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平成21年3月 第2351号(3月4日)

「大学での職業教育重視を」キャリア教育職業教育めぐり多様な意見

 中央教育審議会キャリア教育・職業教育特別部会の第二回会合が去る二月二十四日に開かれ、第五期中教審としての初会合ということから、部会長には前期に引き続いて田村哲夫氏((学)渋谷教育学園理事長)を選任するとともに、副部会長には木村 孟氏((独)大学評価・学位授与機構長)と浦野光人氏((社)経済同友会副代表幹事)が決まった。また、委員は前期からの留任とし、専門委員を若干名任命することとした。
 田村部会長の挨拶の後、事務局より前回の会合で出された委員からの意見を取りまとめた主な論点が説明された。
 (1)基礎的・汎用的能力の明確化、発達段階に応じた育成=@キャリア教育について、自己実現からのアプローチに偏っていると指摘されているが、社会との関わりからのアプローチとの関係をどう考えるべきか。A学生・生徒に求められる基礎的・汎用的能力として、コミュニケーション能力や粘り強さ、課題発見能力等があげられているが、発達段階ごとに、どの程度の水準を求めるのか。また、その到達度をどう評価するのか。B職業倫理や望ましい職業観、労働者としての権利等の基本的な知識を身につけさせる方策は何か。家庭や地域の役割分担等どのような方策が考えられるか。
 (2)後期中等教育における職業教育の在り方=@生徒の社会・職業への移行や高等教育との接続、社会や保護者・生徒のニーズへの対応など、どのような課題があるのか。国の果たすべき役割をどう考えるか。A普通科の職業教育について、現状及び制度面での課題、今後の改善策をどう考えるか。B専門高校の規模縮小の中での職業教育をどう考えるか。特に、高等教育機関との接続や専攻科の位置づけの制度面での課題は何か。
 (3)高等教育における職業教育の在り方=@学生・生徒の社会・職業への移行や後期中等教育との接続、社会や学生・生徒のニーズへの対応等の課題は何か。A職業教育における各高等教育機関(大学、短大、高専、専門学校)の役割・機能分担等をどう考えるか。併せて国の果たすべき役割は何か。B職業教育体系の確立や、職業教育に特化した新たな高等教育機関の創設について指摘されているが、その必要性、意義、制度的な課題等についてどう考えるか。
 これらの論点を中心に、各委員から多様な意見が出された。「日本は高等学校の普通科に偏重し過ぎている。工業科、商業科等の実業高校を拡充すべきだ」「キャリア教育・職業教育にとって、学校と地域が一体となった体験型プログラムが、コミュニケーションの中で自分で考え、社会の仕組みを知っていく上で大事」「汎用的能力の明確化が必要であり、家庭や学校において、何をどこまでやるのか具体化が求められる」「ものづくりの視点から考えると、“高い専門的技能のある人材、基礎が十分で全体をまとめ上げられる人材、基盤をしっかり支える人材”をバランスよく育成できるような制度が必要」など、多岐にわたる問題点が述べられた。
 これらの意見を踏まえて論点を整理した上で、今後は作業部会等も設置して具体的にアプローチしていくことになった。

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