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平成22年3月 第2394号(3月10日)

経常費補助金特別補助
 特別補助比率の大きい大学とは
 特色活かす中小規模大学(阪南大68.2%など)

 日本私立学校振興・共済事業団(河田悌一理事長)は、2月末に平成21年度の私立大学等経常費補助金の交付状況を公表した。本紙前号で、一般補助と特別補助の総額について掲載したとおりである。ここでは、そのうちの特別補助について詳細をまとめてみた。

 特別補助は、(1)教育研究活動の活性化を促進し、各大学等の特色を活かせる支援を行うため、三つのゾーンを各大学が選択し、ゾーンごとのメニューの項目を算定方式に従って計算し、増額していくもののほか、(2)学生の経済的負担軽減の支援、(3)経営改善に取り組む大学等への支援、(4)特定分野の人材養成支援等がある。
 (1)では、「最も比重を置くゾーン」として選択した場合には増額分の100%を、「併有ゾーン」とした場合には原則として70%を配分する。
 ここで、特別補助の主な補助項目と算定規準の概要等を見てみると、次のようになっている。
【メニューごとの支援】
 ●大学等の質保証メニュー=▽質向上への一体的取組(学部等ごとの収容定員〈定員未満の場合は在籍数〉×1000円×取組の区分数〈学習ポートフォリオ、GPAのいずれかを実施等の7区分〉)、▽教育力向上の組織的研修等(FD実施組織の活動が年3回以上実施の大学等で、学部等ごとの専任教員数×1000円×取組みの区分数〈専任教員以外の教員のFD委員会や講演会への参加等2区分〉など)。
 ●学部教育の高度化・個性化支援メニュー=▽単位互換の推進(国内の大学等間で協定に基づいて1年間実施〈同1法人内は除く〉している場合に合計学生数に応じて増額する〈1人〜30人:200万円、31人〜60人:350万円など〉)、▽高大連携(高等学校又は中等教育学校〈後期課程〉の生徒を科目等履修生として受入れる大学等に、合計学生数に応じて増額する〈1人〜30人:200万円、31人〜60人:350万円等〉など)。
 ●就学機会の多様化推進メニュー=▽社会人入学の推進(社会人特別入学者選抜による入学者が正規の課程に在籍している場合、合計学生数に応じて増額する〈1人〜10人:400万円、11人〜20人:500万円等〉など)。
 ●先進的学術研究推進メニュー=▽研究施設(専任教員がいるか、いない場合には兼任教員が5人以上で専任職員が配置されていること及び設置後3年以上で規程があり研究成果の紀要等を作成している場合で、所要経費の2分の1以内を4000万円を限度に増額。▽研究連携コンソーシアム形成支援(拠点となる大学等で2組織〈学校法人及び国公立大法人並びに地方公共団体、民間企業等〉以上の構成で、加盟私立大学等の合計数に応じて増額する〈15校まで:200万円、16校〜30校:400万円等〉など)。
 ●地域活性化貢献支援メニュー=▽地域貢献へのインセンティブ付与の取組み(三大都市圏以外に所在地があり、区分は@地元企業等への就職に対する返済免除等の奨学金制度がある、Aインターンシップ、実習活動の実施などの3区分あり、30万円×区分数を増額する)、▽総合的な地域活性化事業支援(地域の子育て環境の改善、ものづくり教育の推進などで、一事業当たり80万円を増額する〈5事業限度〉など)
 ●大学等の国際化推進メニュー=▽外国人留学生の受入れ(要件を満たす留学生数×3万円を増額する〈上限1000人〉)、▽学生の海外派遣(協定に基づくもので、学生数×3万円を増額する〈上限300人〉など)
 ●高度情報化推進メニュー=▽情報通信設備の基盤整備及び維持(コンピュータ、ネットワークを利用した授業科目の設定、eラーニング活用の授業を実施する場合に、学生数×7000円〈大学昼間部〉を増額、など)
 以上のゾーン化・メニュー化に伴う支援のほか次の増額支援がある。
【経済的負担軽減】
 ▽授業料減免事業等支援=経済的に修学困難な学生(留学生除く)で所要の条件を満たしている場合、入学料及び授業料減免等を含む給付事業及び金融機関の教育ローンの利子負担事業に係る経費の2分の1以内を増額する。▽学生支援(就職支援等)の取組みの支援=平成20年度以降に就職支援の強化に取り組む大学等に1校当たり30万円を増額する、など。
【経営改善への支援】
 ▽未来経営戦略推進経費=学校規模の適正化、他機関の人的・物的資源を活用するなど経営改善に向けた計画を作成し、理事会の承認の下で実施し、前年度補助金において、私大等経常費補助金取扱要領及び配分基準に定める調整を全く受けていない大学等で、専門委員の審査を受けて決定するもの。増額は、収容定員に基づいて決める。原則5か年連続とし、3年経過後に中間評価。増額は収容定員により、1人〜200人:1000万円、201人〜500人:1200万円など。
 そのほか、特定分野の人材養成支援では、特定大学院、法科大学院等への増額措置が行われる。
【特別補助比率】
 一般補助は、教職員数や学生数等に応じて配分されるもので、大学の規模によりほぼ決まるが、一方、特別補助は、前述のように、各大学の取組みに対して支援するものであり、経常費補助金総額に占める割合が大きいほど、教育改革等に熱心であるとも言える。
 経常費補助金総額に占める特別補助の割合は、私学全体で34.2%であるが、全大学(大学院大学は除く)のうち特別補助の割合が大きい大学を見てみると、大きい順に次のようであった。
 @阪南大学68.2%(質保証メニュー5253万円、就学機会多様化メニュー739万円など)、A東京工科大学63.6%(就学機会多様化メニュー1854万円、先端的学術研究推進メニュー5420万円など)、B大手前大学62.2%(質保証メニュー6851万円、就学機会多様化メニュー1164万円など)、C宝塚造形芸術大学61.5%、D名古屋商科大学、大阪総合保育大学61.4%、F稚内北星学園大学57.9%、G桃山学院大学56.6%、H梅花女子大学56.4%、I長崎ウエスレヤン大学56.2%などであった。


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