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平成21年12月 第2383号(12月2日)

大沼会長・記念講演
  私立大学の変遷と針路

 大沼会長は、大学分科会が去る6月に取りまとめた「中長期的な大学教育の在り方(第一次報告)」における@大学教育の構造転換を進めるために質保証システムの構築と量的規模の在り方、Aその検討には多様化・個性化による機能別分化を前提とすること、B大学教育への公財政措置の確保の三点が重要であると指摘している。これら三つの論点を私立学校の未来戦略としてどう展開できるのか、また制度化できるのか、との視点から、前半で主に国立大学の変遷を語り、後半に私立大学の変遷と針路について語った。紙幅の関係から後半の「私立大学の変遷の特質」について講演の概要を掲載する。

 ▽私立大学の変遷
 私立学校については、江戸時代から私塾や寺子屋が多数でき、教育の普及にはすばらしいものがあった。その伝統は明治期に入って近代学校制度に則って私立学校が続々と誕生した。大隈重信の東京専門学校(現早稲田大学)や福澤諭吉の慶応義塾(現慶應義塾大学)であり、そのほか法律専門学校、医学専門学校等が設立され、官立学校と並列して発展した。
 そして、大正7年の大学令により、同9年には旧制の大学として認可され、設置母体も財団法人として認められた。この時代から第二次世界大戦まで多くの私立大学が設立され、旧制の大学・旧制専門学校が100校を超えたが、官立校の3分の1でしかなかった。
 戦後、六三制への切り換え時に、国立大学と違って一校が一新制大学に切り替えられたことにより、昭和24年の新制大学出発時には約90校の私立大学が生まれた。同時に制定された私立学校法に基づき、財団法人から新しい学校法人に切り替えられ、公共性と自立性を柱とする私立新制大学が誕生し、経営の独立性を保障されて活性化し、私学が独自の拡大をする原点となった。
 その後、昭和30年代の高度経済成長期を経て、40年代の第一次ベビーブーム世代が高等教育に入る時期となり、私立大学も飛躍的に拡大した。この時の対応は、専ら市場の動向を見定めた私学関係者が国立大学や既存の大学が対応していない分野に進出するなど新設・拡充され、量的拡大が進んで、国公立・私立の比率が逆転し、フロンティア的役割をむしろ私立大学が担うようになった。
 昭和50年代に入ると、高校への進学率が90%近くになり、大学進学率も37%近くになると、行き過ぎを懸念した関係者が質の維持と量的規制を目的に高等教育機関の計画的整備を開始することになった。
 その結果、私立学校振興助成法が制定され、経常経費の2分の1を目指して私立学校への補助金が公的に支出されるようになり、加えて大学定員の管理等、量的規制や質的水準の確保が図られるようになった。
 一方、旧各種学校は大学や短大で対応し切れない高等教育段階の職業教育や産業教育に対応するものとして専修学校として学校教育法に位置づけられ、そのうち大学や短大段階に相当するものが「専門学校」と呼ばれるようになった。こうして今日の高等教育段階の学校制度が完成した。
 21世紀の今日、高等教育のユニバーサル化が進み、すべてを過去の経験で律することが不可能となり政策の転換再考が叫ばれているのである。
 これからはすべての学校群において、拡大した入学定員を充足することが難しく、欠員を抱える機関が続出し、社会問題となることは必須の情勢となっている。こうして高等教育機関の政策的転換が促され、特に私立学校の針路が難しい課題として残ることになったのである。
 ▽私立大学の針路
 当面の課題として、これから議論し、その針路を明確にすべきことを考える。
 (1)国・公・私立別の機能の明確化
 これまでの経緯を簡潔に表現すれば「国立大学が質的な高度化を中心的に分担し、私立大学は量的な対応を役割の中心とする」結果になっている。このことを是正するか否か、是正するとしたらどんな方向で進めるのか明らかにしなければならない。その概要は、@国立大学は国家全体の見地から国際的競争地位の確立、最先端知識技術の開発、経営的に運用困難な分野などを担う。A公立大学は地域社会の特質に応じて公的資金に依存してもその地域社会のために独自に必要とされる教育機関であること、B私立大学は受益者負担を前提に民間機関でやれるものすべて、一般的な学問研究や産業などに対応した人材育成等を分担する、といった方向を示すことが必要だろう。
 (2)ディプロマシステムの確立の可否
 各高等教育機関が新たに付加すべき社会的機能とそれに求められる能力とは何かを検討し、カリキュラム編成やその学習の在り方を変えることが重要課題。
 (3)高等教育段階の再構築
 過去、欧米の文化を導入する方法での教育を追従するのではなく、専門性の如何を問わずそれぞれの教育機関が創造性や先端性の涵養を課題として取組み、国際的にも学術研究の発信基地を形成すべきである。
 その他、(4)富士山型から八ヶ岳型への変革、(5)生涯学習からの視点、(6)新たなファンディングシステムの確立など、私学振興のための針路を明確にさせ、全力で取組むことが求められている。

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