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平成19年1月 第2257号(1月1日) 2007年新春特別号

2007年 新春座談会
  「全入時代の教育と私学経営 高度化と多様化への対応」
  学校法人制度を堅持し私学振興を 建学の精神の下、特色ある教育を展開

大学の教育目標を社会に示していく

 そんなことでおのおのが同じような路線を走ってはいけない年、自分の学校は一体どういう目標に向かって、どういう人材を育成していくのかということを、要するに学校の当事者というか、経営者がしっかりと考えて、内外に示していかないと、この時代は乗り切れないのではないかというふうに思っています。
 二十一世紀は当然、格好よく言えば多様な能力を持っている人たちが、高等教育機関に入学してまいります。多様な能力というのは、従来のように能力の質の高い人だけでなく低い人も含め、また、異質の能力を持つ人たちも参加してくることです。大学、短期大学等を含めて、五〇%の進学率は既に超えているわけですけれども、専門学校を含めたら七五%に達しています。高等教育の全入時代というのは、実は専門学校を含めた形で、誰もが高等教育の段階に進んで、それから社会に出ていく時代になっているということなのです。途中過程の中等教育の段階で社会に出ていく人はほとんどいなくなってしまったというのが、二十一世紀の大きな特徴です。したがって、高等教育全体の構造をどのようにするか、あるいは自分の学校はその多様化の中で、どの部分をとらえて特色ある教育を展開するかを未来に向かって示していかなければならない。それが、今年からの大きな問題としてとらえなければならない課題だと思っています。
 瀧澤 ありがとうございました。
 それぞれの大学が自分の使命をはっきりと確立するということが大事だという、非常に重要なお話だったと思います。廣川先生はいかがでしょうか。
 廣川 瀧澤先生がおっしゃられたように、これまで以上に、私立大学はさまざまな問題を抱えています。一つは、よく言われるように、需要と供給の関係で少子化がどんどん進んでいるにもかかわらず、やたらと大学が増えて定員未充足の大学が出てきました。
 平成四年に二〇五万人の一八歳人口があり、私学高等教育の定員未充足率は、平成九年まで医歯系の大学が行政的に行った入学生の抑制により数%でしたが、平成十年から十二年までに急激に増加して、ほぼ三〇%になりました。
 その後、平成十七年までの五年ほど横ばいできましたが、平成十八年になって、四〇・四%と四〇%を超え、今年から全入時代を迎えたと言われています。
 しかし、学生にとって入学を希望する大学と希望しない大学の二極化が進んできたため、既に全入時代を前に定員未充足の大学が出ており、今後ますますこの格差拡大が進むと思います。

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