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平成21年3月 第2351号(3月4日)

私大経営問題協議会開く 理事長など対象に研究・協議

 日本私立大学協会(大沼 淳会長)は、去る二月二十六日、ホテルメトロポリタンエドモント(東京・千代田区)で、平成二十年度(第一回)私立大学経営問題協議会を開催した。加盟三八四大学から、一八九大学一九一名が参加した。

 同協会の私立大学基本問題研究委員会(担当理事=黒田壽二金沢工業大学学園長・総長、私大経営WG小委員長=中村量一中村学園大学理事長)は、私学振興課題が一層の厳しさを増している状況を踏まえ、学校法人や私立大学の在り方、教育振興基本計画や規制改革対策、大学の社会的責任等の基本問題について、協議・研究を行ってきた。中でも重点課題として、厳しさを増す私大経営の問題を協議する場として、私大経営WGが中核となり、今年度新たに同協議会を開催した。実際に、学校法人を運営し、経営の舵取りをする理事長をはじめ、経営に携わる理事を対象に、経済情勢が厳しい昨今、危機的な局面をどのように乗り切るか、今後も回を重ねながら私大経営に資する協議を行っていく。
 開会に当っての同協会の小出秀文事務局長の挨拶の後、中村小委員長より、「教学と経営は両輪。当協会において、教学の面では『教育学術充実協議会』が開催されている。その一方として、経営面での同協議会を充実させ、私学の発展に寄与していきたい。危機的な不況下において、経営の体質をいかに強化するかが喫緊の課題。“問題経営”とならないよう気を引き締めていきたい」との挨拶があった。
 協議に入り、「文部科学省の大学政策」と題して、コ永 保文科省高等教育局長が、主に大学の質保証、機能別分化、量的規模等について講演をした。
 質保証システムの強化については、明確な大学の「質」とは何かを評価基準に則って、社会に示すこと。そのために、大学制度において、最低基準を定める「設置基準」、最低基準の担保のための「設置認可審査」、設置後の確認のための「認証評価」が三位一体となり、加えて公財政支出により支えていく新たな公的質保証システムの構築が必要である、と述べた。
 経営問題まで踏み込んでいくと、大学の機能別分化を促進するとともに、連携協力を推し進める方策も必要であると言及。 “経営資源を共有する”という視点に立ち、多数の大学が、それぞれの機能・役割をもって連携し総体を成す、それが世界に向けた日本の大学の在り方だと述べた。
 大学教育の量的規模については、公財政支出の積算を踏まえ、留学生・社会人の受入れや、国際的進学率動向を勘案した上で妥当な規模を根拠とすること。収容定員適正化を前提に再考する必要があると述べた。
 休憩を挟み、「私立大学の経営課題」と題して清成忠男法政大学学事顧問が講演した。
 経営問題に関しては、現在の不況の中で企業の危機意識に対して、大学は意識が希薄である。大学は、イノベーションを起こすために、新たに社会から求められる人財の育成が必要であると述べた。
 新たな人財を育てるという社会背景は、変革に挑戦する人財、多様なリーダーと専門家、考える人財といった、個々が責任を持って行動する時代であり、組織が個人を丸抱えする時代ではないことを示唆した。
 私大経営の厳しい現状に対し、資源の選択と集中、教育の独自性、FD・SDの促進の三点を挙げた。また、個別の取組には限界があり、大学間の戦略的連携により推進することを強調するとともに、今が改革断行の好機であると述べて締めくくった。
 続いて、「大学の評価文化形成に向けて〜機関評価の現場から」と題して、佐藤登志郎(財)日本高等教育評価機構理事長が講演した。
 評価文化の形成に至るまでの経緯、評価システムの概要、評価基準、また、実際の現場から問題となったケース等を解説し、平成二十一年秋が認証評価第一期申請の最後のチャンスであることをあらためて述べた。
 最後に、「私学経営の諸問題」と題して、黒田担当理事が講演した。
 変革の時期を迎えた私大は、運営上いかに対応するべきか。それには、大学がミッションを確立すること、地域特性を認識すること、社会からの需要予測、学校法人のガバナンス強化等が重要である。大学経営の主体は理事会であり、意志決定は理事長が行うということを自覚すべきであると強調した。
 質の保証と経営の健全化、そしてそれをいかに開示していくか。説明責任のもと、組織化した自己点検・評価の体制構築へと意識改革を行うことが必要である。そのためのトップのマネジメント、実行する組織づくりで大学が変わる、と締めくくった。
 協議が終了し、場所を移して情報交換会が行われ、全日程を終えた。

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