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特集・連載

大学は往く 新しい学園像を求めて

<81>学生の心にスイッチを 
 自分の言葉で表現できる学生 国際感覚と社会力磨く
 鹿児島国際大学

 「国際的感覚を身に付け、地域社会に貢献する人材を育成する」が建学の理念。鹿児島国際大学(津曲貞利・理事長学長、鹿児島市坂之上)は、九州の私学としては初めて設立された経済商業の高等教育機関、鹿児島高等商業学校が淵源である。現在、経済学部、福祉社会学部、国際文化学部の三学部を有する人文系の総合大学に発展した。就業力向上を目指して「自分の言葉で表現できる」学生を育てている。社長のカバン持ち体験や海外でのインターンシップといった新軌軸を打ち出し、「就職に強い大学」を謳っている。桜島を一望できる、緑あふれるキャンパスライフも自慢だ。「学生は、どこかでスイッチを入れることで飛躍的にステップできるんです。成長させるため学生の心にスイッチングのきっかけを与え続けたい」という五六歳の若い理事長学長に、これまでの学園の歩み、改革、これからを聞いた。
(文中敬称略)

社長のカバン持ち体験海外インターンシップ 就職に強い大学

 噴煙を噴き上げる雄大な桜島まで直線で15キロ。7号館屋上に設置されたカメラから桜島の映像がリアルに同大HPで見ることが出来る。自然溢れる広々としたキャンパスは都心の大学にはない宝石箱のよう。
 鹿児島国際大学は、1932年に設置された鹿児島高等商業学校(1950年から鹿児島商科短期大学)が前身。1960年に鹿児島経済大学として開学した。82年に社会学部(産業社会学科・社会福祉学科)を開設した。
 2000年、大学名を鹿児島国際大学に改称。国際文化学部(言語コミュニケーション学科・人間文化学科)を開設。この年から大学改革が急ピッチで進められた。
 01年、社会学部を福祉社会学部に、産業社会学科を現代社会学科に改称。福祉社会学部に児童学科を増設。06年、経済学部に地域創生学科を増設。10年、短期大学部音楽科を改組し、国際文化学部に音楽学科を増設した。
 「経済専門の私学としてやってきましたが、地元のニーズも経済商業だけではなく、社会全体を支える人材に広がったことで新学部・学科を開設しました。福祉社会学部への改称は、福祉部門を設置することで高齢化社会に対応する人材育成といった地域社会への貢献もあります」
 来年3月の短大廃止を見据えて、児童学科、音楽学科を設けた。「児童学科は専門性を高めた幼稚園保育園、小学校の教員養成が主眼です。音楽学科は短大時代から、音楽の教員など幅広く人材を輩出してきました。コンクールでも実績をあげ、学園に潤いや活力を与えてくれます」
 11年、経済学部経営学科と同地域創生学科を経営学科に、国際文化学部言語コミュニケーション学科と人間文化学科を国際文化学科に改組。現在、3学部に3200人の学生が学ぶ。
 大学を語る。「本学のモットーはスチューデントファースト。学生が求める夢の実現のために、教職員がひとつになって学生をサポートしています。学生の持っている潜在能力にスイッチを入れ、よりよい方向に導くことも含まれています」
 各学部の学び。経済学部は、経済と経営の2学科。「各学年にゼミ形式の授業を配置、経済、経営に関する専門的な講義、簿記・会計、情報に関する実践的な授業のほか、地域おこしやインターンシップを含むフィールドワークにも力を入れて国際社会および地域社会で活躍できる人材を養成します」
 福祉社会学部は、社会福祉と児童の2学科。「現代社会が抱える諸問題と正面から向き合い、社会とどのように関わっていくかを考えていきます。豊かな専門科目があり、それぞれの目的に合った学習ができます。そこで得た知識や経験を通して、次の時代を担って存分に活躍する人材を育てます」
 国際文化学部は2学科。「国際文化学科は、卒論では自分自身の課題を設定します。探求、思考を通して、問題解決の実践力と応用力を養い、国内外で活躍する人材育成をめざしています。音楽学科は、中央と遜色のない高水準の音楽教育を行い、音楽の本質を学び技術錬磨できるよう指導しています」
 大学の国際化。世界8カ国の大学と協定を結び、交換留学制度などで交流を図る。100人を超える留学生を受け入れている。海外語学研修は、英語、ドイツ語、中国語、スペイン語、フランス語、韓国語などの語学がある。

