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平成21年2月 第2348号(2月11日)

成績に社会的影響あり PISA調査にみる日本の特徴

 はじめに、近藤信司所長が「大規模な調査の実施が求められるようになってきたのも、児童生徒の学力や学習到達度について、社会的関心が寄せられているから。社会がどのように変化しても、子どもたちが前向きに生きていけるよう、将来に対して備えさせてあげられるかは、我々大人に課せられた責務であると感じる」と挨拶を述べた。
 続いて、アンドレア・シュライヒャー氏が登壇。科学的リテラシーを中心に行われた二〇〇六年のPISA調査(生徒の学習到達度調査)結果から、日本および他の国々が、教育の質、公平さ、効率の点から見て、また教育と生徒の科学との関わりにおいてどの位置にあるのか等、データを基に詳細に述べた。
 OECDの平均と比較すると、日本の生徒は概ね科学を評価しているが、科学が社会を発展させる能力よりも、技術的な可能性をより強く信じているという特徴がある。しかし、OECD平均得点上位国にありながら、科学に関する職業への関心を示したのは少数であり、三〇歳で科学に関する仕事をしていたいと思う生徒の割合は少ない。
 学校の成績と社会経済的背景を他国と比較すると、日本は、生徒の成績に社会経済的な影響の強いことが推察される。
 同氏は、各国の累積費用と科学の成績とは、必ずしも比例しておらず、費用のかけ方だけでなく、それがどのように使用されているのかが、重要である。優れたシステムは優れた教師を引きつけ、最良事例と質の高い専門家育成に取り組む手段をもたらす、と述べた。
 また、学歴の労働市場価値の変化に触れ、大学レベルの学歴を持つ人が増加しても、大学卒の給与も増加しているため、一般的に学歴の労働市場価値はインフレにならない、と述べた。
 最後に、同氏は、PISA調査は、相対的評価が可能となり、測定可能な目標に関する政策目標づくりに役立ち、改革の方向性を確立するのに役立つ。改善・改革速度は国によって異なるので、調査の度にランキングが変わることを含めて、他国の教育制度を参考にできると述べた。

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