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平成22年1月 第2387号(1月20日)

新刊紹介
  大学の現在を捉える
  「中央公論2月号」
  特集「大学の敗北」

 毎年、「中央公論」二月号が楽しみだ。例年、大学特集を組む。特集のタイトルが、大学の現在(いま)を捉える。今年は「大学の敗北」と挑発的。大学教員ら五人のレポートを掲載している。
 東大名誉教授、養老孟司氏の「東大よ、『世間』に背を向けよ」は“ミスマッチ”。京大出身者のノーベル賞受賞に対して「東大は賞を出すほうだ」とテレビの取材に、電話を叩き切ったエピソードを披露。〈こういう感覚を権威主義という人もいる〉と書くが、文中に散りばめられた権威主義に鼻白んだ。
 結びも〈勝手にしやがれ〉と無責任。高額な講演料で知られる養老氏の原稿料が気になる。これに比べ、黒木登志夫・前岐阜大学長の「地方大学は生き残れるか」は、いい。東大一人勝ちの弊害を論じているが、体験を交え説得力がある。
 地方の大学について〈多くの優れた研究が行われている〉ことをデータで実証。〈それぞれの地方で、「知の拠点」として重要な役割を果たしている〉と、〈地方大学軽視でなく蔑視する〉風潮を撃つ、胸がすく。
 教育ジャーナリスト、小林鉄夫氏の「学生を路頭に迷わせた『失敗』の履歴」の〈文科省は大学設置基準を厳しく、大学は拡大路線を見直すべき〉、西田亮介・慶大助教授の「若手学者の悩み多き日常」の〈科学や学問の発展をめざすためには、豊かなコミュニティーをつくる発想が不可欠〉は、それぞれ時代を着実に捉えていた。
 特集のタイトルだが、06年は「大学の失墜」、07年は「大学下流時代」、08年は「崖っぷち、日本の大学」、09年は「大学の絶望」、今年は「大学の敗北」、来年のタイトルは、どうなるのか。

 「中央公論二月号」
 中央公論新社
 03―3563―2751
 定価900円。

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