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平成20年11月 第2340号(11月26日)

就職部課長相当者研修会を開催 厳しい雇用環境下の就職指導など研修
  「学生の自立促すキャリア教育と就職支援」テーマに

 日本私立大学協会(大沼 淳会長)は、去る十一月十二日から十四日まで、神戸市のクラウンプラザ神戸において、平成二十年度(通算第三三回)就職部課長相当者研修会を開催した。同研修会は、大学教育における学生の就職指導の重要性に鑑み、同協会の就職委員会(担当理事=大橋秀雄工学院大学理事長、委員長=浦田雄司日本福祉大学キャリア開発部次長)が準備を進めてきたもの。本年度のテーマは、「学生の自立を促すキャリア教育と就職支援―学び、働き、生きるを考える―」。講演や各大学の事例発表、希望テーマ別の班別討議、情報交換会などが行われ、加盟大学三八五大学から二〇五大学、二七六人が参加した。

 【第一日目】
 はじめに、大橋担当理事が歓迎の意を述べるとともに「格差の拡大等に伴い、学生の就職形態が正規か非正規かで大きな差が生まれている現状がある。研修会を通して、多くの学びを持ち帰っていただきたい」と挨拶した。
 研修では、はじめに、同協会の小出秀文事務局長が「私立大学を取り巻く諸情勢と今日的課題」と題して、高等教育を巡る環境変化等について述べた。
 続いて、浦田委員長が、「雇用環境を取り巻く諸情勢と就職指導のあり方」と題して、@就職・採用活動の早期化・長期化、A女子学生への結果的差別、Bキャリア教育の導入などの課題を挙げ、多様化する雇用制度、それに対応した就職支援の必要性について述べた。最後に、同氏は「それぞれの大学に相応しいキャリア教育を模索し、学生の就職支援をしていただきたい」と語った。
 その後、二つの講演が行われ、はじめに(株)東洋経済新報社「週刊東洋経済」編集部長の田北浩章氏が「就職指導に役立つ良い会社、避けたい会社―企業の見方教えます―」と題して、講演を行った。
 学生を学問の扉へと導くのは教員、人生の扉は両親、そして社会の扉へ導くのは就職部であると述べた上で、就職部員に必要な知識として欠かせない「会社の見分け方」について、実際に『会社四季報』を用いて具体的かつ詳細に説明した。同氏は、「会社にとって最も大切なのは経営理念」、「学生が理念のない会社で働くのは、何よりも辛いことである」と述べた。
 続いて、「多様な価値観の人々が活き活きと働ける社会づくり―女性活躍推進活動の現場から―」と題して、(株)リクルート就職支援コミュニケーション部ディビジョンオフィサー・リクナビ編集長の岡崎仁美氏が講演を行った。
 はじめに、自身の就職活動を紹介。また、早期化や学生の成熟度低下の問題構造を解説、さらに、企業の求める人物像の固定化・就職活動の一元化等を指摘した上で、教育現場への期待として、@社会の変化を鑑みた教育支援、A社会の実態に即した就職支援、B真のキャリア教育(働く喜びを知らせる等)を挙げた。
 一日目最後の情報交換会では、神戸市内に大学所在の加盟大学(神戸学院大、神戸芸術工科大、神戸薬科大、神戸山手大)より理事長・学長が出席し、講師の田北氏と岡崎氏も迎え、積極的な情報交換が行われ、歓談の輪が広がった。

 【第二日目】
 三大学の事例発表と班別討議が行われた。
 はじめに、「国士舘大学における留学生事情―受入れから就職支援まで―」と題して、国士舘大学鶴川校舎事務組織改革担当部長の渡部雅俊委員が、事例発表を行った。同大においては、平成十四年に21世紀アジア学部を設置、現在、約一三〇〇人の留学生が在籍している。同氏は、教職員が一体となった支援体制を確立することが大切であり、留学生受入れを今後増やしていく大学では、よく検討した上で取り組んでほしいと述べた。
 次に、「熊本学園大学における支援と取り組み―大学と地域との関係(その歴史的伝統を大切に)―」と題して、熊本学園大学就職部次長の桃井芳雄委員が、就職支援の取組みを紹介した。同大学では、学長直轄のエクステンションセンターが資格取得の支援を行っており、就職室が関わる学生が三、四年生のみである現状を述べ、教員と職員による今後のキャリア教育の課題についても触れた。
 続いて、「京都女子大学における学生の就職意識と就職支援」と題して、京都女子大学進路・就職部長の林 照康委員が登壇。同大学においては、実践的キャリア教育の推進が現代GPに採択され、キャリア科目の単位化、キャリア開発委員会設置などの取組みが積極的に展開されていることを紹介した。最後に同氏は、学生への進路指導やガイダンスはスタッフ・ディベロップメントにもつながると述べた。
 昼食休憩後の班別討議は、次の七つのテーマで一四班に分かれ、行われた。@キャリア教育の現状と対策、Aキャリア教育の計画的指導、B雇用情勢の変化と就職指導、C男女共生社会と女子学生の就職、D就職支援のための情報化システム開発と運用、E文系学生の就職指導、F理系学生の就職指導

 【第三日目】
 同協会附置私学高等教育研究所研究員・神戸大学大学教育推進機構教授の川嶋太津夫氏が「学士課程教育とキャリア教育」と題し、大学で育成するコンピテンス(学生の課題遂行能力)等について講演を行った。
 知識基盤社会においては、自分のキャリアを切り開いていくだけのキャリア教育を学士課程の中で行うことが求められており、これまで別々に行われてきた教養教育、専門教育、キャリア教育等が、これからは、授業科目の中で有機的に取り組まれていくべきであると述べた。
 続いて、SBIホールディングス桝纒\取締役執行役員CEOの北尾吉孝氏が登壇。「君子を目指せ、小人になるな」と題して、中国古典から学ぶ人間学について述べた。中国古典は、個人が自分及び社会に対して果たすべき責務と、個人と社会とのあるべき姿を示した教えであると述べ、君子になるための条件を自身の経験等をもとに紹介。具体的には、@正しい倫理的価値観を持つ、A高い志を持つこと、B誠実であるということ、C胆識(勇気ある実行力の伴った見識)を持つ、D人を集める度量の大きさ、E人物の育成能力等について語り、大所高所からの多くの示唆に富んだ話に、参加者は興味深く聞き入った。
 最後に浦田委員長の閉会の挨拶で全日程を終えた。

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