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教育学術オンライン

平成21年1月 第2345号(1月21日)

新刊紹介

 「常識にとらわれない生き方」 河島信樹著

 昨年のノーベル賞(物理学、化学)を日本人四人がとったことで“理系”が元気になった。予備校の模試で名古屋大理学部の志願者が前年比三五%増になるなど、いい意味で喧しい。
 理系のバリバリ、日本の宇宙開発の第一人者が書いた文系読者向けの本?〈日本の前途は多難で激動の時代が待ち受けている〉と提起し、〈常識にのっとった生き方が一番正しいとされていたが、本当にそれでいいのか?〉と問う。
 第一章「常識にとらわれなかった人々」から「老化防止法―アンチエイジング」の第十二章まで“間違いだらけの常識論”のオンパレード。▽間違っていた常識、▽時代とともに変わっていく常識、▽常識は地域で異なる…各章とも具体例を細かく紹介している。
 もちろん、理系の話もある。若者の理工系離れについて〈(責任の大きな部分が)受験を前提とした高校教育にある。実験をし、起こる現象を目で確認し、原理や法則を理解していく、それに興味をそそられていくのが本来の理科教育〉という本家の指摘は鋭く重い。
 読みながら、うなづきっぱなし。黄昏を迎えた文系には、老化防止法の項にあった〈『一日一五分を大事にせよ』。何でも一日に一五分練習すれば、私のような古希を過ぎた者でも確実に進歩する〉が琴線に触れた。大事にしたい言葉だ。
 〈私は還暦のとき趣味の集大成として能『天鼓』を舞って、たくさんの人にみてもらいました〉なんて、さりげなく書く。近畿大学リエゾンセンター副センター長としてレーザーエネルギー伝送のヘリ開発などに情熱を燃やす。異能な理系学者の常識からの跳躍論。傾聴に値する論だと思う。

 「常識にとらわれない生き方」
 河島信樹著
 PHP研究所
 電話 03-3239-6233
 定価 1,400円(税別)
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