の自分につながっていくのです」

学長室に阿弥陀如来像

学長室には、阿弥陀如来像がある。「大学に来る、廊下で行き会う学生は孫みたいに可愛い。彼等、彼女たちの学修支援が私の最後のご奉公」と話す松原は、朝夕、阿弥陀さんに線香をあげてお祈りする。「生かされて生きる実感が湧く」という。不思議である。