活発な留学、国際交流

 「交換留学で派遣された学生は、大学院進学や、海外での日本語教師など国際分野で活躍する人たちも少なくありません。海外からの留学生の中には、日本の金融機関に就職して母国との架け橋になる学生もいます」
 強い就職力。産業界のニーズに対応した「自律的職業人育成プロジェクト」がある。「自分の言葉で表現できる学生の育成がテーマです。インターンシップの高度化を目指し、国内・海外インターンシップの発展・充実に取り組んでいます」
 「本学の就職力の源泉のひとつは、県内外に散らばる4万人近い卒業生のネットワークに支えられた多岐にわたる就職先です。学生にとって最も重要である進路設計については、これら先輩たちの指導も大いに役立っています」
 ユニークなのが、「社長のカバン持ち体験」だ。「3日間、鹿児島の企業の社長にマンツーマンで就きます。体験後は、社長や学生を前にプレゼンします。経営トップに密着することで、経営者の視点を若い時に身近に体験することに意義があります」
 就業力を、こうまとめた。「就業力を高めるには、資格取得も大事ですが、学生が心の中で、これからの人生を考え、就職=仕事に興味を持つことにあると思います。どこかで、学生の心にスイッチを入れてあげる必要があるのです」

地域貢献に学生奮闘

 地域貢献では、学生の頑張りが目立つ。鹿児島市電の「白くま黒豚電車」は、学生が市交通局と交渉して実現。「平川動物公園のシロクマと鹿児島名物、黒豚を市電の車体に描いたもので、子どもたちに人気です」
 大正製薬の「リポビタンD」のウェブCMを制作した。「地元テレビ局や広告会社の『リポビタンDを若者にさらに取り込みたい』という課題解決に学生がアイデアを出して実現しました。こうしたPBL体験は就業力育成にもつながります」
 音楽学科の学生は、2月、バッハの最高傑作「マタイ受難曲」の全曲演奏に挑んだ。「本学の教授の監督のもと、学生たちは一年間の練習を重ね、この難曲に取り組みました。鹿児島では初の公演で、学生のソリストと合唱団の歌ったステージは著名な音楽家からも称賛されました」
 津曲は地元の日本ガス社長を08年から務める。「厳しさを増す大学経営は、企業経営者としての経験も生きると思います」。就業力強化の施策や、学生の心に向けての“スイッチ論”などに、若き理事長学長のガバナンスセンスをみる。
 大学のこれから。「大学進学率をみても、まだニーズがあるとはいえ、少子化時代を迎え、魅力ある大学づくりが重要です。ひとつは、学生、そして地域にとっても不可欠なもの、地域のニーズだと思います。それに向けての人材育成にさらに力を入れたい」
 こう続けた。「地域を支えるトップランナーを育てたい。私は、『三つの日本一』、『10の九州一』、『100の鹿児島一』を視野に入れた大学づくりを言っています。鹿児島だけでなく、九州、日本を目指すという心意気を持とう。それが、鹿児島への愛着に繋がり、鹿児島を支える力になると思うんです」

自律的社会人を輩出

 津曲の心は、最後に「東西文化の融合と地域社会への貢献」という建学の精神に戻る。「建学の精神は80年経っても変わりません。それは今日、社会、文化を世界的な視野で考えると同時に、地域に活力をもたらし主体的に考える力を持った自律的職業人を輩出することだと思います」