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教育学術オンライン

平成23年9月 第2454号(9月7日)

大学は往く 新しい学園像を求めて〈26〉
  大阪産業大学
  デザイン工学部を新設
  文理融合の総合大学へ 充実の就職、施設、部活

  『偉大なる平凡人たれ』が建学の精神である。大阪産業大学(本山美彦学長、大阪府大東市)は、開学以来、交通・産業を中心に教育・研究を展開、有為な人材を育て社会に送り出してきた。建学の精神の意は「名誉や地位の追求ではなく、人間社会への貢献を生き甲斐とし、それに喜びを感じること」だという。「一人ひとりが夢の結果を得られる就職の強さ」、「地域にも開放される『Wellness2008』など充実した施設設備」、「野球部・男子バスケットボール部・バレーボール部など強豪クラブ・サークルの存在」が特長だ。“元気がいい大学”というのが訪れた際の印象だ。2012年には既存の工学部情報デザイン学科と建築・環境デザイン学科を改組・再編、関西地区の大学では初の「デザイン工学部」を新設。文系から理系まで学べる文理融合型の総合大学として進化する。大阪産業大学のこれまでとこれからを学長に聞いた。
(文中敬称略)

建学の精神 「偉大なる平凡人たれ」

 大阪産業大学は、瀬島源三郎が1928年に創立した大阪鉄道学校が前身。「わが国将来の産業経済を考えるとき、交通と産業の併行的発展こそ、不可欠である」というのが瀬島の開設理由だった。
 1965年、大阪交通大学(経営学部及び工学部)を設置。同年、大阪産業大学と名称を改称。86年に経済学部、01年に人間環境学部を設置、総合大学へと発展する。
 08年に学部学科再編を行った。人間環境学部の文化環境学科を文化コミュニケーション学科に、同都市環境学科を生活環境学科に、工学部の環境デザイン学科も建築・環境デザイン学科にそれぞれ名称変更。人間環境学部にスポーツ健康学科を新たに設けた。
 「スポーツ健康学科は、少子高齢化時代を迎え、スポーツと健康のスペシャリストを養成するのが目的。学生は保健体育の教員や、病院・福祉施設での健康運動の指導、スポーツクラブでのインストラクターなどをめざしています」
 学長の本山が大学の教育について語る。「建学の精神を踏まえて、社会人として大切な教養や倫理観を養い、読み・書き・ITなどの基礎学力の上に立った幅広い専門知識を習得することが教育目標です」
 近年、大学には基礎学力および専門知識に加えて、自主性・創造性、自己学習能力、コミュニケーション能力などの社会人基礎力がこれまで以上に問われている。これには、どう対応しているのか?
 「課外活動、ボランティア活動、インターンシップなどを通じて、ある程度の社会人基礎力は培われます。本学では独自に『プロジェクト共育』を実施することで、学生自らが主体性を持って学び、問題解決能力を養っています」
 『プロジェクト共育』とは?「07年にスタートした学生たちが一つのテーマに自主的に取り組む活動です。狙いは、社会人基礎力の養成で、これにより、学生の積極性、行動力、コミュニケーション能力が伸びています」
 プロジェクト共育には、国際自動車連盟公認の世界大会で5回も優勝している「ソーラーカープロジェクト」、菜種油を使ってバスを走らせる「菜の花プロジェクト」、緑化や清掃美化活動を通して潤いと活力あるキャンパスライフを実現しようという「エコ推進プロジェクト」など約30のプロジェクトがある。
 「ソーラーカープロジェクト」は1989年発足というから歴史もある。環境、エネルギー問題に対し、その保全策としてクリーンで無尽蔵な太陽エネルギーに動力源を求めたソーラーカーの開発に取り組んできた。
 「ソーラーカーの開発を通じて『モノを造るよろこび』、『エネルギーの大切さ』、『クリーンエネルギーのすばらしさ』を実体験し、国内外で開催されるソーラーカーの競技会に参加して評価を得ています。この活動は、創造性と技術力に優れた人材を育成する実践教育にもなっています」 
 「エコ推進プロジェクト」は、環境問題への取り組みを考える中で、空気浄化作用を目的に間伐材を利用したプランターを学内に数多く設置。大阪府から「大阪府木づかいCO2認定証」を受賞した。
 次に、特長のひとつの就職の強さ。二つのセンターが支援する。教育支援センターは、さまざまな資格の取得支援から「プロジェクト共育」のサポートまで行う。キャリアセンターは、就職相談、ガイダンス、セミナーの開催を含めた就職指導、キャリア支援プログラム、求人先の開拓・調整などでバックアップ。
 「本学では、用意されている資格(免許)を得るチャンスを生かしてほしいと『資格取得のすすめ』を推進しています。手に職をつける資格や技能は就職に直結し、キャリアアップの手段ばかりでなく、いざという時に役立つからです」
 大学のある大東市周辺は、“ものづくりの街”。「現代技術の担い手が暮らす町であり、歴史的遺産にも恵まれた町です。そうした歴史と伝統もあって地域密着型の産学連携プロジェクトも盛んです」 
 産学連携プロジェクトでは、鈴鹿ソーラーカーレース参加やダカールラリーの完走といったプロジェクトを敢行。07年のダカールラリーではドライバーが片山右京、バイオ燃料エンジンの車での完走といった話題で注目を集めた。
 さて、2012年開設のデザイン工学部。「“人と環境にやさしいものづくり”をテーマに、毎日をもっと楽しくできる、ものづくりの感性とデザインの技術を磨いていきます。人々の豊かな生活を創造できる技術者・デザイナーを養成するのが目的です」
 情報システム学科と建築・環境デザイン学科がある。情報システム学科は、ソフト・システム・WEB・アニメなど多彩な領域から人に役立つ技術を探る。建築・環境デザイン学科は、機能性と快適性、人に感動を与える美しさまで備えた環境・空間・モノの創造に取り組む。
 「情報システム学科は、卒業後はIT産業やコンテンツ産業などでの活躍がめざせます。建築・環境デザイン学科は官公庁・行政や建設業・ディベロッパー、建築設計事務所、インテリアデザイン事務所など多彩な進路が期待できます」
新学部は女性に適す
 こう付け加えた。「女性の持つ感性が、これからの大学には必要で、文理融合型の新タイプのデザイン工学部は女性にも適しています。発想の異なる学生がお互いに刺激しあい、人間としての幅を広げていってほしい」
 キャンパスは東西に広大で、中央キャンパスは主に教養部と文系が中心。東部キャンパスには工学部・工学研究科が集中している。付属の大阪桐蔭中学校・高等学校は西部キャンパス全体と東部キャンパスの一部に併設されている。
部活は教育の一環
 学生数は1万2000人。部活・サークル活動が盛んで、野球部・男子バスケットボール部・バレーボール部・柔道部・剣道部などは「全国区」の強豪になっている。
 「部活・サークル活動は、教育方針である『創造性豊かな人材を育成し、産業社会の発展と人類の福祉に寄与する』に不可欠。遊びでなく大学教育の一環と位置付け、援助金の交付や優秀な成績を収めた部活・サークルには表彰制度も設けています」
 大阪産業大学のこれからを、本山が語った。「新しい産業社会の発展と人類の福祉に寄与できる世界的視野に立つ近代的産業人、交通・産業教育に加えて、人間形成、創造性開発に重点をおく人材を、これからも育成したい」
 こう学生にエールを送る。「建学の精神とする独自の学風を通じて、深い人生観と広い世界観を養ってほしい」。時代は変わっても、「偉大なる平凡人たれ」の精神は一貫している。それが大学の元気につながっている。


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