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平成20年9月 第2332号(9月24日)

"学習"テーマの研究盛ん

 去る九月三日から五日まで、熊本大学において、教育システム情報学会の第三三回全国大会が開催された。テーマは、「eラーニングで創り出す社会と教育機関の連携」。
 同学会は、教育分野におけるコンピュータ利用等の研究調査、情報交換を行うことを目的に昭和四十九年八月に設立された。
 「教育」と名の付く学会ではあるが、プログラムには「学習」という語が頻出する。中教審の「学士課程教育の構築に向けて(審議のまとめ)」でも盛り込まれた「学習者の視点」「学習成果の評価」といった新コンセプトは、この学会では当然のように議論される。
 eラーニング開発では、学習者の学習意欲が課題となることが多い。必然的に、学習者視点の学習支援を対象とする研究が盛んになる。学生同士の学び合いである「協調学習」や学習者主体の学びを研究する「学習科学」などもテーマとなる。「ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)」という新しいインターネット技術を導入した学習支援に関する発表も多く見られる。
 発表者は教職員・大学院生の他、企業の研究者と多様。三日間の大会では、二五〇件を超える会員の研究発表(一般講演)のほか、学会会長の岡本敏雄電気通信大学教授による基調講演、「eラーニングで大学教育はどう変わったのか、どう変えてゆくべきか」「大学教育と企業の求める人材」と題した二つのパネルディスカッション、文部科学省と経済産業省から講師を招いた特別講演など、広いテーマをもとに、深い議論が行なわれた。
 「学士課程教育の構築」を目指す大学にとっては参考になる点も多いはずだ。委員長は、熊本大学大学院教授システム学専攻の鈴木克明専攻長。日本におけるインストラクショナル・デザイン(ID)の第一人者である。
 IDは、eラーニングの設計方法として知られるが、教育ゴールの明確化から評価に至るプロセスは、学士課程構築にも有効な方法論といえる。実際、鈴木専攻長も「IDは、eラーニングにのみ適用されるものではない」と指摘している。

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