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特集・連載

国際交流

-終-大学を取り巻く国際交流の潮流
JAFSA
効果的な広報活動を海外ネットワークの活用

NPO法人JAFSA(国際教育交流協議会)事務局長 高田幸詩朗

 JAFSAは大学の「国際部門」のネットワーク組織としては日本最大で、200以上の日本の大学と韓国三大学、約30の教育関連団体・約300名の個人により構成されている(会長=白井克彦早稲田大学総長)。活動内容を「国際」に特化することで1968年以来40年を越えて活動が継続されているのは、2010年の現在においても、大学で「国際」がインターナショナルからグローバルに言い方が変わろうとも、常に古くて新しい問題として認識されている証拠であろう。
 大学規模の大小や学部の種類により、海外大学との交流協定や、外国人留学生の受け入れや日本人留学生の海外派遣などのさまざまなテーマについて、一大学のみで解決できないこともままある。その場合に情報交換の主たる手段として、JAFSAのようなネットワークが役に立つ場合が多い。そうなると日本の中でネットワークが重要なのは言うまでもないが、まして海外とのネットワークを求めるのであれば、その機会を利用しない手はない。海外にはいくつかの大きなネットワークが存在するが、ここでは主な二つ(NAFSA・EAIE)を紹介しつつ活用方法を考える(JAFSAウェブも参照www.jafsa.org)。
 JAFSAはNAFSA等の大会にできるだけ多くの大学の参加を期待している。そのメリットは以下NAFSAの紹介の中で述べるが、海外の協定校を回る出張費や手数、期間などを考えると、NAFSAやEAIEの年次大会開催期間である一週間は密度が濃い。また参加している世界中の担当者と一同に会える機会は滅多にない。一方、大学の経営側の立場にたっても「人材育成の宝庫」とも言うべき機会なのである。

 一、NAFSA(Association of International Educators)

 NAFSA(ナフサ)は米国を拠点とし、国際教育交流を推進する目的で1948年に設立された非営利団体で、JAFSAは同種団体のパートナーとして、長年NAFSAと協力関係にある。 NAFSAは会員制度により運営され、世界150か国、3500以上の教育機関や団体、政府機関、民間企業などに所属する約1万人の教員や職員、専門家などにより構成されている。主な活動として、国際教育に携わる人の専門性の向上や能力開発、会員同士の情報交換やネットワーク、留学生交流の推進や政策への提言、海外留学アドバイザー向けの助成金の授与などを行っている。また、国際教育や留学に関連した五つのコミュニティがあり、それぞれの分野で知識の交換や研修などが行われている。
 NAFSAの大きな特徴は毎年一度、5月末から6月初旬に一週間開催される年次大会である。会議や研修、展示、ネットワーキングのためのさまざまなイベントが催され、世界各地から7~8000名に上る参加者が集まる。特に2008年米国ワシントンDCで開催された60周年記念大会の参加者は、世界100か国以上から8000人を超え、他に例を見ない大規模な国際教育交流大会となった。今年はミズーリ州カンザスシティで開催される。
 (一)NAFSA年次大会参加のメリット―ネットワーキングと人材育成
 大会自体の参加費はNAFSA非会員の場合、日本円にして7万円近くかかる。しかし、その費用に見合う数多くイベント、たとえば講演会やセッション、ネットワークのための会議、レセプションなどに参加する機会が提供されている。ワークショップのように、別途費用がかかるものもあるが、かなり幅広い情報収集が可能である。また、世界中の大学から担当者が集まっている場合が多く、複数の協定校担当者との打合せも大会期間中に実施できる。
 もう一つの側面は人材育成である。参加した大学担当者は世界からの国際教育交流担当者と直接接することにより、コミュニケーション能力・説明能力・交渉能力がつく。しかも、内容が業務に直結するものばかりなので、担当者は専門知識や自校の状況を的確に把握しておかねばならない。
 (二)NAFSA展示ブース出展のメリット―その広報効果
 NAFSAはかなり巨大な展示ブースのスペースが用意されている。出展にはNAFSAに直接申し込む方法もあるが、JAFSAおよび(独)日本学生支援機構(JASSO)が日本の大学に対して取りまとめブースを運営しており、各大学に募集をかけている。参加経費負担、申込時期、特徴は各々違うが、各大学の実情に合った出展をすると効果的である。一参加者としてNAFSA大会に参加する方法もあるが、展示ブースを持つことにより大会参加者から連絡が入る可能性が高くなり、大きなメリットとなる。8000名近い大勢の参加者の中で、こちらが会いたいと思っている参加者を探すのは容易ではない。その時にもブースの役割は大きく、また広報効果も高い。
 (三)NAFSAでの「自校」効果的広報の仕方
 展示ブース会場において、日本の大学が独立してNAFSAに申し込んでも、またJAFSAやJASSOに申し込んでも、だいたい位置的に「日本村」が形成されるように固まったところにある。参加者はまず「世界的にどのエリアか、どの国か」とブースを訪問する方向性を定め、出展している各大学へ訪ねて行く。日本に興味がある大学関係者は「日本村」に立ち寄る可能性は高い。その中で参加者が何を求め、どういう学生を送り出したいのか、どういうカリキュラムに興味があるのかに対し、自分の大学の特徴を明確に伝えれば、効果的な広報ができる。
 (四)JAFSAセッション・Japan SIG(Special InterestGroup)の活用
 JAFSAでは毎年会員から応募者を募り、NAFSA年次大会のテーマに沿ったセッションを大会時に設けている。話題のテーマの議論を通じ、世界の参加者がそれについてどう考えているのか理解できる場である。また、Japan SIGはNAFSAが設けている分科会で、日本や日本の大学に興味がある世界の担当者が集っている。会期中のセッションへの参加も価値がある。
 セッションでの発表や、参加して意見を交換することも「研修」と位置付ければ、大会の美味しさは何度でも味わえ、また参加させる側としても満足できるコストパフォーマンスとなる。

 二、EAIE(European Association for International Education)

 EAIEは1988年に設立された欧州の国際教育交流団体で、欧州の会員が中心である。年次大会は毎年各国持ち回りで行われている。今年はフランスのナントで九月に開催される。EAIEはNAFSAほどではないが、それでも3000人規模の参加者が集まる。すでに、欧州に協定校がある大学も、これから探す大学もEAIEはよい機会になる。活用方法はNAFSAとほぼ同様である。
 両大会を例に挙げたが、大会において必ずしもセッションに出る必要はない。分担し、協定校との打合せにのみ時間を取っている大学関係者もいる。「国際交流団体の国際連合体」の大会の機会を活用すれば、中小規模の大学で予算をなかなか取れなくても、コストパフォーマンスは極めて高い。インターネットが発達しているからこそ、敢えて対面で関係を作っておけば、その後のコミュニケーションは格段にうまくいくだろう。JAFSAはそのコミュニケーションをより促進したいと考えている。





 JAFSA(会長=白井克彦早稲田大学総長)は、主に学生の国際教育交流に関する情報交換や研修等の活動を行っているこの分野唯一のネットワーク組織で、2008年に設立40周年を迎えた。会員(正会員・団体)数は、国公私立大学を中心に、232大学・団体(2009年12月16日現在)に上る。http://www.jafsa.org/