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教育学術オンライン

平成25年1月 第2510号(1月16日)

大学は往く  新しい学園像を求めて〈63〉
 建学の精神を具現化へ
 社会性 創造性 合理性  グローバル人材を育成
 明海大学

 「社会性・創造性・合理性を身につけ、広く国際未来社会で活躍し得る有為な人材の育成をめざす」。この建学の精神の具現化に腐心している。明海大学(安井利一学長、千葉県浦安市・埼玉県坂戸市)は、1970年に設立された城西歯科大学が淵源だ。88年、外国語学部・経済学部を増開設して総合大学となり、大学の名称が明海大学になった。日本で唯一の不動産学部がある。2010年の新カリキュラム導入で「明海大の人間力」を磨きあげている。資格取得を奨励する奨学金など学生支援制度が充実。海外の多くの大学と姉妹校協定するなど国際交流も積極的。浦安キャンパスは、キャンパスライフには絶好のロケーションにある。「夢は未来への原動力。本学の特長は、充実の実学教育、奨学金、完備した施設」と語る学長に、これまでの改革の歩みとこれからなどを聞いた。
(文中敬称略)

不動産学部設置 歯大から総合大学へ

 東京ディズニーランド(TDL)の喧騒が聞こえてきそうだ。東京ベイエリアをのぞむ浦安キャンパスは、都心からのアクセスも良く、大型ホテルが立ち並ぶアーバンリゾートにある。教室からTDLで打ち上げる花火が見える。
 明海大学は、1970年に城西歯科大学として開学。88年、外国語学部、経済学部を設置、大学名を明海大学と変更。92年、不動産学部、05年、ホスピタリティ・ツーリズム学部をそれぞれ設置した。
 浦安市に外国語学部、経済学部、不動産学部、ホスピタリティ・ツーリズム学部の4学部、坂戸市に歯学部がある。5学部に4800人の学生が学ぶ。学長の安井が大学を語る。それは、建学の精神を語るのと同義であった。
 「社会性とは、常に変化する社会の中で、自ら課題を見つけ解決する能力。創造性とは、新たなモノや考え方を生み出し、前に進もうとする姿勢。合理性とは、情報社会の中で的確な判断基準を持ち、自分自身を確立する力を指します。
 本学は、こうした人としての基本的な力に、豊かな感性などをプラスして、激動する社会に飛び込んでも流されることなく、夢の実現に向けて力強く突き進む人材を育成しています」
 歯科大学から総合大学に移行した理由(わけ)を聞いた。88年の外国語学部と経済学部の設置。「建学の精神を具現化するには歯学部だけではできません。創立者は、教育を通じて社会性・創造性・合理性の三つを身につけた若者を育てて、広く国際社会で活躍させたいという思いで、二つの学部を設置しました」
 92年の不動産学部の設置。「国土の発展は、土地に対する理解が必要になります。動産を理解するだけでは駄目で、若い学生が不動産を学ぶことで、総合的な国土利用に役立ちたいと考えました」
 05年のホスピタリティ・ツーリズム学部。「日本は第一次産業の資源が多くありません。これからの高齢化社会を見据え、そして、グローバル化に向けて観光立国を支えたいという思いから設けました」
 建学の精神の具現化。その白眉は、2010年に導入した新カリキュラム。「専門教育に加えて、全学部共通の人間力形成教育、キャリア形成教育という三つの柱を4年間かけて学びます。本学独自なのは、三本柱を支える基礎教育です」。この基礎教育を説明する。
 1年次は、大学に学ぶ意義だけでなく、コミュニケーションや情報リテラシーといった学修スキルについて学ぶ。「初年次教育に当たるものですが、本学はリメディアルではなく、学生が自ら学ぼうとする意欲を刺激させることを最優先させて、モチベーションを高めてゆくプログラムになっています」
