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平成21年1月 第2344号(1月14日)

[新刊紹介]

「変貌する日本の大学教授職」 有本章 編著

 日本の大学教員が一七万人(〇七年現在)もいることに驚く。終戦直後の一九五〇年は一万一〇〇〇人。「石を投げれば大学教員に当たる時代」と自虐的表現も。
 環境の変化▽大学組織と生活▽学問的生産性と評価▽社会への影響―の四部からなる。一七人の教育研究者らが執筆している。
 本のカバーにある「グローバル化、市場化、知識社会化の進行に伴い、大学教授職は、学問的生産性や人材育成の役割をより強化することが社会から要請されている」というのは執筆陣の自覚か、衒いか?
 一九九二年と二〇〇七年にそれぞれ行った大学教授職に対する調査を比較。この一五年間の間に行われた規制緩和の導入による「第三の大学改革」で、教授職が、どう変貌したかを問う。〈この一五年間に、学問・研究志向が強い日本の大学教員において、研究より教育への志向が多少強まった〉とし、〈それは、この時期にFDが努力義務化、制度化された動きと関係が深い〉という指摘は正鵠を射ている。
 共感したのは「格差」に言及している部分。〈国家政府による高等教育政策は予算削減と競争資金配分の徹底で少数の大規模大学、研究大学のみが生き残る…〉。〈弱小大学の淘汰や切捨て政策は、長い目で見れば亡国の政策である〉とまで言い切る。
 〈格差は大学教員の意識を直撃、疎外、不満、やる気喪失、ストレスを顕現し、大学組織体への失望感や離脱感を強めた〉という認識、いや現実は座視できない。
 これは、終章で〈専門職の追究を標榜する理念の再構築を政策、システム、大学組織体で遂行することで現状を改革すべき〉と “宣言”していることで少し救われている。

 「変貌する日本の大学教授職」
 有本章編著
 玉川大学出版部
 (042-739-8935)
 定価6,000円(税別)
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