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平成26年6月 第2567号(6月11日)

改革の現場
 ミドルのリーダーシップ <64>
 中期計画軸に改革
 学長機構の強化等体制整備
 岐阜経済大学


 岐阜経済大学は、1967年、岐阜県内で経済を学べる大学の設置を求める声が上がり、岐阜県や政財界、特に地元自治体の大垣市が土地と資金を提供して、公設民営の大学として開設した。そのような経緯があり、理事には大垣市の優良企業トップ、大垣市長、岐阜県副知事が就任する。現理事長の土屋 嶢氏は大垣共立銀行取締役頭取である。経済学部、経営学部の二学部四学科を設置し、地域に根差した教育研究を目指す。石原健一学長、渡辺正典事務局長、塚原康之企画広報課長に話を聞いた。

 学生募集でユニークなのは沖縄県との意外な関係であろう。岐阜県は古くは紡績で栄えた地域で、九州、沖縄からの出稼ぎ労働者も多く、「本土に行ったことはないが岐阜という地域は知っている。岐阜なら安心だ」という保護者も少なくない。沖縄県での同大学の評価が定着してきたのは、体育の教員免許も取得できる「スポーツ経営学科」を新設した時だった。沖縄県でも盛んな野球、サッカーやボートのクラブを充実させ、在学中は目一杯スポーツに取り組んでもらうとともに、卒業後はスポーツ関連の学校・企業等で仕事ができる仕組みを作った。「スポーツ経営学科のバイタリティが他の学科にも好影響を与えています」と塚原課長は語る。
 他学科も負けていない。特に同大学を有名にしたのは、1998年に始まった学生による大垣駅前の商店街活性化の取り組み「マイスター倶楽部」で、全国の商店街活性化活動のはしりとも言われている。この活動から地域連携推進センターが設立。同時期に立ち上がった情報技術研究所の付置機関となるソフトピア共同研究室は、企業、行政、NPOとの連携プロジェクトに学生が参加してソフトウェアの開発などを行う。「大学設立以来、地域との取り組みは様々に行ってきましたが、学生参加型になったのはマイスター倶楽部以降で、各機関が学生と地域を繋げるハブとして機能しています」と渡辺事務局長は述べる。
 就職支援も手厚い。主なメニューを3つ紹介する。
 経済学科の「企業人育成コース」は、入試時・学年進級時の成績優秀者約10名向けに、協力企業17社の企業経営陣がゼミで講義を行ったり、企業現場の見学などを行う。
 「就勝合宿」は、いわゆる就職活動の集中合宿であり、年に数回、OBや内定した在学生の先輩が全学生にアドバイスや模擬面接を行う。これにより学生の意識とコミュニケーション能力は劇的に変わる。
 「PAC(Programfor Advanced Career)」は、主に公務員試験対策のプログラムで、カリキュラム全体で公務員試験対策、教員試験対策の講座が受けられ基礎から専門試験への学習ができる。ちなみに、公務員試験対策は大学開学間もないころから行っており、膨大なノウハウがある。
 このような意識の高い高学力層を支援する取り組みが、結果的に他の学生の意識も刺激し全体の就職率を引き上げる仕組みとなっている。そして、様々な取り組みは教職員一人ひとりのボトムアップの取り組みから発展してきた。
 2007年、当時初めて定員割れをしたこともあり、第一期中期計画とそのアクションプランが検討され、2009年に完成。この計画には意思決定プロセスの見直しも含まれ、現在の学長を支える2名の副学長制度や全学の議論の整理や調整、執行、とりまとめを行う企画広報課の設置、学長選出制度の変更が示された。また、古くから学習行動調査や学生アンケート、そして、就職の満足度調査、採用企業へのアンケートなどを行い、その結果を改善に生かすような取り組みは行ってきていたが、全学的に行うことが盛り込まれた。
 石原学長は言う。「こうした仕組みの提案は、大学協議会や常任理事会運営委員会から上がってきました。教職員が一致して大学の改善をしていく風土はありましたが、やはり責任体制や意思決定の仕組みが分かりづらいということで、トップダウン型にシフトさせました」。
 最後に地域で学ぶ意味を石原学長に聞いた。「都市部は『地域』の形成が難しい面があります。一方、地方の大学は、周囲には企業、行政、住民と、大学に近く関わりのある人ばかりで、実際に生きた経済をしっかりと学べる、まさに地域実践型アクティブラーニングの場であると考えています」。

