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平成19年1月 第2257号(1月1日) 2007年新春特別号

2007年 新春座談会
  「全入時代の教育と私学経営 高度化と多様化への対応」
  学校法人制度を堅持し私学振興を 建学の精神の下、特色ある教育を展開

団塊世代、子団塊世代、孫団塊世代の進学率

 もうすぐやってくる全入時代は、世の中一般で言えば、需要と供給が釣り合っているという理想的な状況で、考えようによっては大学に入りたいと思う者にとって幸せな時代がやってきたと言えます。これまでの四年制大学への進学率を振り返ってみると、団塊の世代がピークに達した昭和四十二年頃に進学率のはっきりした谷が認められます。この世代は、受験者が増えても入学定員は増えずに、大学入学の厳しい壁に直面したことになります。
 ところが、その子どもの子団塊の世代が大学に進む頃は、文部省はかっての轍を踏むまいと国公私立大学を総動員して臨時的定員増を行い、子団塊の進学がピークに達した平成四年頃には、進学率の落ち込みどころか、かえって増加のピッチを早める結果となりました。そういう歴史の後で、これから数年後に孫団塊の世代を迎えようとしています。子団塊のピークでは一八歳人口が二〇五万人いましたが、孫団塊のピークはたかだか一二〇万人程度で、ピークというよりも踊り場という程度に過ぎません。あと一〇年も経つと踊り場を過ぎて、果てしなく続く一八歳人口減が待ちかまえています。
 孫団塊を迎える頃までは、全入時代という考えようによっては響きのいい言葉で済みそうですが、その後は、進学率の増加によって全入時代がどこまで長持ちするのか、それとも厳しい供給過剰時代に突入するのか、まったく不透明です。お正月の話題としては相応しくありませんが、経営に責任ある者としては、むしろその先の供給過剰時代まで覚悟して態勢を整える必要があるでしょう。
 学生が減ったら大学の規模を小さくすればいいじゃないか、それが経営の常識だと世間は考えるでしょう。そういう生き残り方もあるでしょうが、それを適切なタイミングで実行することは至難の業です。長らく教育に情熱を燃やしてきた教職員を目の前にして、これを急にどうのこうのということは現実的にはできません。どうしても手遅れになってくるわけです。ですから、定員割れというのはどうしても避けなければならない事態で、来てくれる学生はすべて受け入れるという、全入に移行せざるを得ないことになります。
 全入時代というのは、教育にあたる先生方にとっていかに苦しい状況かということは、教育を離れて経営者となってしまった今でも、想像に難くありません。これまでは、自分たちの教育に耐えられそうな学生を上から採るという選抜に慣れてきた先生方に、来てくれるという学生があれば、定員の枠一杯になるまで是非受け入れて欲しいと、経営サイドからお願いしなければならないわけです。入ってきた学生の力に応じた付加価値をいかに高めることができるか、そういう考え方にいかに教職員が一丸となって変換することができるか、これこそが経営上の最大の課題だと考えています。
 瀧澤 ありがとうございました。
 中原先生はいかがでしょうか。

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