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平成22年5月 第2400号(5月12日)

健全な証券投資を行うために
  ―証券市場に関する学生への注意喚起 B―  


証券取引等監視委員会事務局総務課課長補佐 高橋祐二

  近年、金融危機の中で市場の混乱に乗じた不公正取引が(若年層も含めて)増加傾向にある。そこで証券取引等監視委員会から、学生の証券取引への注意喚起及び学生を指導する教育関係者へのメッセージを寄せていただいた。(3回連載)

 前回までは、インサイダー取引をはじめとする不公正取引について、注意点を含めて述べたところであるが、今回は証券市場に蔓延する詐欺的行為などに対する注意を促すこととしたい。
 ●証券市場における詐欺的行為
 今、詐欺といえば「振り込め詐欺」による高齢者の被害が後を絶たないところであるが、証券市場でも詐欺的行為や悪徳商法が横行している。特に、未公開株や社債の投資話で被害に遭うケースが増加しており、犯罪集団が振り込め詐欺から未公開株詐欺にシフトしているとの報道もある。こちらも高齢者が被害に遭う割合が多いようだが、学生をはじめとした若年者にも着実に魔の手は伸びていると考えられる。そこで、自らが被害に遭わない、また、友人・知人に遭わせないといった意識が必要である。
 ●金融庁などの職員を装った勧誘行為について
 昨年の2月頃から、金融庁や証券監視委に対して次のような情報が寄せられている。
 金融庁や証券取引等監視委員会又はこれを連想させる組織を名乗る者(注)が、・「未公開株の被害調査を行っている」「いまお持ちの未公開株は上場が決定しているので安心である」などと告げ、それと前後して、未公開株の発行業者と称する者が未公開株の買い増し勧誘などを行う、・「未公開株被害者のため、会社に対して買取り交渉を行う」などと告げ、仲介手数料や報酬を要求する、などといった行為を行っている。
(注)寄せられた情報によると、証券取引等監視委員会を連想させるような名称の例としては、「証券監視委員会」「NPO法人 証券等監視委員会」「証券取引監査委員会」「証券取引監視協会」などがある。
 情報によれば、未公開株を高値で買取るとの連絡の後に勧誘役が登場する、いわゆる「劇場型」による行為もあり、その手口はますます巧妙になっていると思われる。そこで注意点であるが、一般的に、幅広い投資家に未公開株の取引の勧誘が行われることは考えられない。ましてや金融庁や証券監視委の職員が、電話により未公開株の上場時期などについて言及したり、未公開株の買取り交渉を行ったりすること、また、これらの行為を外部に委託することも一切ないので、上記のような不審な連絡等については十分注意願いたい。
 未公開株による詐欺は振り込め詐欺と違って発覚までに時間がかかり、気付いたときには犯罪集団は消えているため資金回収は難しいという。とにかく未公開株には関わらないこととし、もし連絡や訪問を受けた場合には、最寄りの警察署に相談願いたい。また、金融庁金融サービス利用者相談室又は証券監視委情報受付窓口でも情報提供を受け付けている。
 ※当局からの注意喚起及び情報提供連絡先
http://www.fsa.go.jp/sesc/support/warning.htm
 ●無登録業者からの勧誘について
 また最近、一般投資家を対象とした、無登録業者が取扱うファンド(金銭などの出資を集めて事業・投資を行いその収益等を分配するもの)に関する事件が相次いで報道されている。ある無登録業者は、「今はファンドの時代です。元金は完全に保証しているので、銀行に預ける感覚です」などと勧誘し、穀物やガソリン、金などへの投資をうたって出資を募っていたとして警視庁の捜索を受けた。
 金融商品取引法では、組合などのファンドへの出資を勧誘する者に対して登録を義務付けているため、まず、勧誘してきた者が登録されている業者であるかどうか確認することが肝要である。これは、金融庁のウェブサイトや全国の財務局で確認できる。
 ※金融庁「登録等を受けている業者一覧」
(http://www.fsa.go.jp/menkyo/menkyo.html)
 いずれにしても、株をはじめとする金融商品は登録されている業者以外からは購入しないことであり、サイト上にも潜んでいる「絶対に儲かります」などと射幸心をあおる勧誘には絶対に乗ってはいけない。
 ●詐欺まがいの登録ファンド業者の実態について
 一方で、登録を受けている業者であっても、その信用力が保障されているものではないので注意が必要である。証券監視委がファンド業者に対して実施した証券検査では、出資者から募った出資金を自社の返済金やファンドの配当金、また、役員報酬及び運転資金に充てていた業者を摘発したところであり、この2業者には、その後、登録取消しの行政処分が下されている。このほかにも出資金の使途が不明な業者は業務停止等の行政処分となった。これらの業者は、本来、業を遂行する上で必要な最低限のコンプライアンス意識さえも欠如していたと言わざるを得ない。
 とにかく、詐欺的手法で資金を集める投資ファンドには注意が必要だ。業者からの説明内容が理解できない状況で契約してはいけないし、また、投資話に「夢のような儲け話」はないので、証券投資を行う際には特に慎重な検討をお願いしたい。
(おわり)


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