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平成20年9月 第2331号(9月17日)

多様化・グローバル化の中での大学像 質保証等を検討し逐次答申へ

 1面記載の通り、鈴木恒夫文部科学大臣は、中央教育審議会に「中長期的な大学教育の在り方について」の諮問を行った。今後、大学教育の質保証、社会からの信頼向上を図るため、逐次検討していく。詳細は次の通り。

 (1)社会や学生からの多様なニーズに対応する大学制度及びその教育の在り方について
我が国の大学進学率は、近年も上昇を続け、本年度は短大を含めると五五・三%に達しており、同年齢の若年人口の過半数が高等教育を受けるという状況となっている。社会人や留学生も含め、様々な背景を備えた学生が入学しており、大学に要求される教育の内容も多様化している。
 そのような状況の中で、教育の質を維持しつつ、社会や学生からの多様なニーズに応える大学教育を実現するには、大学教育の在り方自体を見直すことが、不可避であり、具体的には、次の五点について審議いただきたい。
 @社会や学生からの多様なニーズに対応する大学教育の在り方について
 大学教育の水準の維持・向上を図りつつ、様々なニーズに適応する大学教育の現実の方策について、学生本位の視点に立った検討を行う。
 A多様なニーズに対応する大学教育を実現するための「学位プログラム」を中心とする大学制度及びその教育の再構成について
 国際的・歴史的に確立されてきた大学制度の本質、とりわけその団体性や自律性を踏まえつつ、一人ひとりの学生のニーズに応じた大学教育が提供され、その質保証がよりきめ細かく行われるよう、「学位プログラム」を中心とする仕組みの導入の是非について、人的・物的環境の在り方を含め検討を行う。
 B社会的要請の特に高い分野における人材養成について
 医療系人材等の社会的な要請の特に高い分野における教育課程の充実、教育活動の評価、社会との連携、人材養成の在り方について検討を行う。
 C多様なニーズに対応する大学教育を実現するための質保証システムの在り方について
 大学が、社会や学生からの様々なニーズに適応した教育活動を展開するためには、その質を保証する仕組みが不可欠。学生の達成すべき学習成果の明確化について検討を深めていただくとともに、今後の設置認可、自己点検・評価、認証評価、分野別評価等を通じて、大学教育の質保証システムをどう構築すべきか検討を行う。
 D多様なニーズに対応する大学教育を実現するための学生の履修を支援する方策について
 学生のニーズが多様化した状況を踏まえると、大学においては教育の提供のみならず、きめ細かな履修指導や進路相談等の学生支援の取組が一層重要となっており、その具体的方策の検討を行う。また、社会人や留学生等の多様な背景を備えた学生への支援や、大学院博士課程学生への教育の在り方や修了者への支援に監視、そのような方策が必要か検討を行う。

(2)グローバル化の進展の中での大学教育の在り方について
 グローバル化は、社会経済のあらゆる分野において進展しており、大学教育においても、国際的な競争と協働の関する活発な取組が見られる。我が国の大学の国際化や国際競争力の向上は、極めて重要な課題となっている。
 そこで、具体的には次の三点について審議いただきたい。
 @大学の国際競争力の向上のための方策について
 現在、文部科学省では、二〇二〇年(平成三十二年)の実現を目途とした「留学生三〇万人計画」を関係省庁と連携して推進している。そうした状況も踏まえ、大学の国際競争力の向上のために、大学における教育・研究、学生支援や環境整備等の機能はどうあるべきか検討を行う。
 A大学の評価における国際的な視点の導入と、世界的規模での大学に関する評価活動への対応について
 大学教育のグローバル化に対応して、大学の評価に関わる様々な仕組みの中に、国際的な視点をどのように取り入れるべきか検討を行う。また、OECD等において、大学に対する様々な評価活動が世界的規模で行われようとしており、そうした取組を受けた、我が国の大学における対応の在り方について検討を行う。
 Bアジア域内等の国際的な学生・教員の流動性向上の促進等について
 アジア域内等の国際的な学生・教員の流動性をより一層高めるための方策について、また、域内全体の大学教育の質保証に向けた活動の進め方について検討を行う。

(3)人口減少期における我が国の大学の全体像について
 少子高齢化の進展により、我が国の人口は減少局面に入りつつあり、このことの大学教育への影響は不可避となっている。こうした人口減少などの社会構造の変化や新たな需要を踏まえ、大学教育システムの在り方の見直しが必要である。
 そこで、具体的には次の三つの点について審議いただきたい。
 @人口減少期における大学全体の健全な発展の在り方について
 各大学における教育の質の確保等の観点から、今後における大学の果たすべき役割、人口減少期における状況、充足率の現状等を踏まえた我が国の大学の全体像について、その健全な発展に向けた検討を行う。
 A大学の機能別分化の促進と大学間のネットワークの構築について
 各大学が、それぞれの地域の事情を踏まえつつ、自らの強みを持つ分野へ取組を集中・強化する機能別分化が徐々に見られる。各大学の自主性を尊重しながら、いかに機能別分化を促進していくかは、重要な課題であり、そのための検討を行う。
 また、機能別分化に当たっては、各大学が連携協力し、それぞれの持っている人的・物的資源を共同利用し、その有効活用を図ることも考えられる。こうした大学間ネットワークの構築は、我が国が全体として高度な教育・研究を進め、全体としての水準を高めていくためにも必要である。
 B全国レベルと地域レベルのそれぞれの人材養成需要に対応した大学政策の在り方について
 学生の多様な教育サービスへの需要のみならず、国と地域それぞれの人材養成需要に応えることは大学の不可欠の役割である。高度専門職業人等の多岐にわたる分野の職業人、研究者、地域社会に不可欠な分野の人材等、多様な人材が求められる状況において、全国レベルと地域レベルのそれぞれの人材養成需要に対応した大学政策の在り方について検討を行う。

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