企業人育成課程を置き、実力ある人材育成
桜美林大教授/日本福祉大学園参与 篠田道夫

 岐阜経済大学の50周年ビジョンは、2007年の40周年時に全教職員の決意表明として五つの大学宣言を行い、不断の自己改革を誓ったことに始まる。初のビジョンで、これに基づき2009年、第1期中期計画、「アクションプラン2009―2012」を策定、教育改革・大学改革に着手した。
 分かり易く実践的な経済学・経営学を重視、地域連携推進センターを軸に地域や企業とコラボしたサービスラーニングに力を入れる。ゼミを重視、研究成果を発表する学内ゼミナール大会は、優秀賞のトロフィーを争って盛り上がる一大イベントだ。学修行動調査で、1日の学習時間や読書習慣も把握し実態を掴んで教育改善、2012年からは授業参観、意見交換会も実施する。輩出した経営者の大学の規模に対する比率では県内1位、企業人育成課程を置き、第一線で活躍できる実力を持った人材を養成する。
 キャリア教育には特に力を入れる。優れているのは、就職意識の強い学生の就職特訓講座を年20回以上開講、早期に内々定を勝ち取り就職活動全体を牽引、内定率を10%押し上げた。就職率は96%、対卒業生比でも84.5%、全国初の取り組みとなったジョブカードを活用したキャリアコンサルティングやジョブサポーター制度で支援する。就職活動に踏み出せない学生には定期的に電話、つまずいた時点で早期に手を差し伸べ就職率を底上げする。卒業生アンケートでのキャリア支援課への評価は高く、満足53%、まずまず満足29%。企業アンケートも517社に送付、回答があった160社の総採用数は1180人、うち離職者269人(22.8%)、全国平均に比して低い。
 喫緊の課題である学生募集も重視、担当副学長を置き、スポーツ推薦入試や体育系指導者によるスカウティング、沖縄県での学募にも力を入れ毎年30人前後の入学生を確保する。過去イメージキャラクター・ギフレンジャーでHPアクセス13万件、資料請求数3倍化を実現したこともある。しかし、基本は汗をかく広報戦略を重視する。
 第1期計画の総括は、2013年3月理事会に報告、冊子にまとめ全教職員に配布するとともに、引き続く後期計画として第2期中期計画(2013年四月〜2018年3月)を策定した。学長は中期計画の責任者として毎年度目標達成状況を検証、遅延部局には理由の説明も求める。学長をサポートするのは学長室機能も担う企画広報課、理事長室とも兼務し、政策の取りまとめ、経営との調整、特命事項を担う。中期計画の進捗管理、認証評価・自己評価、事業報告、3者の一体管理で着実な前進を目指す。
 こうした総合的改革の成果は徐々に実を結び、2006年設置のスポーツ経営学科の人気もあり全学では定員充足に近い96.5%まで確保、厳しかった福祉関係の学科も2012年公共経済学科への改組により回復しつつある。これにあわせ財政状況も徐々に改善、学生確保のため入学者の六割を超えた学費減免者も見直しを行うなど5か年で収支の均衡を目指す。
 管理運営体制の改革にも取り組む。もともと伝統的にはボトムアップ重視、大学自治を尊重する学風で、これは、ともすれば慎重審議や意思決定の遅れをもたらす。学長がリーダーシップを発揮できるように、投票はあくまで意向投票とし、学長の最終選考は大学協議会から常任理事会の下で学外理事も含む選考委員会へ移行させた。また、理事兼務の副学長を2人配置し学長補佐体制も強化した。
 教学の最高意思決定機関は大学協議会で週1回開催、学長、副学長、学部長、教学主要役職、事務局長の少人数で構成される。全学案件は2つの学部教授会の合同会議を学長直轄で開く。重要議題は常任理事会運営委員会と大学協議会の合同会議を開くなど、経営・教学も実質的な一体運営を行う。
 公設民営の設立経緯から地元企業、県や市の有力者が多く理事に就任、公立大学法人に向けた環境整備をすすめる。しかし日常経営は、代表権を持つ常勤副理事長や学長(理事)、事務局長(理事)が中心となり、教職一体、職員参加で行われている。2010年より目標管理制度を導入、職員の力を引き出す事務局長の全職員面談、副理事長、事務局長による課長面談なども毎年行う。中期計画の目指す目標に全学あげて真摯に取り組み、着実な成果をあげている。



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