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平成22年1月 第2387号(1月20日)

干支の弁
  教員養成六年制(修士)に思う

(学)明浄学院(大阪観光大学)理事長 三上貴彦

 我が国の初等中等教育における教員養成は、今、社会情勢などの変化の中で、多くの課題に直面し、その解決のために、教職大学院制度の新設や教員免許更新制の導入などの改革が行われています。
 このような状況の中で、民主党の政権政策マニフェストに教員養成六年制(修士)が掲げられ、これについての賛否や戸惑いなど様々な意見が出されています。この改革は、教育界はもとより各界へ多大な影響を与える重要な改革であると思われますので、この制度の導入に当たっては、拙速は避け、この改革の意義は勿論のこと、今の時代に求められる教師像や六年間の教育課程の構成、社会的影響などについて、慎重に議論して対応する必要があると考えます。
 教員養成の議論の中で、教育課程については、教科専門科目と教職専門科目とのバランスが重要です。教師が児童・生徒をよく理解し、教育に関して高い見識と実践的指導力をもっていることは大切であり、そのために、教員養成で教職専門科目の教育を重視することは理解できます。しかし、一方で、教科専門科目に関する知識・技能などの習得が軽視されることがあってはならないと思います。教員養成では、幅広い教養と自分の専攻した専門教科について深い専門性を身につけることができるよう、一般教養や教科専門科目の教育に十分な時間を充てた教育課程の編成が望まれます。また、どのような職業にも言えることではありますが、教師は生涯にわたって研修に努めることが大切であります。その意味から、教員養成の議論においては、単に大学等における教員養成のあり方の議論にとどまらず、教員養成制度、免許制度、採用方法、現職教員の研修、待遇、昇進などを総合的にとらえながら、教師としての生涯学習の視点を含めた議論がなされることが必要であると考えます。
 今年が、教員養成六年制の提案を契機として、教職の一層の専門職化を目指した教員養成制度の構築に向けて建設的な議論がなされる年となることを期待します。

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