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平成19年1月 第2257号(1月1日) 2007年新春特別号

新春座談会
  「全入時代の教育と私学経営 高度化と多様化への対応」
   学校法人制度を堅持し私学振興を 建学の精神の下、特色ある教育を展開

私学経営と学士課程教育が問われる時代

 瀧澤 明けましておめでとうございます。
 本日は、先生方、大変お忙しい中をご参集いただきましてまことにありがとうございます。
 新年の恒例であります「新春座談会」を早速始めさせていただきたいと思います。
 さて、今年は「二〇〇七年問題」と言われていることがいくつかあるわけですが、その一つは大学が全入時代を迎えるということであります。大学、短期大学等の収容力と一八歳の志願者数が均衡してしまう。だんだんと志願者が減ってきて、まさに私立大学にとっては深刻な経営問題となってきます。これは単に志願者減ということではなくて、最近の規制改革の政策の結果として、高等教育への新しい設置者の参入を盛んに促進する政策がとれられていることにもよるわけです。設置への参入を防ぐ壁を低くし、さらに株式会社をはじめとして、これまでには認められていなかった設置者の参入を促す。これは、競争が高等教育の質を上げるのだ、という見方の政策であるわけです。その結果、どういう状況が起こっているかと申しますと、一つには受験者数と入学定員の関係でありますが、平成十八年度は前年度に比べまして、さらに受験者数が七万人減ってしまいました。
 それに対して入学定員は逆に九〇〇〇人増えている。私立大学も八校増えている。そういう状態で、需給のアンバランスがますます激しくなってきています。
 その結果として、一つは入学者数が定員数を大幅に割り込む大学が出てきている。平成十七年度は大学の定員割れが約三割と言われておりましたが、平成十八年度ではさらに一割増えて四割になったということであります。そういう経営問題が大変にシビアになってきているということが一つあります。
 もう一つは、学士課程教育のあり方が大変問題になってきているということがあります。今、国の政策はどちらかというと、技術開発であるとか、あるいは国際的な競争力といったような観点から、大学院にかなり重点が置かれております。研究の拠点を形成するといったような予算措置も強力に進められている。科学技術関連の予算は、近年大幅に増えているといったようなことであります。ただ、大事なのは高等教育の問題で、国はここにもっと注目すべきです。具体的には、学士課程教育がいろいろな問題を抱えているということであると思います。
 さて、昨年の十一月三十日には、日本私立大学協会の創立六〇周年ということで、記念式典を挙行するとともに、決意表明も行われたわけですが、会長の大沼先生から全体的な私学のこれからの諸問題についてお話をお願いできればと思います。
 大沼 昨年は本協会にとっても、画期的な年と言いましょうか、創立六〇周年の記念すべき年を迎えて、人間で言うと還暦が過ぎたわけですから、今年は心機一転、新しいスタートを切るべき年になったと申し上げていいと思いますが、新しくスタートする中身というのは一体何なのか、が問われてくることになると思うのです。いわゆる教育で一番大事なのは、大学なら大学の教育でどういう中身を教えていくのかということが、きちんとしていないといけないと思います。それが教育の特色があるとか、私立大学の建学の精神であるとかということになります。
 したがって、二十世紀が終わって、二十一世紀になってもう数年経っているわけですけれども、二十一世紀の新しい世紀に向けた大学教育というのは一体何なのか、ということをきちんと整理していかないと、今言われているような経営問題がそれに密接に関連して動いてくる課題だと私は思っております。
 二十一世紀は、まさしく全入時代だとか、少子化だとか、さまざまなことが言われているし、大学そのものもたくさんできてしまっている。私立大学だけで、既に今年は五六八校になっているわけですし、公立大学も八九校、国立大学を含めると約一八〇校の国公立の大学があって、大学全体で約七五〇校という一番多い年を迎えているわけです。

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