Home日本私立大学協会私学高等教育研究所教育学術新聞加盟大学専用サイト
教育学術オンライン

平成21年2月 第2346号(1月28日)

「アメリカ大学NOW 日本⇔NY」 大学事情を現地からレポート
  ブランド戦略の鍵にぎる購買部 7000人集まる大学関連商品(グッズ)見本市も

 「教育学術新聞」編集部では、大学改革の参考にしてもらうことを目的に、大学改革の先進国であるアメリカ合衆国の大学事情を紹介する。このたびは、米大学で充実する大学購買部、関連商品などの最新状況を取材した。なお、日米間の大学コーディネートに実績のある「UJHE(US Japan H.E. NY, Inc.)」と提携し、現地取材等を通して事例を提供してもらった。

 アメリカの大学にとって「ブランド戦略」は、経営上、重要な位置におかれている。教育方針の改善、大学施設の充実といった世界各国で行われているブランド向上策の他に、アメリカの大学ブランド戦略における特筆すべき点は、シンボルカラーやロゴマークの徹底を図るために、大学購買部を利用した関連商品の販売とそれを利用した広報戦略にある。
 特に都市部では、他大学との差別化を図るため、独自のブランド戦略が行われている。例として、デザインに工夫をこらした、街中を走る大学所有の送迎用循環バスやバス・電車などの公共の交通機関、施設での広告活動の規模の大きさがあげられる。また、大学関連商品を身にまとい登下校する学生など、関連商品のロゴマークが細部にまで広がり、広告活動の一環となっている。
 「大学購買部の最も重要な役割は、授業の必需品を販売することであり、学生により良い大学生活を送らせることである」とThe ^nNational Associationof College Store (NACS)の広報部長、チャールズ・シュミッド氏は話す。その上で「もう一つの重要な役割として、大学名や校章の入った関連商品を販売することで、大学進学を考える生徒や保護者など、将来的に大学と関わる可能性を持つ学外の人々に対しての広告効果を生み出すことである」と強調する。
 ブランド向上の一端を担う大学関連商品の販売を、より円滑、効果的に機能させるためのサポート、プログラムそしてサービスの提供を行っている組織がNACSである。オハイオ州に本部を置き、アメリカを中心に世界三四か国以上にわたり、約三一〇〇の大学を会員に持っている。
 NACSは、一九二三年ニューヨークにおいて、大学購買部が持つ情報や経営方針の共有に意義を認めた二四の大学の購買部によって組織されたThe CollegeBookstore Associationを前身に、一九三二年に現在の名称に変更。その後一九四九年、本部をオハイオ州に移した。
 「私たちの使命は、大学購買部の総括的な役割を担う指導者の養成であり、運営上の商品の供給源になることだ」とシュミッド氏は力説する。
 主な活動は、大学購買部のあり方の定義付けやモデルとなる商品の開発、そしてそのガイドラインに従うプログラムの提供。大学購買部が運営上携わるあらゆる分野の会社や組織をNACSの会員とし、一〇〇〇を超える会員から提示されているサービスや商品の提供をするのである。
 さらに、大学購買部間の意見・情報交換の場の提供などがある。最近の動向として、社会の急速なデジタル化に直面して、大学購買部が対応するための施策を行っている。
 シュミッド氏は続ける。「近年の傾向としては、従来の教科書販売中心では減収を強いられているから、コンピュータ関係に加え、アクセサリー、化粧品、そして洋服などの販売も開始している。さらに、マーケティング戦略の一環として、無料製品の配布や環境問題を意識した製品も販売している」。
 ユニークな事例として、ニューヨークの美術大学、School of  Visual Arts(SVA)を挙げたい。
 SVAは、一九四七年に創設されたCartoonistsand Illustrators^nSchoolを前身とし、一九五六年にSVAに改名、現在ではニューヨーク・マンハッタン内に二つの拠点を置く。Association ofIndependent Collegesof Art and Designのメンバーとして、アメリカを代表する美術学校の一つとなっている。
 学外関連部長のサム・モダンスタイン氏は、「関連商品の販売は、結果として大学名やロゴの露出を増やすことになり、大学を知ってもらう最善の方法の一つだ」との認識を示す。
 SVAは独自のブランド戦略を取る。コンピュータ関連の製品を扱うコンピュータストアを大学敷地内で運営し、店舗内には従来どおりのカバン、衣服など、大学の校名・校章の入った製品の販売も行っている。
 これは、美術大学の特異性から生まれたものである。社会の急速なデジタル化、芸術へのコンピュータの登場に応じて、美術学生のコンピュータの多用化を捉えた結果である。美術大学の特性を生かしたこの形態がまた、新たなブランド戦略の一つとして機能しているのである。
 「独自のブランド戦略の一環として、学生を対象に年に数回、大学関連商品のデザインコンテストを開催している。これは、学生達が何を求めているかという学生の流行を知るだけでなく、学生達が制作過程で、需要のある製品を創作することを理解してもらう意味合いも含んでいる」とモダンスタイン氏は述べる。
 NACSやSVAは、それぞれ異なったブランド戦略を行っているが、共に大学関連商品から生み出される広告効果を大いに認めている。大学の校名・校章の入った数多くの製品を広く活用することで、ブランドの向上に努めているのだ。
 さらにNACSでは、大学関連商品に関わる各団体の交流の場として、アメリカで最も大きい見本市の一つであるCampus Market Expo(CAMEX)を年に一度開催している。毎年、大学購買部、関連企業など、約七〇〇〇人もの参加者を数え、新製品の紹介、現在の流行、今後のトレンドを知る上で最も重要なイベントとなっており、各関連団体の情報交換の場としても活用されている。
 「大学購買部の発展につながる取り組みの一つとしてCAMEXの開催に力を注いでいる。日本の大学からも参加がある。二〇〇九年は三月十三日から十七日まで、カリフォルニア州アナハイムで開催される」とシュミッド氏は紹介する。
 ブランド戦略を先導する広告効果や学生数増加につながる潜在的な効果は、大学購買部の担う役割が増大するにつれ、今後のブランド戦略の可能性、そして大学経営の将来性を拡大することとなる。こうした大学購買部のあり方が、大学ブランド発展への一端と直接的に結びつくのである。
 最後に、シュミッド氏はこう締めくくった。「大学購買部は大学にとって重要な役割を担っており、故に多くの学長は、大学購買部は《大学の正門》であると高く評価している」。

Page Top