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大学は往く 新しい学園像を求めて

<47>広島経済大学
  興動人育成で主体性培う
  個別指導で就職力誇る 人間力あふれた人材を

 「ゼロから立ち上げる」興動人(こうどうじん)を育てている。興動人とは、自ら行動を起こす主体性、あくなきチャレンジ精神、高いコミュニケーション能力を備えた人間力あふれる人材だ。広島経済大学(石田恒夫理事長、前川功一学長、広島市安佐南区)は、中四国地方唯一の経済専門大学である。大学の設立母体の学校法人石田学園は、1907年に校祖、石田米助翁が創立。「和を以て貴しと為す」の建学の精神は、連綿と受け継がれ、時代を切り拓く人材を社会に送り出してきた。学生の自主的な取り組みで国際貢献や街おこしなどを行う「興動館プロジェクト」や、一年次から卒業後を見すえ、個別指導と多彩な支援システムでサポートする「就職力」を誇る。これまでの学園の歩み、「興動館プロジェクト」、大学のこれからなどを石田理事長に聞いた。(文中敬称略)

中四国唯一の経済専門大学
すべては学生のために

 広島経済大学のキャンパスは、武田山の緑に包まれている。緑のなかに、最先端のIT、メディア環境の校舎、全天候トラック、人工芝のグラウンドが点在する。恵まれた環境の中で、学生たちは学生生活を謳歌しているようだ。
 石田学園は、現在の広島山陽学園山陽高等学校の前身である旧制山陽中学校・商業学校が淵源である。同校を母体に広島に高等商業学校開設の準備を進めていたが、広島への原爆投下により断念した。
 原爆投下で学園の校舎は全焼し、教職員、生徒の犠牲及び不明者が多数出た。戦後の学制改革で、山陽中学校、山陽商業学校を新制中学、新制高校に切り替えたが、1972年、石田学園は両校を独立分離した。
 広島経済大学は、1967年、経済学部経済学科の1学部1学科で開学。大学創設者の石田成夫が初代学長に就任。成夫は、大学の理想を、「大学の道は明徳を明らかにするにあり」という中国の古典「大学」に出てくる言葉に求めた。
 理事長の石田恒夫が語る。「明徳とは、天から受けた霊妙な徳性、すなわち人間が本来持っている曇りのない本性を意味します。学生一人ひとりが、学問研究を通して、本来持っている曇りのない本性を磨き、前途有為な人間として自己を確立することが本学の理念です」
 現在、経済学部に、経済学科、経営学科、国際地域経済学科(2011年度募集停止)、ビジネス情報学科、メディアビジネス学科、スポーツ経営学科の六学科があり、3900人の学生が学ぶ。
 メディアビジネス学科を2004年に、スポーツ経営学科を11年に新設した。「時代の流れが急速に進み、社会が多様化する中、学生には、いろんな選択肢があったほうがいい、という判断で設置しました」
 スポーツ経営学科の教授には、元電通エグゼクティブ・プロデューサーで、サッカーの日韓ワールドカップ開催に寄与した濱口博行、Jリーグの浦和レッズ元代表の藤口光紀らスポーツの第一線で活躍する人材を招請。
 「広島はプロ野球の球団、Jリーグのチームを抱え、陸上や駅伝も盛んな土地柄です。スポーツビジネスへの関心も高く、志願者も期待以上にあり、入試成績がいい学生が多く集まりました。今後が楽しみです」

