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平成21年7月 第2368号(7月22日)

職業教育は従来の制度内か新しい学校種か枠組を審議
  キャリア教育職業教育特別部会が経過報告(案)

 中央教育審議会のキャリア教育・職業教育特別部会(部会長=田村哲夫渋谷教育学園理事長)は、去る7月15日、第12回会合を開催し、「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」(審議経過報告(案))を審議し、中間報告として取りまとめることになった。

 同報告(案)によると、近年の若者は勤労感・職業感の形成など、社会的・職業的自立、社会・職業への移行に向けた準備が不十分なために、厳しさを増す企業の若年労働市場に直面し、結果として、およそ60万人に及ぶニートや170万人とも言われるフリーターの存在、そして、高い離職率(中学校卒で約七割、高等学校卒で約五割、大学等卒で約4割もが就職後の3年以内に離職)等といった状況が生じている。
 次代を担うべき若者のこのような状況は、人材こそ最大の資源である我が国にとって、危機的な状況と言える。今こそ、社会的・職業的自立に必要な能力等を身につけさせることが急務となっていることから、高等学校卒業後の進路としての職業実践的な教育に特化した枠組みについて、次のようなイメージを提示している。
 e教育課程=▽実験や実習など、職業実践的な演習型授業の割合を重視(例えば約4〜5割程度)、▽関連分野の企業等への一定期間にわたるインターンシップの義務づけ(実施体制の在り方は今後検討)、▽教育課程の編成過程における社会(関連分野の企業等)との連携・対話の制度的確保を図る。
 e教員資格・教員構成=実務卓越性(実務知識・経験の有無、職業資格等)を有する教員を一定割合求めるなど、実務経験等を重視する。
 e対象者=高等学校等の卒業者。生涯学習ニーズにも対応。
 e修業年限=2年もしくは3年の課程、または4年以上の課程。
 eその他の校舎、専任教員数等の基準=大学・短期大学等における基準を基本とする。
 このような枠組で育成する人材としては、ハードウェア・ソフトウェアの設計・開発、デジタルコンテンツの開発、電子制御・ハイブリッドエンジン等の技術進歩に対応した自動車整備分野、バイオテクノロジー分野におけるソフトウェアを用いた生命情報の処理、知識・技術の高度化・専門分化への対応が必要とされ、既に職業に就いている者に対して更なる教育プログラムの提供が求められる分野などを例示している。
 同特別部会でのこれまでの審議経過の中で、こうした教育プログラムの制度化に当っては、従来の大学制度の枠組の中での検討も行われてきたが、大学・短期大学等とは別の新しい学校種としての検討の方向で進められようとしている。
 しかし、新しい学校種が実現すると、これまでの6・3・3・4制の単線型であった学校体系の大きな転換となる可能性があり、制度面・実体面での既存の大学等との関係をどう整理するのか、また、社会的な認知が適切になされるかといった多くの課題が残る。
 一方、今後は、既存の大学・短期大学等における職業教育の充実方策も含め、総合的な検討の必要もある。
 なお、同報告(案)は小学校・中学校・高等学校等における職業教育の検討を深めるとともに、家庭との連携や社会・職業への移行後の生涯にわたるキャリア形成支援等についても併せて検討するよう求めている。
 今後は、具体的な制度設計など更に議論を重ね、年末にも答申を取りまとめる予定である。

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