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平成21年10月 第2376号(10月14日)

ワイマン教授(ノーベル物理学賞受賞者)が講演
  京大が“科学教育の未来”でシンポ

 京都大学高等教育研究開発推進センターは、9月25日、同大学において、「学士課程における科学教育の未来」と題したシンポジウムを開催した。
 ノーベル物理学賞受賞者で、世界の科学教育のリーダーでもあるブリティッシュ・コロンビア大学のカール・E・ワイマン教授や、日本の第一線の物理学者らが、自らの実践をふまえながら、科学教育の未来について語り合った。
 ワイマン教授は、自らの名前を冠した「カール・ワイマン科学教育イニシアティブ」を立ち上げ、科学教育の研究と実践に情熱を注いでいる。2001年に、ボーズ=アインシュタイン凝縮に関する研究でノーベル物理学賞を受賞。
 ワイマン教授は、新しい科学教育モデルとして、「学生が何をできるようになったか」という目標から出発し、形成的評価を繰り返しながら望ましい活動を行っていく手法を解説。また、「科学を科学者のように考える」思考とそれを身につける学習プロセスについて、脳研究や認知心理学など科学的アプローチも用いながら研究・実践を行なっていることを紹介した。
 日本での事例として、NPO法人「知的人材ネットワークあいんしゅたいん」理事長の坂東晶子元日本物理学会会長・愛知大学名誉教授と笹尾 登岡山大学教授が発表。坂東理事長は、「文系の学生に、毎回の講義の内容をアルゴリズムで書かせる」「原子核分裂の仕組みを、教室の学生を原子核と見立てて、体験してもらう」など、永年の授業改善努力を紹介。また、笹尾教授は、理科離れや理科嫌いの現状について統計結果を紹介。最後に、理科離れ対策として、「教育により多く人的・予算的資源を配分する、カリキュラムを現状に対応させる」など私案を提示した。
 討議では、「学生の質が変わってきた」という話題に触れると、「時代が変われば学生も変わる。それに合わせてどうしたら学生の良いところを引き出せるかを考えるのが教員の役割」などと意見が出た。その他にも、教育と研究の融合、教員の実践ネットワークの構築、初等中等教育での課題にまで議論が広がった。
 最後に、田中毎実同センター長が、「自然科学は真理を発見し伝えていくが、教育は議論をしながら創っていくもの。今後も議論を深めたい」と締めくくった。

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