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平成21年10月 第2376号(10月14日)

直江兼続の“キャリア”とは?
  キャリアデザイン学会が大会を開催

 日本キャリアデザイン学会(会長:川喜多喬法政大学経営学部教授)は、去る9月26日、27日、千葉県市川市の千葉商科大学を会場に、創立五周年記念第六回大会を開催し、「経済、雇用、教育、コミュニティ:明日への挑戦」をテーマに全国から大学、行政、企業等の関係者が参集した。記念講演ではNHK大河ドラマ「天地人」の時代考証を務める小和田哲男静岡大学名誉教授が直江兼続のキャリア・デシジョンを紹介した。

 同学会は、研究者、学生、実務家、専門家が共同して、新しいキャリアを模索する人々に対し、キャリアデザインの科学を提示することを目的として2004年に組織され、設立四年で約1000人が会員となっている。
 大学のキャリア教育、インターンシップ、就職活動の実践や企業のメンタルヘルス、キャリア発達、キャリア支援者の環境など九部会で研究発表がなされるほか、ワークライフバランスやキャリア教育をテーマにしたシンポジウムなど企画も目白押し。
 記念講演では、歴史に学ぶ「激動期の決断〜兼続のキャリア・デシジョン」と題して小和田氏が登壇。戦国時代は能力本位の時代であり、侍は自分の能力を評価してくれる主を求め、主を転々と変えることが普通であったが、兼続は義を貫き、生涯、上杉家に仕えたことなどを紹介。また、執政としても家臣や民を大事にする政治家であったと締めくくった。
 大会最後の学会記念企画シンポジウム「キャリアデザインを支える力〜教育と社会をつなぐ」では、高等教育と企業の接続が主なテーマとなった。
 まず、パネリストが大学や学生に関する様々な問題点を挙げた。服部春樹イオンリテール株式会社採用部部長は自社の採用基準を紹介。コミュニケーション力やストレス耐性などのほか、「就職に対する考え方」を取り上げ「一番学生が弱い点。これを教えて欲しい」と大学側に注文した。
 次に、株式会社リンクアンドモチベーションキャリアスクールの麻野耕司氏が最近の若者の傾向として、@失敗をすると折れやすい人が多い、A違う価値観と交じり合わない、Bすぐに正解を求めることなどを挙げた。成田康昭立教大学教授は、学生のキャリア発達と大学教育がかみ合っていないことも問題。キャリアデザイン以前に、学生がデザインする主体になりきれていないと述べた。
 最後に川嶋太津夫神戸大学教授が、中教審の政策、世界的な傾向により、学習成果が重視されていること、そのために大学が取り組まなければならないこと等を紹介した。
 質疑応答では、大学人や企業人に社会人基礎力はあるのか? 企業は個性重視といっている割には、画一的な優秀さを求めていないか?など、本質的な議論が飛び交った。最後に、パネリストから「社会人基礎力によって、学歴社会ではなくなることを期待したい」「大学とは何をするところか、を大学内部で徹底的に話し合うべきだ」等とコメントがあって終了した。

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