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特集・連載

大学は往く 新しい学園像を求めて

<108>筑波学院大学
 失敗恐れず、何事にも挑戦
 地域貢献にも全力 グローバル化に傾注

 知識・徳性・技術を兼ね備えた人材を育成する。筑波学院大学(大島愼子学長、茨城県つくば市)は、女子短期大学として開学したが、現在は男女共学になり、経営情報学部で基本的な教養と、情報スキル・デザインやマネジメントなどを、学生の希望により幅広く学ぶ。少人数制を活かし、保護者面談、保護者会、担任制度、学長との対話などで、学生、保護者、教職員のコミュニケーションを重視する。「つくば市がキャンパス」というユニークなプログラムがある。つくば市および茨城県内の企業、自治体、NPO法人で活動することが必修(8単位)となる。外国企業で長年勤務した学長は、その経験をもとにグローバル化に腐心する。「グローバル社会で価値観が多様化している時代には、柔軟な考え方とバランス感覚が必要です。多少の失敗は恐れず、何にでもチャレンジしてほしい」と語る学長に学園の歩み、改革、これからを聞いた。
(文中敬称略)

ユニークなプログラム つくば市がキャンパス

 つくばエクスプレスで秋葉原から45分と、東京との距離が短縮した国際的な研究学園都市・つくば市にキャンパスがある。つくば駅から徒歩7分という便利な地で、緑の木々に囲まれた恵まれた教育環境にある。
 学校法人東京家政学院(東京都千代田区)が、1990年、東京家政学院筑波短期大学を開学。96年、東京家政学院筑波女子大学に、2005年、共学化して筑波学院大学に改組した。
 10年、情報コミュニケーション学部を経営情報学部に改め、国際別科を開設。現在、508名の学生が学ぶ。出身は茨城県内が8割、男女比は、男子7割で、女子3割。
 学長の大島が大学を語る。「前身の女子短大は、筑波研究学園都市に女性人材育成を目的に、茨城県とつくば市の協力のもとに、公私協力型の教育機関として開学しました。東京家政学院の建学の教育理念である『KVA精神』を継承しています」
 KVA精神とは、Knowledge(知識の啓発)、Virtue(徳性の涵養)、Art(技術の錬磨)。「このKVA精神を現代社会にマッチさせ、知識と知性を磨き、高度情報化社会で活躍できる技術をもち、21世紀のグローバル社会で、自立して社会に貢献できる人材の育成を目指しています」
 経営情報学部の学び。「グローバル化が進む高度情報化社会の発展に貢献できるように、コンピュータ技術を介して情報を駆使し、卒業後、即戦力としてビジネス界で活躍できるよう、その基礎力を身につけます」
 同学部は3コースある。「150の専門科目を横断的に履修することができます。多様で学際的な学問を経験し、4年次には専門性を高めるためにビジネスマネジメント、情報システム、メディアデザインの3コースで卒業研究を行います」
 ビジネスマネジメントコースは、国内外の企業や自治体の経営のケーススタディ学習から最先端のビジネス、経営の成功体験事例などリアルな経営学を学ぶ。
 メディアデザインコースは、広告・印刷・編集分野の実践的なスキルを身につけるため、デザイン業務に必要な技術、基礎知識、理論などをしっかりと学ぶ。
 情報システムコースは、消費者のニーズを調査・分析する手法を身に付けるため、アプリ制作に役立つプログラミングなどやWeb制作を総合的に学ぶ。
 来年度、ビジネスコミュニケーションコースを新設する。「ビジネスコミュニケーションは、米国の大学では、経営学、社会学にありますが、異文化、広報、宣伝、地域理解などを包括した分野で、本学では、国際、多文化、地域、セラピー、ツーリズム等の分野を包括しています」
 そして、国際コミュニケーション力を培う。「時差のないアジア地域、オーストラリアと遠隔授業を開始します。外国人と同じ空間でインターネット利用の授業を行い、dual degreeも視野に入れていきたい」
 学長の大島は、早大文学部卒、同大商研国際経営学科修了。ルフトハンザドイツ航空広報室長などを歴任、筑波学院大学経営情報学部教授・経営情報学科主任を経て一一年から学長になった。しきりに日本のグローバル化を力説する。
 「学生には多様な価値観と選択肢を示すことが重要だと考えています。グローバル化とは、ビジネス社会では世界統一規格をもつことですが、一般社会では異文化や他の価値観を受け入れる寛容さと好奇心をもつことだと思います」
 「グローバルというと、英語教育のみが脚光を浴びますが、言語はあくまで手段。中学程度の英語力は、日本全体で生活手段として必要な時代になるので、本学では、その現実を学生が自覚することを啓発しています」
 昨年から英語スピーチコンテスト(KVA CUP)を始めた。小学生、帰国子女、中学、高校、大学生・社会人の部からなる。一般的なスピーチコンテストと違い、帰国子女や外国人も参加できる。
 「実社会、ビジネス社会では、国籍に関係なく、自分の考えを他言語で明確に説明することが求められます。自分の考えを整理して発言する環境に慣れることが教育の一部だと考え、そのようにしました」
 就職について。キャリア支援教育プログラムで資格取得やインターンシップに力を入れる。「大部分が茨城県内企業を目指しますが、リーマンショック以来、県内の就職戦線は厳しく、県外の企業にも積極的に出ていくよう啓発しています」

ロボット特区を活用

 社会貢献活動について。つくば市は国際特区およびロボット特区である。「その関係で、セグウエイの実証実験や、癒しのロボット(コミュニケーションロボット)の児童や介護施設への活用を研究しています」
 市民に対してコミュニティカレッジを開講、これには学生も受講できる。「メディアデザインコースの学生は、つくば市の駐車場のデザイン、フラワーアート、昨年から映像コンペテイションを主催しています」

好評の「100円朝食」

 学生食堂は、地産地消をモットーに、「100円朝食」を実施している。「一人暮らしの学生らの生活習慣をケアする必要があります。今年4月から始めましたが学生には好評のようです。朝食を取るだけでなく、コミュニケ―ションの場にもなっています」
 学長の大島は、社会人として大学院修士課程、博士課程に学んだ経験がある。「生涯学び続ける重要さと、大学が社会人のニーズに応える必要性を理解しているつもりです」と、こう述べる。
 「開学した頃の女子短大の卒業生が、40歳を超えました。彼女たちに生涯学習として大学の専門教育の門戸を開きたい。また、筑波研究学園都市は向学心が高い中高年層が多いので、学部、コミュニティカレッジ、国際別科を横断的に学べる体制を敷きたい」
 大学のこれから。「つくば市で唯一の私大であり、地域ニーズに応える大学としての存在感を確立していきたい。地域企業から客観的なアドバイスを受け、地域企業からの寄付講座も増やしていきたい。小・中一環教育を推進するなど教育に力を入れているつくば市との連携も強めたい」。地域のコミュニティセンターを目指す。
 少人数制の良さ活かす
 続けた。「少人数制のよさを活かし、カリキュラムも柔軟に対応して実務教育大学として確立したい。そのために、専門教育を深めるとともに、教養教育に力を注ぎたい。歴史観、社会観、文化への理解は当然で、現代においては異文化理解や外国語教育も必須です」
 こう結んだ。「避けては通れない教育のグローバル化に傾注するとともに、地域に育てられた大学として地域に恩返し、していきたい」。グローバル化と地域貢献という二つの言葉が大島の頭からは離れない。