 各学部の学び。外国語学部。「日本語学科では日本語と日本文化を正しく理解し、世界に発信できる人材を育成。英米語学科では、英米語による高度で実践的なコミュニケーション能力を身につけます。中国語学科ではネイティブスピーカー中心の会話重視で、国際社会で通用する中国語運用能力を修得します」
 経済学部。「社会常識・経済学の基礎となる地域社会から国際社会までの幅広い教養と、公共政策・金融・経営・会計・財務など各分野の高度な能力を兼ね備えた現代グローバル経済社会を力強く生き抜くビジネスパーソンを育成します」
 不動産学部。「欧米諸国では不動産学が盛んです。豊かな暮らしや活力あるビジネスを実現するため、住宅・マンション・オフィスビル・店舗・土地の利用など、私たちの生活環境すべてを総合的に考える不動産学を学びます」
 ホスピタリティ・ツーリズム学部。「ホスピタリティ(おもてなしの心)と外国語コミュニケーション能力をベースに、旅行、航空などツーリズム産業や、ホテル、フードサービスなどホスピタリティ産業にかかわる優秀な人材を育成します」
 歯学部。「歯科医療に関する知識・技術の修得をベースに、広い視野・豊かな感性・国際性を兼ね備えた歯科医師を養成。基礎教育と少人数制による専門教育が特徴。国際的な視野を持つことを目的とした奨学海外研修制度もあります」
資格取得に奨学金
 資格取得奨励の奨学金について。「学生には入学した際に、将来の設計をするよう促します。安定した職業に付くには、資格の取得が有利。資格取得には費用がかかるので、これに挑戦する学生の負担が少しでも減るようにと設けました」
 日商簿記一級合格が7万円、秘書技能検定試験1級7万円、同2級3万円、TOEIC650点以上5万円…と資格によって差がある。一昨年度の実績は、秘書技能検定試験2級以上77人、TOEIC650点以上82人、宅地建物取引主任者38人など。
 積極的な国際交流。「建学の精神で『広く国際未来社会で活躍し得る有為な人材の育成』を謳っています。そのために、海外研修制度の充実や、外国人留学生の積極的な受け入れなどに取り組み、学内外における学生たちの国際性の涵養に力を入れています」
海外の36大学と協定
 これまでに姉妹校などの協定を結んだ海外の大学は、36校、数千人の留学生を受け入れてきた。歯学部が設けた生涯研修部は、海外の姉妹校の学生との相互交流の窓口にもなっている。国際歯科医療フォーラムの開催計画もある。
 就職について。資格取得を奨励する奨学金のほか、インターンシップに力を入れる。ターミナル空港や東京ベイエリアのホテル群、市役所など派遣先も充実。「学生の就職が厳しいのは否定しませんが、3年前に導入した新カリキュラムで学んだ学生が3年生になりました。彼らに大いに期待しています」
 地域貢献活動も、建学の精神に基づき積極的だ。一昨年の東日本大震災では、浦安キャンパス周辺は液状化の被害に見舞われた。「不動産学部の学生が住宅相談をしたり、体育系サークルの学生がドロ運びを手伝うなどボランティア活動に精を出しました」
地域貢献も積極的
 日本経済新聞社発行の日経グローカル(2012年11月19日)の特集「全国大学の地域貢献度ランキング 迫られる地域再生の役割)」で、明海大はボランティア・防災分野では私立大学4位(全体10位)にランクインした。
 大学のこれから。「歯学部は、いま以上に生涯教育に力を入れていきたい。浦安キャンパスは、地域の役に立つ、地域と一体となった教育研究を推進したい。これからも、私学の良さを活かして、社会の役に立つ学生を育てていきたい」
 創立者の宮田慶三郎は『夢』という言葉を大切にしていた。「夢を持つことは、何より自分を伸ばすエネルギーになります。明海大学は学生の夢の実現を支援する大学であり続けたい」。安井は、最後まで建学の精神に拘るのだった。


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