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特集・連載

大学は往く 新しい学園像を求めて

<22>北海学園大学
  地域性と国際性を志向
  初年次教育などの改革 公務員採用に高い実績

 建学の精神は、「開拓者精神」である。北海学園大学(木村和範学長、札幌市豊平区)は、道内では最古で最大規模の私立大学で、5学部・11学科を持つ総合大学。附属の開発研究所は、建学の精神に基づき1957年に設立された。北海道における最初のシンクタンクで、現在も喫緊の地域的課題に対応している。教育・研究では地域性と国際性を志向しているのが特長。学生は、道内出身者が9割近くを占め、就職に道内勤務地を希望する学生が多い。公務員を志望する学生が多く、国家公務員種の合格ランキングでは全国私大のトップクラス。文系4学部は、道内では現在唯一である2部(夜間部)を設置。全国的に夜間学部が減少する中、様々な学びのあり方に応え続けている。開拓者精神はどう継承されているのか、教育研究の改革、北海学園大の現在(いま)とこれから、などを学長に聞いた。 (文中敬称略)

道内最古最大規模 「開拓者精神」で歩む

 〈北の大地に力強く生き続けてきた北海学園120年の歴史の背景に、1952年、北海学園大学が誕生しました。まさに北の大地は母の大地となり、“徒に官に依存せず自らの努力をもつて立つ”という自主独立の「開拓者精神」を使命として、本学は創設されました〉。建学の精神は、同大HP冒頭に刻まれている。
 交通アクセスのよさに驚いた。札幌市営地下鉄東豊線の学園前駅の3番出口を抜けると、そのままキャンパスに。1994年に完成した地下鉄駅「学園前」のおかげで大学直結となった。キャンパスには、系列校の北海高校、北海学園札幌高校の校舎等が併設されている。
 北海学園大学は、1885年(明治18年)に設立された北海英語学校(現在の北海高等学校)が淵源。1950年、北海短期大学を設立、1952年に経済学部単一学部で北海学園大学が設立された。64年、法学部を設置。68年には、山鼻キャンパスの短大土木科を工学部に改組転換した。
 90年台から改革にギアが入った。93年に人文学部、03年に経営学部を設置(経済学部経営学科からの分離・独立)した。現在、豊平キャンパスと山鼻キャンパス(札幌市中央区)に、約9000人の学生が学ぶ。
 学長の木村が大学を語る。「建学の精神である『開拓者精神』は、新しい時代の変化にも“自由と不撓の精神”として息づいています。この建学の精神と時代の先端を行く知識や技術を身につけたグローバルな視点をもつ学生の育成に全力を傾けてきました。本学の学生は、自ら挑戦していくという気概があります」
開発研究所の貢献
 木村によれば、北海学園大は、日本の二つの大きな歴史的転換点で教育において社会貢献してきた。ひとつが、明治18年の北海英語学校の開学で、明治という新時代を切り開いた。もうひとつが、1957年に設立した開発研究所だ。
 「開発研究所は、1950年に制定された北海道開発法により、戦後復興の段階から本格的な北海道開発計画が展開されようとする時期に設立されました。時代的要請もありましたが、北海道開発に貢献してきたという自負はあります」
 半世紀を経過し、開発研究所は、現在、各学部の教員100人以上が研究員として在籍。『人口減少下における地域の発展可能性に関する実証的総合研究(平成18(2006)―平成20(2008)年度)』など研究成果は数多くある。
 同研究所は、毎年「開発特別講座」を開催してきたほか、道民や道内の研究者を対象として年間数回の講演会または研究会を行っている。「このように学問研究蓄積を地域に還元することも、地域貢献のもう一つのあり方だと思います」
 さて、夜間に開講される2部(4年制)だが、一部(昼間部)とほぼ同一のカリキュラムを整備している。2005年には道内2校目の法科大学院を設置したが、ここも夜間履修が可能となっている。
2部の社会的意義
 「全国的に見て、多くの大学が2部を廃止しています。しかし、本学は2部のもつ社会的意義は依然として存在すると考えています。高校卒業時には大学進学を断念せざるを得なかった人たちや、子育てが済み、自分で授業料を出して学ぶ人も多い」
 道内初の私立大学として開学、すでに7万名を超える卒業者を送り出している。「政財界をはじめ官庁への進出もめざましく、また民間企業では、800名にも及ぶ優良企業の経営者を生み出しています」
 家具のニトリの創業者社長である似鳥昭雄は経済学部OB。ニトリ寄附講座「チェーンストア論」は経営学部の正規科目としても開講、似鳥が自ら教壇に立ち講義を行っている。「このような市民公開講座にも力を入れています」

OBのネットワーク

 厳しさを増す就職環境のなか、北海学園大は安定した実績を維持している。「きめ細かい就職指導・支援と、全国に広がる卒業生のネットワークが、高い就職率の原動力になっています」と木村。具体的な就職支援を聞かせてください?
 「公務員就職希望者と民間企業就職希望者を分けて指導。下級年次から大学生活の行動や経験をチェックし、『何をしたいのか』、『何ができるのか』、『何をしなければならないのか』を考えさせ、学生の持つ潜在能力を顕在能力に置き換えられるように目標課題を設定し、自己分析させています」
 公務員試験に強い理由は?「2年生後期から公務員希望者を対象に公務員試験対策講座を開講。3年生からは公務員ガイダンスが年間四回、学生手作りの「公務員勉強会」が8回あります。延べ15回にも及ぶ学内公務員模擬試験を実施、公務員試験の1次合格者には徹底した面接指導を行っています」
就職意識向上めざす
 「民間企業組も頑張っています」と続けた。「低学年のうちから学生の就職意識を向上してもらうことを目的に、各種の就職支援講座を開講。個人面接の実施、履歴書・エントリーシートの記載や模擬面接などきめ細やかな指導や相談に応じています。何よりも学生本人が就職に対する意識を強くもっています」
 教育研究の改革について聞いた。木村は、二つあげた。基礎ゼミの導入など初年次教育の見直しと充実と学習支援のシステム構築。二つとも、前学長の朝倉利光のもとで、検討されて運用されてきた。「これらを発展継承したい」と語った。
 初年次教育の見直しと充実。「今年から1年生に対する教育のあり方をさらに改革し、幅広い教養がいっそう身につきやすい科目を新設しました。専門科目と教養科目とをバランスよく履修することによって、知識を知恵に替える、そのような資質に優れた、知性あふれる人材を育成していきたい」
 学習支援のシステム構築。「これによって、教育内容が充実しました。時代の変化、環境の変化に柔軟に対応できる知識の習得が可能なカリキュラム編成を心がけ、研究と教育のバランスをとって大学としての社会的使命を果していきたい」
 道内で最古、最大規模の私立大学の今後について聞いた。「志を立てて本学に入学した学生が、本学を選択したことに間違いはなかった、そういって卒業できる基盤は出来上がった」と、こう続けた。
 「学生は開拓者精神を忘れてはいけない。国際社会に対応した人間づくり、社会人にも門戸を開いてきたことは、本学の伝統であり誇りです。これからも北海道の伝統ある私立大学としての自覚と確信をもって、研究教育や地域貢献の実際と成果などを北海道のみならず全国に発信していきたい」
 木村の言葉には、建学の精神である開拓者魂と道内で最古、最大規模の私立大学としての自負と矜持があった。