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平成21年2月 第2348号(2月11日)

「中長期的な大学教育」「キャリア教育・職業教育」在り方で協議
  徳永高等教育局長、清水生涯学習政策局長招く

 日本私立大学団体連合会は、去る二月三日、私学会館別館会議室で第三回高等教育改革委員会(委員長=黒田壽二金沢工業大学学園長・総長)を開催した。
 協議事項は、中教審の『中長期的な大学教育の在り方』及び『今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方』について、それぞれ徳永 保高等教育局長、清水 潔生涯学習政策局長からの審議経過を踏まえての解説を聞くとともに協議を行った。
 ▽『中長期的な大学教育の在り方』の解説に当ってコ永局長は「従来の文科省の政策は、教育研究の内容を主に扱ってきた。このたびは、教育研究の質の向上さらには公財政システムを含めて大学総体として健全に発展できるようにするには、大学経営にどう取り組んでいけばよいか、多様なニーズ、グローバル化、人口減少期等を背景に議論したい」との考えを述べた。
 (1)社会や学生からの多様なニーズに対応する大学制度及びその教育の在り方では、従来と異なり学位の取得を目指す学生の視点に立ち、学位レベルと分野に応じた達成すべき能力を修得できるような体系的な「学位プログラム」を実施する大学制度とするものであり、大学自らが質保証できる仕組みとすることが求められている。「教員組織」や「学生の所属組織」は様々な形が考えられ、現在の仕組みでも可能と考えられるが、教員が専門分野別に編成された「教員組織」に、学生は「教育活動の場」に所属し、教育プログラムを選択するような仕組みも考えられる。また、大学の公的な質保証においては、最低基準を定める「設置基準」、その担保のための「設置認可」、設置後の「認証評価」の三要素と大学の活動を支える公財政支援の一体的運用が必要である。
 (2)グローバル化の進展の中での大学教育の在り方では、国際的に評価される教育を行うため、教育内容の明確化、学位の国際的運用性向上、交換留学等の促進が必要であり、AHELOといった世界的規模の評価活動への対応も不可欠。
 (3)人口減少期における我が国の大学の全体像では、まず、量的規模について国際的にも過大とは言えず、社会人学生も少ない。大学はリーダーとなるべき多様な人材育成と底上げのために積極的な役割を果たすべきであり、量的規模の在り方も、それらのことに相応すべきである。また、学生数を収容定員に基づいて適正な数にするとともに、収容定員を適正規模に削減するなど適切な対応も必要。
 そのほか、情報公開や機能別分化の促進等についても触れた。
 委員からは「評価と公費助成について今後検討されるのか」「地域によっては国公私以外の第四の設置形態の有り様はどうか」「高等教育関係の種々の国際比較を見ると、我が国のレベルは低い。広く社会に訴えていくことも必要」などといった意見が出され、A永局長は、今後の審議に反映したいと述べた。
 ▽『今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について』の解説に当って清水局長は、この度の審議が教育基本法及び教育振興基本計画に重点事項として掲げられていると述べ、「一年を目途に取りまとめていきたい。急ピッチの審議となるが、節目においては各団体からのご意見もいただきたい」との意向を示すとともに、検討の三つのポイントを解説した。
 (1)社会・職業への円滑な移行のために基礎的・汎用的能力について、初等中等教育、高等教育の各段階ごとに明らかにし、その確実な育成を図り、質を保証していく体系的なキャリア教育の充実方策の検討。
 (2)職業に関する専門的、実践的な知識・技能等を身につけさせるための職業教育の在り方について、後期中等教育から高等教育を見通した上で、@専門学科では即戦力となる人材育成のほか、高等教育機関との接続の円滑化など職業教育の在り方の検討、A普通科では、卒業後の進路等も踏まえた検討、など。
 (3)高等教育段階での職業教育の在り方について、各高等教育機関それぞれの目的・役割を明確化するとともに、学生等の社会・職業への円滑な移行に向けた教育システム形成の観点から、多様なニーズに対応するための職業教育に特化した新たな高等教育機関の創設等も含め、職業教育の在り方についての検討。

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