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平成20年3月 第2307号 (3月5日)

大学分科会等の審議動向
  学士課程教育・留学生政策・専門職大学院など審議

  教育振興基本計画特別部会 答申素案を審議(教育投資の方向は審議未了)

中央教育審議会(山崎正和会長)は、二月に「生涯学習の振興方策」について答申したが、大学分科会では、「学士課程教育の在り方」について、学士課程小委での議論から制度・教育部会との合同会議を経て、同部会として今年度中に審議のまとめを行ない、夏前の答申を目指して審議している。また、「留学生三〇万人計画」の策定に向けた留学生特別委員会の審議、さらに、大学院部会では専門職大学院の急増と専攻分野等の多様化に対応する諸課題の審査などが行なわれている。一方、教育振興基本計画特別部会では答申素案の審議をしているものの、今後一〇年間を通じて目指すべき教育の姿を実現させるため「国の教育投資」について、大学分科会からの提言などもあり、審議が続いている。これらの審議状況、答申素案などの概要を取りまとめた。

大学分科会
 ▼制度・教育部会(学士課程に関する小委員会)
 昨年取りまとめられた「審議経過報告」以後、学士課程小委は「全入時代を迎えての高校と大学の接続」及び「留学生政策」のそれぞれのワーキンググループ等の報告を受けるとともに、「国による支援・取組」に関連した大学団体等の役割への要請としての意見募集(2面に日本私立大学協会の意見を掲載)をするなどし、現在は制度・教育部会との合同会議で「審議のまとめ」に向けた議論に入っている。
 「審議経過報告」以後、このように様々な提言や意見、また、OECDの国際調査をめぐる動向、日本学術会議との連携、大学設置・学校法人審議会からの課題提起などを踏まえた上で審議し、夏前までに最終的な答申として取りまとめる予定である。
 なお、「審議経過報告」の構成は、▽第一章・経緯と現状に関する基本認識、▽第二章・改革の基本方向=(1)大学の取組〜社会からの信頼に応え、国際通用性を備えた学士課程教育の構築を〜、(2)国による支援・取組〜大学の自主性・自律性を尊重した多角的支援の飛躍的充実を〜、▽第三章・改革の具体的な方策=第一節:学位の授与、学修の評価、第二節:教育内容・方法等((1)教育課程の編成・実施、(2)教育方法、(3)成績評価)、第三節:高等学校との接続((1)入学者選抜、(2)初年次における配慮、高大連携)、第四節:教職員の職能開発、第五節:質保証システムなどとなっている。
 ▼留学生特別委員会
 去る一月三十日、福田康夫首相が施政方針演説で述べた「留学生三〇万人計画」を受けとめ、大学分科会の下に「留学生特別委員会」が設置され、その初会合が二月二十二日に開催された。
 今後の検討事項案としては、(1)なぜ「三〇万人」か?(三〇万人の意義の明確化、留学生交流の意義の再整理)、(2)「三〇万人」をいつまでに?(将来予測の調査研究など)、(3)「三〇万人」の姿は?(高等教育全体の将来像、長期と短期、国・地域など)、(4)「三〇万人」を達成するには?(体制整備、国家戦略としての留学生政策の展開など)、(5)「三〇万人」計画の設計をどうするのか?(短期、中期、長期の展望、将来予測とアクションプランの作成など)などが考えられているが、かつての「留学生一〇万人計画」でさえその達成には二〇年余を要したことから、その体制づくり等については、審議を重ねることになりそうだ。
 当日は、各委員から、「各国で留学生の受入れについての競争も激化している中、国家戦略として三〇万人という数字の意義づけが必要である」「三〇万人を達成するためには大学側のリクルーティングを奨励すること、また、海外における一層の日本語普及を進めること、特色ある、魅力ある大学づくりの推進なども欠かせない」「留学生受入れの取組を支援するGPの創設を」などといった意見が出された。
 人口減少の激しい日本では、留学生を日本国内の労働力と見込んで獲得しなければならないという側面もある。また、地方の大学でも留学生の比率を増やし、全体の底上げを図ることなども課題となっている。
 そのために、外務省、法務省、文科省の三位一体で取り組まなくては解決できない問題も大きく横たわっている。
 なお、同委員会委員には座長の木村 孟大学評価・学位授与機構長のほか、森田嘉一(学)京都外国語大学理事長・総長など一三名が選任されている。
 ▼大学院部会
 グローバル化に対応した国際的に通用する高度専門職業人の機能を担う、専門職大学院の質の向上及び専門職大学院の質の確保が急務であり、教育研究活動についての実態調査等をもとに教員についての(1)資格(関連分野の学位、研究業績)、(2)専任の在り方、(3)養成体制、(4)教育能力の向上と評価の在り方などの検討を優先させて審議している。併せて、博士課程修了者等の諸問題についての論点として、(1)社会のニーズとのミスマッチ、(2)博士課程における研究者養成の在り方、(3)博士課程の学生等に対する経済的支援の充実、(4)学位審査に係る透明性・客観性の確保などを視野に、現状のデータ(在学者数の推移、学位授与状況、オーバードクターやポスドクの状況、進路状況、大学院規模の国際比較等)を参考に審議を重ねている。

教育振興基本計画特別部会
 二月二十九日に開催された同特別部会では、教育振興基本計画の「答申素案」について審議した。
 同素案の構成は▽第一章・我が国の教育をめぐる現状と課題〜教育立国の実現に向けて〜、▽第二章・今後一〇年間を通じて目指すべき教育の姿=(1)今後一〇年間を通じて目指すべき教育の姿、(2)求められる教育投資の方向、▽第三章・今後五年間に総合的かつ計画的に取り組むべき施策=特に重点的に取り組むべき事項(@確かな学力の保証、A豊かな心と健やかな体の育成、B教員が子ども一人一人と向き合える環境づくり、C手厚い支援が必要な子どもの教育の充実、D地域全体で子どもたちを育む仕組みづくり、Eキャリア教育・職業教育の充実と生涯を通じた学び直しの機会の充実、F大学等の教育力の抜本的強化と質保証、G卓越した教育研究拠点の形成と大学等の国際化の推進、H安全・安心な教育環境の実現と教育への機会の保障など)となっており、高等教育関係の施策はFの事項として次の三項目が挙げられている。
 ●国公私を通じた大学間の連携による戦略的な取組の支援として、大学間の連携による教育研究環境の充実や地域貢献のための取組を二〇〇件程度支援する。また、国公私を通じて複数の大学等が学部・研究科等を共同で設置できる仕組みを二〇年度中に創設する。併せて、大学等が社会的要請の高い人材育成について地域や産業界と連携して行う取組を支援する。
 ●世界最高水準の教育研究拠点の形成等として、平成二十三年度までに一五〇拠点程度を重点的に支援する。大学の高度化を目指し科学研究費補助金の拡充等を図る。
 ●「留学生三〇万人計画」の策定・実施では、中教審の審議を経て計画を策定した上で、その実現に向けた取組を行っていくことになる。▽第四章・施策の総合的かつ計画的な推進のために必要な事項=教育に対する財政措置、進捗状況の点検及び計画の見直しなどとなっている。
 なお、第二章の(2)「求められる教育投資の方向」については審議未了であり、空白のままだが、関連して、大学分科会からの「二〇二五年において、社会人学生及び留学生等の増加、国際的な教育水準等を踏まえた人材育成等から、高等教育全体の振興が重要であり、そのためには公財政支出を現在の二・六兆円から五・五兆円規模に増やす必要がある」といった提言等もあり、今後審議が重ねられる。

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