Home日本私立大学協会私学高等教育研究所教育学術新聞加盟大学専用サイト
教育学術オンライン

平成21年2月 第2348号(2月11日)

東大・野村證券が財務フォーラム 資金調達・運用の目的明確化がカギ

東京大学大学総合教育研究センターと野村證券株式会社は、去る一月三十日、東京都内において、第二回大学経営フォーラム「わが国大学の財務基盤強化―説明責任を踏まえた寄付募集・資金運用管理に係る方針・体制のあり方を中心に」を開催、このたび同大学がとりまとめた資金調達・運用に関わる学内ルール・体制等の調査報告や早稲田大学と千葉大学の事例紹介などが行われた。

 公財政支出の削減傾向の中、大学が教育研究活動の維持向上を図るには、必然的に資金調達と資産運用が必要となるが、「何のために」行なう資金調達・運用なのかを明確にすることが成功のカギとなる。また、学内ルールや学内管理体制を整備し、公正性・透明性を確保し、ステークホルダーへの説明責任を果たさなければならない。私立大学は資金調達・運用において特段の制約はないが、運用の安全性を重視することが求められることは言うまでもない。
 大学が遵守すべきこうした“最低条件”について、まず、文部科学省の久保公人大臣官房審議官から解説があった上で、片山英治東京大学総合教育研究センター共同研究員から、「大学の資金調達・運用に係る方針・体制の在り方について」の報告があった。
 私立大学の運用損失を巡る報道や寄付募集の実績の低さなどを背景に、大学の寄付募集・運用について、米国大学と比較しながら、資金運用管理に係る方針・体制についてまとめた研究を発表。日米文化の違いという背景があるとしても、米国大学では寄付受入れ方針・組織構造・データベースの充実・戦略的計画が明確である場合が多い。
 また、資金運用管理についても、米国では、基金の運用目的・運用益の使途が明確で、中長期の視点で運用実績を評価、運用責任が明確であるなど、その方針・体制についても日本は大きく水をあけられている。
 今後の資金運用方針・体制について、片山氏は三つの戦略があると語る。まず、利子・配当を収益の源泉とする従来のパターン。次に収益の源泉がキャピタル・ゲインも含むトータルリターンであるアメリカ型のパターン。最後に、その中間のパターン。この中から、各大学の哲学に沿って運用していくべきだとした。
 続いて、福島健郎千葉大学理事、黒水治雄早稲田大学財務部長、今泉柔剛文部科学省高等教育局大学改革推進室長、松澤 登東京大学本部経理グループ長をパネラーに迎え、パネルディスカッションに移った。
 特に、卒業生からの寄付募集について、黒水氏は、「寄付者に一番喜ばれたのは、寄付を基にした奨学金や研究費をもらった学生からの近況や感謝の手紙」などと紹介。福島氏も、「大事なのは共感を得ること」等とし、卒業生とのリレーション・絆の構築の大切さを指摘した。
 フロアとのディスカッションでは、「高リスクだから駄目なのではなく、各大学に運用の哲学があるかどうかだ」、「職員は二〜三年で異動するから、専門人材が育たないのが課題だ」などの議論が交わされた。

Page Top