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平成21年1月 第2344号(1月14日)

強く明るい日本の未来のために

 文部科学大臣 塩谷 立

 平成二十一年の新春を迎え、謹んで新年のご祝辞を申し上げます。
 私は、昨年九月に発足した麻生内閣において、文部科学大臣を拝命いたしました。現在、我が国は一〇〇年に一度の世界的な経済危機に直面し、雇用をはじめ国民生活に直結する数々の課題を抱えています。また、世界に目を向ければ、気候変動や資源・エネルギー問題、貧困問題など、地球規模の課題が山積しています。これら課題の解決には、社会の担い手となる人材の育成とイノベーション創出、そしてその基盤となる教育や科学技術の振興が不可欠であります。私は、このような信念のもと、本年も、文部科学省が担当する教育、科学技術・学術、スポーツ、文化の各般の振興を通じ、「強く明るい日本」の実現に全力で取りくんでまいります。
 昨年は、約六〇年ぶりに改正された教育基本法に基づき、初めての教育振興基本計画を策定しました。計画では、目指すべき教育の姿を明らかにするとともに、その実現のための具体的施策を体系的に示したところです。今後、計画を着実に実行することが、私の最大の使命と考えております。
 なかでも、「読み、書き、そろばん」といった基礎学力の定着、道徳教育の充実、体力の向上、職業観・勤労観の育成など、子どもたちに「生きる基本」を徹底していくことが重要と考えます。新しい小中学校学習指導要領が本年四月から算数・数学、理科を中心に一部先行して実施され、また高等学校及び特別支援学校の学習指導要領も改訂を目前に控えています。今後、教職員定数の改善や、外部人材の活用、教材作成への支援など、教員が子ども一人ひとりと向き合う環境をつくりつつ、指導要領の円滑な実施に努めてまいります。
 また、昨年は、大分県において教員採用に関わる汚職事件が起こり、公教育への信頼が大きく揺るぎました。今後、教育委員会が本来の使命を果たすべくその機能を強化するとともに、本年四月から実施される教員免許更新制の円滑な実施などを通じ、教員の資質向上と公教育への信頼の確保に取り組んでまいります。
 昨今の厳しい経済状況を踏まえ、外国人も含めた手厚い支援が必要な子どもたちへの支援を充実するとともに、奨学金や幼稚園就園奨励費の充実などを通じ家計の教育負担の軽減を図り、学びの機会を確実に保証してまいります。
 学校施設については、児童生徒の安全確保に加え、地域住民の応急避難場所ともなるものであり、今後、地震による倒壊の危険性の高い約一万棟の耐震化を一層加速するとともに、武道場の整備に取り組んでまいります。
 大学教育については、経済や社会情勢がグローバルに変化する中、その国際競争力の向上と、質の保証に向けて取り組むことが必要となっています。国立大学法人運営費交付金や私学助成など大学の基盤的経費を確保するとともに、現在、中央教育審議会において審議されている「中長期的な大学教育の在り方」を踏まえ、大学の機能別分化に応じた支援、「留学生三〇万人計画」の推進などに努めてまいります。また、喫緊の課題である医師不足解消のため、医学部の入学定員を増員するとともに、周産期医療に関する人材養成の強化等によって大学病院が地域医療の拠点となるよう整備を進めてまいります。さらに、学生の内定取消問題に対応するため、大学の就職支援活動を応援してまいります。
 昨年の四名の日本人研究者のノーベル賞受賞は、基礎科学の分野における日本の貢献の大きさを世界に示しました。人類社会に対する貢献を将来にわたって続けるとともに、我が国の明るい未来を切り拓くためにも基礎科学力の一層の強化が必要です。昨年末には、これまでのノーベル賞受賞者や有識者の方々から頂いたご意見を基に「基礎科学力強化総合戦略構想」をまとめました。本年は、この構想に基づき、研究者への支援、研究環境の整備や創造的な人材の育成などに精力的に取り組んでいきます。
 また、科学技術創造立国として、我が国が持てる能力を最大限に発揮し、イノベーションを創出・促進しうる環境の整備が重要です。第三期科学技術基本計画に基づき、世界をリードする優秀な人材を養成・確保し、その能力が十分に発揮できる環境や、若手や女性、外国人など多様な人材が活躍できる研究環境の整備に努めます。また、大学や研究機関等の先端的な研究施設の整備・充実や共同利用・共同研究の促進、科学研究費補助金など競争的研究資金の拡充、世界最高水準の研究拠点の整備に努めるとともに、産学官連携の強化や地域の活性化にも資する知的クラスターの創成等に努めます。
 ライフサイエンスやナノテクノロジーなど各分野の研究開発については、安全・安心の確保など社会・国民のニーズの高いものや、国際競争力の強化、国際社会への貢献に資するものなど、選択と集中を図りながら戦略的に推進します。宇宙輸送システム、次世代スーパーコンピュータ、海洋地球観測探査システムなどの国家基幹技術の研究開発についても、着実に推進します。また、「科学技術外交」を強化するため、地球規模の課題への貢献や先端分野での戦略的な国際科学技術協力の推進など、科学技術の国際活動を戦略的に推進します。
 昨年の北京オリンピックでの日本人選手の活躍は、国民に夢と感動を与えました。日本人選手が世界の檜舞台で更に活躍できるよう、トップレベル競技者の育成・強化に努め、二〇一〇年のバンクーバー冬季オリンピックに備えるとともに、二〇一六年オリンピックの日本開催を目指して、招致活動を積極的に支援します。また、誰もがスポーツに親しめる環境の整備を進め、生涯スポーツ社会の実現を図るとともに、野外活動の振興や校庭の芝生化の推進など、子どもが「外に出る」活動への支援を強化してまいります。
 文化芸術は人々の心を豊かにし、社会を明るくするだけではありません。文化芸術が持つ創造性は、産業振興や地域活性化に重要な役割を果たしています。経済に逆風が吹いている今こそ、戦略的に文化芸術の振興に取組み、「文化芸術立国」の実現を目指してまいります。
 以上、文部科学行政に対する国民の強い期待を重く受け止め、果断に諸般の課題に取り組んでまいる所存です。皆様のご理解とご支援を賜りますよう、心よりお願いいたします。

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