実業界出身の教授多数

 濱口や藤口のように広告代理店やメーカーなど実業界出身の教授が多い。「理論と現場の橋渡し役になってもらおうと実業界から教員を招請しました。現在は教員全体の2割ですが3割までにしたい」
 ところで、理事長の恒夫は、成夫の子息である。成夫は、「明徳」を理想に有用な人材を育成した。恒夫は、「Be Student-oriented(すべては学生のために)」を打ち出した。父の「明徳」を引き継ぎながら、学生のための大学を指向した。
 「Be Student-orientedは、本学教職員の行動指針です。教職員は常に、『本当に学生のためになるのか』、『本当に学生一人ひとりの輝かしい将来を応援するものになるのかどうか』と、問いかけながら行動しています」
 こうした教職員の力が、「ゼロから立ち上げる」興動人の育成に結集した。恒夫とともに独自の「興動館教育プログラム」をつくりあげた。「さまざまな経験と実践を重ねる中で実社会の即戦力となりうる人材の育成が目標です」
 興動人の育成は、三つの教育プログラムからなる。その中の「人間力開発プログラム(興動館教育プログラム)」は、実践を通じて知識やスキルを身につける「興動館科目」と、そこで培った能力を行動することによって自らの成長につなげる「興動館プロジェクト」で構成されている。恒夫が興動館館長を務める。
 「興動館科目」は、少人数制の自由選択科目。「スポーツによる広島活性化講座」や「NPO、NGOの立ち上げと活動」などがある。「学生の企画力や行動力を育てることを主眼にした科目で編成しています」。
 「興動館プロジェクト」は、学生自身が取り組みたい課題を設定して、企画を立てて大学に活動を申請する。「大学はプロジェクトの規模や社会貢献度、学内外への影響度などの観点から審査。最も評価の高い『公認プロジェクトA』に認定されると、最高1000万円までの支援金を支給します」
 「インドネシア国際貢献プロジェクト」は、火山の噴火で壊滅的な被害を受けた地域で、学生が地元住民に経済的な自立ができるようブレスレットづくりなどを指導。現地企業と連携して製品を市場に流通させる仕組みもつくった。
 「科目とプロジェクト、この二つが相互に作用し合い、実践的な学びを実現しています。学生達は失敗したり、力不足を感じたりしながら『人間力』を培っています。ここでの体験が、地域の経済、文化、スポーツの発展に寄与すると信じています」
 「強い就職力」。中四国の大学でトップクラスの就職実績を誇る。「キャリアセンターの職員は、履歴書の作成や面接の受け方など、さまざまな就職支援、進路・就職相談まで、きめ細かく支援しています」

保護者に就職説明会

 学生の就職活動がスタートする6月、中四国、九州の各会場で3年次生の保護者を対象に就職説明会を開催。「また、実社会で活躍中の卒業生の生の声を聞き、職業選択の参考とする『卒業生による就活セミナー』を実施しています。卒業生たちの貴重な経験にふれることで、学生は、先輩から多くを学び、職業観を深めているようです」
 体育系サークルが活躍。硬式野球部、サッカー部、陸上競技部は全国レベルの実力。「硬式野球部からはプロ野球選手も出ています。文化系サークルも活発で、ダンス部は、各種のステージやパレードで優秀な成績を収めています」
 地域貢献にも積極的だ。著名人・企業人を講師に招き、最先端のテーマでの特別講義を行っている。「特別講座には、地元の住民の方も聴講しています。図書館は地元の人も利用できますし、地域とともにある大学をめざしています」

宮島にセミナーハウス

 世界文化遺産の厳島神社のある宮島に、昨年7月、セミナーハウス「成風館」を開設。「ゼミやサークルの合宿や教職員の研修などに活用する他、地元の人たちのイベントに貸し出したり、学びと人間関係を深める場となっています」
 大学のこれからを聞いた。「本学の使命は、研究や地域貢献にも増して教育だと思う。Be Student-orientedの精神は、これからも変えることなく、『学生本位の大学』であり続けたい」
 こう続けた。「父の唱えた『明徳』には、人間誰しも素晴らしいものを持っている、という意も含まれています。この明徳を大学の中で磨いていくよう、学生を育てていきたい」。成夫の「明徳」と恒夫の「Be Student-oriented」は重なり合った。
 大学のトップは父から子へと変わった。しかし、「すべては学生のために」という広島経済大学の精神、「既成概念にとらわれることなく、ゼロから物事を考え、失敗を恐れず、他者と協働して『何か』を成し遂げることのできる」興動人を育てるという大学の使命は凛と貫かれている。