Home日本私立大学協会私学高等教育研究所教育学術新聞加盟大学専用サイト
教育学術オンライン

平成21年5月 第2359号(5月20日)

FDプログラムを体系化する FDマップガイドラインを作成

 国立教育政策研究所のFDer研究会は、このたび、「大学・短大でFDに携わる人のためのFDマップと利用ガイドライン」を作成した。同書は、FD担当教職員(ファカルティ・ディベロッパー:FDer)等に、FDの目標や実施方法、成果等について一定の枠組みを提示するもの。特徴は、「FDプログラムの体系表(FDマップ)」を利用する点。この「FDマップ」の概要を解説する。

 FDマップは、大学教育に携わる教員を対象とする「FDプログラム」として想定されるプログラムを体系的に整理し提示したもの(表参照)。
 「FDプログラム」を実施する対象を「ミクロ・レベル(授業・教授法の開発)」、「ミドル・レベル(カリキュラム・プログラムの開発)」、「マクロ・レベル(組織の教育環境・教育制度の開発)」に分類している。各レベルにおいて、能力開発の段階(フェーズT〜W)に応じた目標・評価の指標例・実施方法の例を明示している。
 FDerが、FDマップを活用することで、この三つのレベルを含む「FDプログラム」を振り返ったり、支援・促進が必要になる対象を明らかにしたり、「FDプログラム」を開発するための課題に気付いたりすることができる。さらには、他機関と共同して「FDプログラム」を企画・運営することを促進し、今後の方向性を検討する指針となる。
 ただし、人事、財政、学習環境などを含むFDに関するあらゆる事象を対象とするものではなく、FDを目的として設計された「プログラム化したFD」に焦点を当てている。
 また、この枠組みは、大学教員のキャリア開発の体系図としても利用できる設計である。
 FDマップを利用する手順は、@理念の確認、A組織の確立、B現状の分析、C目標の設定、D方法・手段の設定、E財政の確立、F人員の採用と研修、G施設・設備、教材、広報手段の提供、H協力体制の確立、I評価の定着化の流れに沿って可能な項目から実現できるように実施していく。
 特に「C目標の設定」は、FDマップを活用しながら、フェーズT〜WのW領域によって目標を「〜〜ができる」という形(例えば、「ミクロ・レベル」のフェーズTでは、「教員の業務として授業の運営及び改善があることを説明することができる」など、フェーズUでは、「授業を運営するための基本的な方法をもとに、担当する科目の運営計画を作成することができる」など)に明文化することが重要となる。
 もちろん、FDマップに提示した全てのプログラムを一律に実現することは難しい。全体的な枠組みを意識した上で、各大学のニーズや人的・物的資源に合わせて取捨選択することが推奨されている。また、目標達成の手段を立案するため、より具体的な目標を設定し、実施計画を作成することが推奨されている。
 なお、同研究所ではFDプログラムを企画する具体的な手順等を解説したハンドブックも刊行を予定している。

Page Top