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平成21年3月 第2353号(3月25日)

12大学法人「運営に影響」 「資産運運用アンケート」の調査結果公表

 日本私立学校振興・共済事業団(鳥居泰彦理事長)は、世界的な金融危機の中での大学法人の経営相談充実のため、また、影響を受けた学校法人支援のため、去る一月、「学校法人における資産運用アンケート」を実施し、このほど回答のあった四四一大学法人、九七短大法人の調査結果を公表した。

 昨年末から、大学の資産運用が大きな問題となっている。特に、元本保証のないデリバティブ(株式・債券・為替などの金融商品から派生してできた商品)取引を行っている学校法人が、昨今の大幅な時価の下落と変動によって、多額の評価損が生じた結果、追証(損失が生じ、委託保証金等の担保不足を支払うもの)を求められる事態が起こり、その結果、取引を手じまいすることによる多額の資金損失が生じた。中には、自己資金では支払い切れずに、校地校舎を担保に入れるなどして、多額の借り入れをした学校法人もある。
 また、有価証券で資産運用している学校法人が、時価の下落により多額の評価損をかかえている。
 ●アンケート実施法人
 対象法人数(回答法人数、回答率)=大学法人五四一法人(四四一法人、八一・五%)、短大法人一二七法人(九七法人、七六・四%)で、合計六六八法人(五三八法人、八〇・五%)
 ●アンケート内容
 (1)平成二十年度の資産運用の方法、(2)向こう五年間程度の期間、設置する大学等の今後の教育研究活動や法人運営にどのような影響があるか。
 ●調査結果の概要
 大学法人の資産運用状況は、預貯金・債券・投資信託・株式の順であり、債券でも元本保証を前提とした「満期保有目的」のものが圧倒的に多い。デリバティブ取引を行っている法人は六五法人(一四・七%)だが、一部に「リスクヘッジ目的」以外の商品を保有している法人も見受けられる。今後の教育研究活動や法人運営への影響は、大部分の法人が大きな支障は生じないと回答している。
 短大法人の資産運用状況は、預貯金の回答割合が他の金融商品と比べて大幅に高いことから、比較的安全性の高い資産運用を行っていることがうかがえる。
 大学法人における運用金融商品別の資産運用状況の詳細は次のとおりである。
 (1)預貯金=四〇六法人(九二・一%)
 (2)債券=三五三法人(八〇・〇%)/運用法人数の多い順に、@国債二三七法人(五三・七%)、A社債一九〇法人(四三・一%)、B仕組み債〈元本保証あり〉一八八法人(四二・六%)、C地方債一五四法人(三四・九%)、D外債〈円貨建〉一一三法人(二五・六%)、E仕組み債〈元本保証なし〉一〇四法人(二三・六%)、F政府保証債一〇一法人(二二・九%)、G財投機関債七四法人(一六・八%)、H金融債七〇法人(一五・九%)、I外債〈外貨建〉六三法人(一四・三%)など。
 (3)金銭信託〈元本保証あり〉四〇法人(九・一%)
 (4)金銭信託〈元本保証なし〉二二法人(五・〇%)
 (5)投資信託一四五法人(三二・九%)
 (6)株式一三一法人(二九・七%)
 (7)デリバティブ取引〈主にリスクヘッジ目的〉=六五法人(一四・七%)/@金利スワップ取引四一法人(九・三%)、A通貨スワップ取引三一法人(七・〇%)など。《(注)スワップ取引とは、決められた条件により、一定期間にわたってキャッシュフローを交換する取引。金利スワップは同一通貨のキャッシュフローの交換、通貨スワップは円とドルなど、異なる通貨のキャッシュフローを交換するもの》
 大学法人のうち教育研究活動及び法人運営への影響については、(1)今後の教育研究活動への支障について、@全く支障がない、または、ほとんど支障がない四二八法人(九七・〇%)、A大きな支障が生じる恐れがある、または、大きな支障が生じている一三法人(三・〇%)であった。また、(2)当面の法人運営への支障については、@全く支障がない二四三法人(五五・一%)、Aほとんど支障がない一八六法人(四二・二%)、B支障がある一二法人(二・七%)であった。

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