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平成20年7月 第2324号(7月16日)

「環境教育と地域観光資源」 藤岡達也 編著

 日本海側は、かつて「裏日本」と呼ばれていたが、七〇年代初頭、NHKが最初に使用を自粛。新潟県選出の田中角栄首相が誕生すると、民放も新聞社も一斉に右へならえした。
 この本は、環境教育やESD(持続可能な開発のための教育)の観点から〈国内外に発信することが可能な日本の景観、とくに日本海側に位置する新潟県を取り上げた〉
 なぜ、日本海側なのか。〈日本の環境教育資源は都市部より日本海側など地方のほうがより豊かである〉著者は日本海側には、自然・歴史景観が数多く残されているとの確信がある。
 第一章は小気味いい。〈東京がさまざまな機能を一極化しているのは事実だが、日本全体で考えてみた場合、健全ではない〉と断じる。
 二〜六章で、日本を東西に分ける糸魚川、トキの舞う佐渡、中越地域の自然、阿賀野川など北部の河川、上越の豪雪―など地域に分け入って自然と人間、人間と人間に光を当てる。
 三章の佐渡では〈八〇年代は年間一二〇万人あった観光客が〇六年には六六万人に減少、〇七年の中越沖地震の影響でいっそう厳しい〉と現状を報告。
 しかし、〈佐渡は独自の自然環境、社会環境、伝統文化が残されている。教育資源としてとらえなおすことを考えたい〉と市民、学校、NPOなどの様々な取り組みを“発信”する。
 あとがきで編者の藤岡が〈執筆者たちの日々の環境教育資源開発のためのフィールドワークがもとになっている〉と書いていたが、執筆は小学校の先生達だ。
 大分県では、教員採用の汚職で聖職者が問われている。一部を捉えて全てをそうだというのは止めよう。これは心ある新潟の先生達の力作。もう、誰にも「裏日本」なんて呼ばせない。

 「環境教育と地域観光資源」 藤岡達也編著
 学文社
 03-3715-1501
 定価1,900円+税
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