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平成20年10月 第2334号(10月8日)

新刊紹介 「現代思想」の大学特集

 中央公論が年に一度組む「大学特集」は読みごたえがある。内容がタイムリーだし、執筆陣が多彩だ。現代思想九月号の特集「大学の困難」もそうだ。
 なかでも、東京外語大学学長、亀山郁夫の「人文系大学と人文学の将来について」は重い言葉に富む。
 〈日本の大学の将来を決する最大のポイントは二極化と少子高齢化で、強いものはより強く弱いものはより弱く、という状況は今後ますます加速される〉冒頭の現状認識に共感した。
 「人文学は学問の王」と言ってはばからない亀山は〈人文学は、文教予算で、まず、最初削減のターゲットになる〉と憂える。されど、〈GCOEの下位に位置するGP関連の競争的資金は人文学の入り込む余地はある〉という現実派。
 亀山はベストセラーとなったドフトエフスキーの新訳「カラマーゾフの兄弟」の訳者。このブームを、小説は〈(時代を)察知し、連想できる力を鍛える必要がある〉と人文学の可能性に結びつける。時代を鋭く読む学長は頼もしく映る。
 教育振興基本計画策定のさい、安西・慶大塾長らが年間五兆円規模の公的資金投入を提言したことを評価、財務省と文部科学省との対立を〈財務省の論拠は緊迫財政で、理念はない。文科省は理念に目覚めようとしている〉と柔軟だ。
 〈大学運営では、現場をより緊張感を持った集団にする〉〈東外大は小規模な大学だから大胆に改革を進めることができる。そのためには二〇年先を見越せる想像力が必要で、勉強を怠っては何もできない〉と結ぶ。全ての大学にいえる。慧眼の学長の言説。
 

「現代思想 9月号」
 青土社
 営業電話(03)3294-7829
 定価 1,300円

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