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平成20年9月 第2329号(9月3日)

新たに外国語教育の充実など 初中局・生涯学習局の概算要求

 1面に記載のとおり、文部科学省は八月末に平成二十一度政府予算の概算要求を財務省に提出した。初等中等教育局では、外国語教育の充実などが、生涯学習政策局では、いつでもどこでも学べる環境の整備が新たに要求された。概要は次のとおり。(カッコ内は前年度予算額との増減、▲は減)

 初等中等教育局
一、新学習指導要領の円滑な実施
 (1)授業時数増等への対応=三一四億五八〇〇万円(三〇八億四五〇〇万円):授業時数や指導内容を増加する新学習指導要領の円滑な実施を図るため、必要な諸条件を整備する。
 (2)道徳教材に関する国庫補助金制度の創設=四七億三四〇〇万円(四〇億七六〇〇万円):道徳の時間において、学習指導要領の趣旨を踏まえた適切な教材が教科書に準じたものとして十分に活用されるように国庫補助制度を創設するなど、道徳教育の総合的推進を図る。
 (3)新学習指導要領以降措置用教材の作成・配布=二五億一二〇〇万円〈新規〉:新学習指導要領への移行期間中に、指導内容が追加される算数・数学、理科について、各学校において確実かつ適切にその内容が指導されるよう、教科書に準拠した補助教材を作成し、児童生徒等に配布する。
 (4)外国語教育の充実=一六億九六〇〇万円〈新規〉:新学習指導要領の実施にむけた条件整備を重点的に実施するとともに、外国語教育の低年齢化、授業時数増等に関する調査研究等の英語教育の充実に資する施策を総合的に推進する。
 (5)全国的な学力調査の実施=六二億五一〇〇万円(二億八二〇〇万円):すべての児童生徒の学力や学習状況等を把握するための全国学力・学習状況調査を実施するとともに、調査結果の分析・検証を強化する。また、全国的な課題の解決に資するため、地域として改善に取り組む実施研究を実施するなど、教育委員会、学校等における教育の改善にむけた取組を推進する。
 (6)中学校武道の必修化に向けた条件整備=七〇億三四〇〇万円(六三億九三〇〇万円):平成二十四年度からの中学校武道の必修化の完全実施に向け、必要な条件を整備する。
 二、豊かな心と健やかな体の育成
 (1)体験活動・読書活動等の推進=一三億八二〇〇万円(三億七〇〇〇万円):児童生徒の豊かな人間性や社会性を育むため体験活動の推進を図る。また、児童生徒の主体的な学習活動や読書活動が充実するよう、豊かな言語力を育成する観点から、学校図書館の一層の活用を促すための調査研究を行う。
 (2)いじめ、暴力行為、不登校、少年非行、自殺等に対する取組の推進=六二億九四〇〇万円(三億二四〇〇万円):いじめ問題に対し、緊急的な対策を講じるための調査研究を行うとともに、いじめ、不登校、暴力行為、児童虐待及び高校中退の未然防止、教育相談体制の充実及び自殺予防に向けた取組など、児童生徒への支援の充実を図る。
 (3)情報モラル教育の推進=六億四六〇〇万円(一億八〇〇〇万円):「IT新改革戦略」等に基づき、@ICT教育の充実、A学校のICT環境の整備、B教員のICT人材育成の観点で先導的な調査研究事業等を実施する。
 (4)環境教育の推進=一八億八六〇〇万円(八億三一〇〇万円)
 (5)幼児教育の推進=二九七億二〇〇〇万円(九三億二四〇〇万円)=教育振興基本計画、骨太の方針、五つの安心プラン等を踏まえ、幼稚園・保育所の枠組みを超えた総合的な財政支援を行うとともに、幼稚園就園奨励費補助の拡充による保護者負担軽減等を図る。
 (6)キャリア教育・職業教育の推進=一一億一四〇〇万円(二億四九〇〇万円):児童生徒が勤労観・職業観を身に付け、主体的に進路を選択・決定できるようにするためのキャリア教育プログラムの開発等の調査研究や、専門高校と地域社会との連携等による将来の専門的職業人の育成を図る取組等により、体系的なキャリア教育・職業教育を推進する。
 (7)学校すこやかプランの充実=七億二八〇〇万円(三億三二〇〇万円):近年の社会環境や生活環境の急激な変化により、アレルギー疾患やメンタルヘルスなどの児童生徒の心身に様々な健康課題が生じていることから、これらの児童生徒の多様化する現代的な健康課題に適切に対応するため、学校だけでなく退職養護教論や医師などの地域の専門家や関係機関等と連携を図りながら、学校保健を推進する。
 (8)子ども安心プロジェクトの充実=二〇億二三〇〇万円(一億六七〇〇万円):学校内外において不審者による子どもの安全を脅かす事件、交通事故や自然災害が発生していることから、地域社会全体で子どもの安全を見守る体制を整備するとともに、子ども自身に危険を予測・回避する能力を習得させる安全教育を支援するなど学校安全の取組を推進する。
 (9)食育推進プランの充実=六億三〇〇〇万円(一億七六〇〇万円):栄養教論が中心となり、学校・家庭・地域が連携し、子どもに望ましい食習慣や食に関する正しい理解と適切な判断力などを身に付けさせるとともに、地場産物の活用を促進するなど、学校における食育の推進、学校給食の拡充を図る。
 三、教員が子ども一人一人に向き合う環境づくり
 (1)教員の子どもと向き合う環境づくり=一兆六八七五億四二〇〇万円(一八〇〇万円)
 (2)教員免許更新制の円滑な実施=四六億八三〇〇万円〈新規〉:来年度四月から開始される教員免許更新制に伴い、全国各地域で質の高い更新講習を各教員が円滑に受講・修了し、資質能力の向上を図る。
 (3)特別支援教育の推進=一四億七七〇〇万円(八億七四〇〇万円):幼稚園から高等学校までを通じて、発達障害を含む障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、子どもの教育的ニーズに応じた適切な指導及び必要な支援を行うため、外部専門家の活用を含めた特別支援教育の体制整備を総合的に推進する。
 (4)外国人児童生徒教育の充実=四億二〇〇万円(一億七九〇〇万円):バイリンガル支援員を活用した外国人児童生徒の指導や就学前初期指導教室の開設等を行うとともに、地域のNPO・ボランティア団体等の関係者を「就学促進員」に委嘱し、不就学の外国人家庭への働きかけ等きめ細やかな就学支援を新たに実施する。
 (5)コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)の推進=一億八〇〇〇万円(▲二〇〇万円):保護者や地域住民等が一定の権限と責任を持って学校運営に参画する新しい仕組みである「学校運営協議会制度」について、法律に定められた趣旨を周知するとともに、制度の普及・活用の取組が多く地域で行われるよう、その着実な推進を図る。
 (6)学校評価システムの構築=六億四四〇〇万円(三七〇〇万円):第三者評価ガイドラインの策定に向け、国・設置者等による実地検証を行うとともに、学校評価の充実・改善を目指す調査研究や好事例の紹介・普及を推進する。

