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平成21年10月 第2377号(10月21日)

私大協会
  大学教務部課長相当者研修会を開催
  「学士課程教育の質の充実」テーマに

 日本私立大学協会(大沼 淳会長)は、去る10月13日から15日まで、浜松市のオークラアクトシティホテル浜松において、平成21年度(通算第47回)大学教務部課長相当者研修会(担当理事=小出忠孝愛知学院大学学院長・学長、委員長=橋本弘一帝恷R大学特別顧問・理事)を開催した。本年度の研修会のメインテーマは、昨年に引き続き「学士課程教育の質の充実」として、経済界や地域の期待に応えられる特色ある教育の実現、グローバル化への対応等、学部段階での教育の根本的な見直しの必要性について研修した。加盟384大学より233大学394名が参加した。

 初日の研修・協議に先立ち、小出担当理事が入試に係るインフルエンザ対策を講じることを呼びかけるとともに「定員割れ等厳しい状況の中、受験生に対し各大学がそれぞれの特色をPRするとともに、学生一人ひとりに実力をつけてもらう教育を施すという課題に取り組んでいかなくてはならない」と挨拶を述べた。続いて、副委員長の安井利一明海大学学長が「社会が高等教育に求めるものは強くなってきている。それに適う質の保証に取り組むためにも研修会を内容の濃いものに」と挨拶を述べた。
 研修・協議に入り、「私立大学を取り巻く諸情勢と今日的課題―高等教育政策の構造転換の視点から―」と題して、同協会本部事務局の小出秀文事務局長と、岡田 誠業務部長が詳細な解説を行った。また、メインテーマの主旨と同研修会の研修目標については、あらためて安井副委員長が解説を行った。
 休憩を挟み、「新しい大学つくりへの挑戦―21世紀社会で活躍する学生を育む―」と題して、静岡産業大学長の大坪 檀氏が記念講演を行った。大坪氏が学長を務める静岡産業大学は、「大化け教育」として学生中心の教育を行っている。学生の自己実現のため、そして地域のためにある大学として、静岡ならではの特色ある教育を行っていることを紹介しながらも、そこに描かれる21世紀型の人材育成のモデルについて述べた。
 一日目の研修・協議が終了すると、夕刻より情報交換会が開催された。
 二日目は、「“学生の主体的な学び”を育む〜学生参加型教育を考える〜」と題したシンポジウムが開催された。関西外国語大学事務局次長の吉川佳孝委員がコーディネーターを務め、講師に神戸大学大学教育推進機構教授の川嶋太津夫氏、パネリストとして、東京電機大学情報環境学部教授の中村尚五氏、山形大学地域教育文化学部教授の小田隆治氏がディスカッションの前にそれぞれ講演した。
 川嶋氏は、高等教育のパラダイムシフト「教育から学習へ」の様相を解説し、学習者中心の授業デザインの必要性を提唱。中村氏は、学生の授業等に対するモチベーション向上等を図るフィードバック型教育を紹介。小田氏は、学生主体のFD、公開性と共有化を特徴とした授業形態といった取組を紹介した。
 「学生参加型教育を考える」と題したディスカッションでは、さきに講演・発表を行った三氏への質疑や意見がフロアから多数寄せられ、それらをもとに活発な議論が交わされた。
 昼食の後、「教育研究の充実強化に向けた大学改革の動向〜平成20年度大学教務に関する実態調査集計結果から」と題した研究報告が行われた。平成21年2月に同委員会が同協会加盟大学に実施した「大学教務に関する実態調査」より、まず、学務・教務・カリキュラム改革の動向について、杉野服飾大学教務部長・教授の白井勝美委員が報告を行った。次に、入試・大学院・生涯学習・国際交流の動向について、東京理科大学学務部長の本山好幸委員が報告を行った。同報告により、私立大学が抱える問題や、今後の課題が浮き彫りになった。
 また、「私立大学における教育の質の向上の現状と提言―日本私立大学団体連合会『質保証の共同作業部会』最終報告から―」と題して、北里大学学長補佐・学長室長の古矢鉄矢副委員長が報告を行った。私立大学における教育の質向上の現状と課題について報告した上で、外部・内部質保証体制の整備、大学間連携の促進が必要である等と述べた。
 二日目最後の研修は、会場を移し13班に分かれて班別研修を行った。学問分野別の班編成となっており、事前アンケートによる協議希望事項を中心に、メインテーマに関る課題、各大学における重要課題等について協議・情報交換が行われた。
 三日目の午前中は、前日に引き続き班別研修が行われ、午後には「学士課程教育の充実に向けた“教職協働”の現状と課題」と題し、立教大学文学部教授の佐々木一也氏が講演した。これまで教職協働の阻害要因として、教員と職員の文化の違いが前提にあったとしながらも、教職員はともに「大学人」として学生を育成するという共通認識を持ち、大学を運営していくというあるべき姿を示した。
 研修が終了すると、安井副委員長の閉会の挨拶で三日間の日程が幕を閉じた。

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