生涯学習政策局
 一、家庭の教育力の向上=一九億九五〇〇万円(五億一〇〇〇万円):地域の子育て経験者、民生委員、保健師などの専門家が連携し、「家庭教育支援チーム」を構成して支援するなど、身近な地域におけるきめ細やかな家庭教育支援を促進する。
 二、社会全体の教育力の向上=一三二億円八八〇〇万円(四億八二〇〇万円):学校・家庭・地域の連携協力のための様々な具体的仕組みを構築し、社会全体の教育力を向上させるため、地域全体で学校を支え、子どもたちを健やかに育む活動を推進するとともに、放課後や週末等の子どもたちの体験・交流活動等の場作りを促進する。
 三、いつでもどこでも学べる環境の整備=九一億四八〇〇万円〈新規〉:生涯にわたって、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の構築を目指し、情報通信技術も活用しつつ、必要な環境を整備する。
 四、青少年の健全育成の推進
 (1)青少年の意欲を高める体験活動の推進=五億四〇〇〇万円(二億七六〇〇万円):全ての青少年の生活に体験活動を根づかせ、社会との関係の中で自己実現を図れるように、多様な体験活動の機会を充実するための取組を推進する。また、「教育振興基本計画」における「小学校での自然体験・集団宿泊体験を全国の児童が一定期間の実施」を推進するため、指導者の育成及び体験活動プログラムの開発など必要な支援を実施。
 (2)青少年を取り巻く有害環境対策の推進=五億一〇〇万円(四億一一〇〇万円):青少年がインターネット上の違法・有害情報サイトを通じて犯罪やいじめ等に巻き込まれている現状を踏まえ、有害情報等から青少年を守るための取組を推進する。
 (3)子どもの読書活動の推進=四億八八〇〇万円(三億三六〇〇万円):「子どもの読書活動の推進に関する法律」に基づく政府の「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」を踏まえ、子どもが自主的に読書活動を行うことができるよう、施策の総合的かつ計画的な推進を図る。

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